2011年11月29日火曜日

ベネズエラが太平洋岸に<出口>

ーーーーーベネズエラ東部のオリノコ油田から、コロンビア太平洋岸のトゥマコ港まで送油管が建設されることが確定した。

    カラカスで11月28日、ベネズエラのウーゴ・チャベス、コロンビアのフアン・サントスの両大統領が会談し、協定に調印した。

    1999年2月政権に就いたチャベスは早くから構想を打ち出し、コロンビア政府とも基本的には合意していたが、同国のウリーベ前政権(親米・反チャベス)と冷戦状態に陥ったため、構想は棚上げされていた。

    この送油管が完成すれば、ベネズエラは中国に日量100万バレルの原油を輸出できるようになる。米国が依然影響力を維持しているパナマ運河を通過せずに、太平洋圏への原油輸出路を確立する戦略的意味は、ベネズエラにとって大きい。中国にもしかりだ。

   チャベスはサントスとの共同記者会見で、「中国や日本に原油を運ぶのに、南米南端やアフリカ南端をいちいち回っていたら大変だ」と述べた。
 
   パナマ運河を巨大タンカーが通行できない状態が長らく続いてきた。パナマ運河地帯では、2014年以降の完成を目指して、超大型船舶の通行が可能な第3水路の建設工事が進められている。これを横目にチャベスとサントスは送油管建設を決めたのだ。

   将来的な不安材料は、コロンビアのゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC=ファルク)」と「民族解放軍(ELN=エエレエネ)」が過去に、同国内の送油管を破壊してきたこと。特に活動拠点が中部から北部にまたがるELNは、送油管破壊を主要な戦術にしていた。

   コロンビア政府は、ゲリラの武力制圧を急いでいるが、ゲリラとの恒久的な和平がない限り、送油管建設と運営に不安がつきまとうことになる。

(2011年11月29日 伊高浩昭執筆)