2011年12月27日火曜日

ブラジルの農地改革と土地占拠

★☆★ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は12月26日、農地改革の一環として農場60か所を接収する法令に署名した。13州にまたがる計11万2800hrの土地は政府によって買収され、土地の無い農民2739家族に分配される。政府は、年間4万家族に土地を与える農地改革を進めている。

    この政策によって2001年以降、土地を配分された79万家族のうち13%は、その土地を不法転売したり放棄したりした。ルセフ政権は、不法転売を防止する手段を講じつつあるという。

    農地改革当局によると、今年1~8月に、計159件の土地占拠があった。

    ブラジルには「土地無き者の運動(MST)」がある。農村部から追い出され都市スラムに住まざるを得なくなった人々が、民政移管直後の1985年に結成した。「遊休地は農地改革の対象となる」との憲法規定を拠り所とし、遊休地を占拠し、住みついて農耕しつつ闘い、合法化を待つ。現在、運動で得られた土地で200万人が暮らしている。また占拠地で6万家族が合法化を待っている。

    居住地には必ず独自の学校が建てられ、社会主義、階級意識、革命思想などが教えられる。土地占拠運動の指導者も養成されている。またブラジル社会で何万人ものMST居住地出身の若者らが、広範な分野で活躍している。

    ブラジル政府はある意味で、MSTに刺激され助けられて、穏健な農地改革に着手できたと言える。

【2011年12月27日 伊高浩昭執筆】