2012年1月20日金曜日

英首相がアルゼンチンを「植民地主義」と呼ぶ

▼▼▼▼▼英国のデイヴィド・キャメロン首相は1月18日、英国会で、フォークランド諸島領有権を主張しつづけているアルゼンチンを「植民地主義」と呼んだ。これに対し、同諸島をマルビーナス諸島と呼ぶアルゼンチンのアマード・ブドゥー副大統領(大統領代行)は19日、「恥知らずで唐突な発言だ」と反駁した。

    ブドゥーはまた、「英首相の発言は偶然の産物ではない。我々亜国の外交が効果を発揮していることを示す」と述べた。国際世論を有利な方向に導きつつある外交の成果と捉えているのだ。

    亜国は1982年4月、時の軍政がM諸島奪回を狙って軍事攻撃を仕掛け、同年6月敗北した。以来、外交決着をかけて、粘り強い外交を民政移管した83年から30年近く続けてきた。

    今年は開戦30周年、英国にとってはF諸島解放勝利30周年の年。今年に向けて近年、両国間で外交上の緊張が徐々に高まりつつあった。英国が諸島近海での海底油田開発に着手すると、亜国は諸島への物資供給を断つなど対抗策に出た。

    昨年末、ウルグアイで開かれた南部共同市場(メルコスール)首脳会議は、亜国の主張に沿って、F諸島旗を掲げた船舶のメルコスール域内での入港を禁止する措置をとった。域外だが、M諸島と海空の交通を維持しているチリも賛同した。

    慌てた英国は打開に動いたが埒(らち)は明かず、ウィリアム・ヘイグ外相が1月18~19日、メルコスールの盟主ブラジルを訪れ、F諸島問題を中心に話し合った。だがブラジルはM諸島問題では亜国を支持するとし、国連が要請しているとおり、亜国と対話するよう同外相に求めた。

    ヘイグは立場の隔たりをあらためて認識したが、「英国がラ米と疎遠だった時代はいま終わった。今後はラ米との関係を改善し強化していく」と、リオデジャネイロで明言した。エリザベス英女王は2月6日、戴冠60周年(ダイアモンドジュビリー)を迎える。6月14日にはF戦争勝利30周年が来る。今年はロンドン五輪もある。英政府は、何とかF諸島問題を和らげたいのだ。

    そんな焦りがキャメロン発言につながった、と亜国政府は分析しているわけだ。

    ブドゥーは、「主権を求めている国を植民地主義と呼ぶとは! この言葉はラ米だけでなく、アジアやアフリカの多くの国々を苦しめた歴史を想起させる。過去を誰も忘れていない」と続けた。もっともな発言だ。英国は世界最大の植民地帝国だった。

    帝国主義と表裏一体の植民地主義の時代は大方過去に去ったが、いまや新植民地主義が横行している。つまり「新帝国主義」がある。その犠牲者だ、と亜国は言っている。

    一方、当のケルパー(F諸島住民)は、「我々のほとんどは英国主権下の現状継続を望んでいる。これを亜国が認めれば、仲良くしていくことができる」との立場だ。これは英政府の立場そのものであり、英亜のいずれか帰属先を決める島民投票をしても英国派が勝つとの自信の源になっている。亜国はもちろん、この「既成事実に基づくやり方」を認めない。

    開戦30周年の4月2日に向けて事態は動いている。英亜間の外交戦はさらに熱くなるだろう。