2012年2月5日日曜日

メキシコ麻薬戦争の実態伝える優れたルポ-週刊金曜日が掲載

▽▼▽メキシコでは2006年12月就任したフェリーペ・カルデロン大統領の下で、<麻薬戦争>が展開されてきた。死者は、麻薬一味、治安要員、一般市民を合せて5万人を超えている。

    日本で数少ない本格派ジャーナリズムの雑誌「週刊金曜日」は1月27日号に、その<麻薬戦争>の恐るべき実態を克明に描く優れたルポルタージュを掲載した。文は工藤律子、写真は篠田有史である。 

    コカインの最大生産地コロンビアでの<麻薬戦争>が終息した90年代初め、メキシコが、麻薬の最大消費国・米国への回廊として、麻薬組織の新たな戦略的拠点となった。

    当時のカルロス・サリーナス大統領は、94年元日の北米自由貿易協定(TLCAN=テエレカン、英語でNAFTA)の発効に向けて、米国とカナダを相手に太刀打ちできる大企業群を急遽育成しようと、禁断の麻薬資金を経済界に導入した。

    カルデロンは、<麻薬戦争>を展開したことによって、麻薬資金の汚染と対立抗争を全土に拡げただけでなく、グアテマラに始まる中米諸国にまで蔓延させてしまった。

    サリーナスとカルデロンに共通するのは、それぞれが出馬した大統領選挙で、いずれも野党・民主革命党(PRD=ペエレデ)の候補に実際には敗れながら、開票時の不正工作で<当選>にこぎ着けたという、誰もが知る事実である。

    その負い目が強かったのだろう、サリーナスはTLCAN発効を、カルデロンは<麻薬戦争>の勝利を施政の業績にしようと、それぞれ派手に動いた。

    今日のメキシコの深刻極まりない麻薬問題は、サリーナスがのめりこみ、カルデロンが後戻りできない状態にまで悪化させた結果だ。その間の24年で、メキシコは、「週刊金曜日」のルポのような出口のない状況に陥ってしまった。

    コロンビアもそうだが、絶望的なほどひどい貧富格差のあるメキシコでは、群れなす貧者が、危険だが金になる麻薬の地下世界になだれ込んでいった。メキシコの浄化も絶望的なほど遠い。