2012年4月3日火曜日

仏映画「キリマンジャロの雪」を観る

☆★☆フランス映画「キリマンジャロの雪」を4月2日、試写会で観た。ロベール・ゲディギャン監督2011年作品、107分。東京・神田神保町の岩波ホールで6月9日公開される。

★地中海岸の港町マルセイユが舞台。造船所作業現場の人員削減で、くじ引きにより19人が馘首された。残る一人は、自ら<当たりくじ>を引いた組合委員長ミシェルだった。

☆このような形で引退したミシェルは、愛妻マリー=クレールの傍らで息子、娘夫婦や孫たちに囲まれた日々を過ごす。結婚30周年を迎えた二人のために記念パーティーが開かれ、夫婦は家族や友人たちからキリマンジャロ山のある東アフリカへの旅行と資金を贈られる。

★それから間もなく、ミシェルの家を2人組の強盗が襲い、資金、航空切符とキャッシュカードを盗み去る。犯人は、東アフリカ旅行の予定を知っていたのだ。

☆後日、ひょんなことからミシェルは犯人の一人を見つけ出す。造船所をくじ引きで解雇された若い労働者クリストフだった。パーティーにも来ていた。ミシェルの通報で犯人たちは逮捕される。

★クリストフには、小さな弟が二人いた。クリストフは禁錮15年の実刑を科せられることになり、弟たちの面倒を見る者はいなくなる。マリー=クレールは食事を運んだり、洗濯物を処理してやったり、世話を始める。ミシェルは、子供たちを引き取る決意をする。

☆強盗が荒々しく登場する場面で日常性は破壊され、どんな展開になるのかと気をもむ。だが、犯人は日常性を失って犯行に走ったのだとわかる。

★全球化(グローバリゼーション)、新自由主義、不況、労働者馘首、犯罪と、社会を上手に背景に描きながら、ヒューマニズムを讃える。ミシェルは、拘置所や検察庁で面会したクリストフに「失業しても生活に困らない身分」を攻撃され、何か<原罪>のようなものを感じ取る。それへの責任を取る形でミシェルは自身の寛大さを増幅させ、子供たちを引き取ることになる。

☆映画の題名は、1966年にフランスで大ヒットしたシャンソンの曲名。この主題曲と、見果てぬ夢に終わった東アフリカ旅行が絡み合わされている。起承転結がはっきりした作品だ。


★人は老いてもなお成長することができるーこの映画の力点の一つだ。