2012年8月22日水曜日

映画「イラン式料理本」

☆☆☆モハマド・シルワーニ監督2010年作品、イラン映画「イラン式料理本」(72分)を試写会で観た。イランの家庭に封じ込められている女性たちの、ラマダン期の料理に励まざるを得ない状況をユーモラスに描く、まじめで風変わりな映画だ。だが、これが現実なのだろうし、したがってリアリズムそのものの作品だ。

☆9月15日から、東京・神田神保町の岩波ホール(電話03-3262-5252)で公開される。

☆3世代の女性たちが、それぞれの家庭で料理に集中する。料理中の会話が諧謔に富み、イラン社会の伝統の変化がちりばめられ、面白い。6時間もかけて作った料理を男たちは15分程度で食べてしまう。宴の後を片付けるのも、やはり彼女たちだ。やれやれという表情を見せながらも、屈託なさそうで、女たちの尊ぶべき辛抱強さが浮き彫りになる。

☆上映後の感想は、一に、映画の中で作られた料理をすべて味わってみたい、ということ。次に、この物語を日本社会に当てはめて、同様の映画を作るべきだということ。日本人男性の多くは、恥入り反省するところが多いはずだ。

☆イランの主婦たちにとって、解放される一つの方法は離婚か。それが末尾で示唆される。やはり末尾で告げられる100歳の老女の死は、古く長い伝統の死と変容を意味するのだろう。

☆「たまには、こういう映画を観てみたい」と思うような、まさにそんな作品だ。