2012年10月26日金曜日

パナマ大統領来日、地元では大荒れ


▽▼▽パナマのリカルド・マルティネリ大統領が10月21日、日本公式訪問のため東京に到着した。ロムロ・ロー外相、ロベルト・ロイ運河相らが随行。

▼野田首相と22日首脳会談し、日本企業のパナマでの社会基盤投資、パナマ運河通航料値上げ交渉開始などで合意した。大統領は特に、運河をまたぐモノレールや、パナマ市の地下鉄第3路線建設への投資に期待を示した。

▼会談後の記者会見で大統領は、尖閣問題での日本支持を明言した。パナマと国交を持たない中国は23日、パナマに同問題に介入しないよう警告した。台湾のパナマ駐在大使も24日、パナマに中立の立場をとるよう要請した。

▼大統領は22日、経団連会長とも会談、天皇に会見した。

▼23日には財界人140人と会合し、「私は実業家(パナマ最大のスーパーマーケットチェーン経営)」、「パナマはラ米への最良の玄関口で、戦略的位置を占める」、「経済は過去5年、年率8%で成長してきた」と強調し、投資を呼び掛けた。[日本はパナマ運河第3水路建設工事に8億ドル融資している。]

▼大統領は同日、造船会社代表たち、全日空社長と会談。NHKによるインタビューで、運河通航料値上げの正当性を強調した。

▼24日には東京モノレールに試乗し、建設に意欲を示した。同日ハノイ入りし、25日ヴィエトゥナム首脳たちとの会談に臨んだ。

●●●自由貿易地域の土地払い下げに一大反対運動、大統領譲歩

●大統領来日に先立つ10月19日、パナマ運河北入口(カリブ海側コロン市)のサンクリストーバル港一帯にある「コロン自由貿易地域(ZLC)」(国有資産)の土地売却に反対する労組や市民が激しい反対行動に出た。警官の発砲で1人が死亡、30人が負傷した。逮捕者は125人にのぼった。

●大統領はZLCの土地を外資などに払い下げる法案を18日国会で通し、直ちに署名し発効させた。売却によって得られる資金の35%を地元コロン市に還元し、65%を国庫に入れる、という内容だ。

ZLCは1948年に設立され、面積1075hrで、日本企業を含む世界の大企業3000社が進出している。香港に次ぐ規模だ。輸入や保税加工再輸出によって年間、290億ドルをもたらしている。地元民3万人を雇用している。

●実業家大統領マルティネリは、政治的には極右で、新自由主義の信奉者であり、民営化を推進してきた。国内には新自由主義への反対者が多く、ZLCの土地払下げも「大統領が私腹を肥やすため」と非難されてきた。

●大統領の来日中、反対運動はコロン市から首都パナマ市や他の地域に拡大し、死者も5人に達した。コロン商業会議所、パナマ労働者総同盟(CGTP、加盟5万人)はストライキ戦術に出た。強引な大統領も23日、東京から命じて、閣僚3人をコロン市に派遣し、話し合い交渉を求めた。だが地元は交渉を拒否した。

●大統領は23日、新法を地元との合意が成立するまで施行しないと、ついに譲歩に追い込まれた。売却による資金も「100%地元に回す」と提案せざるを得なくなった。

●「コロンの反乱」で、パナマを自分の会社のように<経営>しようとするマルティネリの手法に限界が見えた。大統領は外遊から戻り次第、厳しい現実に対応せねばならない。