2012年12月22日土曜日

『グアダラハーラを征服した日本人』を読む

   ☆★☆『グアダラハーラを征服した日本人』という本の訳本を読んだ。墨国グアダラハーラ大学教員のメルバ・ファルク=レジェスとエクトル・パラシオスの共著。現代企画室から2010年12月に出た。極めて興味深い内容だ。                                                                                                                             ★17世紀にメキシコ中西部のグアダラハーラ市で勢力を張った大阪出身の日本人移住者フアン・デ・パエスの生涯を、資料を駆使して検証する研究書だが、訳者も指摘するように、日本からメキシコへいつ、どのようにして渡航したかの追究が謎解きのように面白い。                                                                                                  ★来年2013年で、仙台藩主・伊達政宗の命を受けた支倉常長一行が宮城県月の浦を出航した1613年から丸400年経つ。だが著者は、フアンが支倉一行に加わって渡航した可能性は小さいと見る。                                                                        ★フィリピンのルソン島には1570年以降、日本人居住者が増え、1620年ごろには3000人に達していた。考えられる原因は、カトリック教徒への迫害で急増した脱国者と、大坂夏の陣で敗北した側の侍たちの脱国者がルソン島に逃れたこと。著者は、フアンがルソン島経由でメキシコに渡った可能性の方が高いと見る。                                                                                                                                 ★フアンは成功し有力者の地位に達し、信用されて管財人になった。古文書から、フアンが奴隷の売買にも携わったことが証明されている。                                                                                                               ★日本人絡みの「大航海時代」の歴史の一端を、本書は暴き出した。労作である。訳者は服部綾乃ほか。