2015年9月21日月曜日

チリ映画「光のノスタルジア」と「真珠のボタン」を観る

 チレ映画界の名匠パトリシオ・グスマン監督(74)の「光のノスタルジア」(2010)と「真珠のボタン」(2015)を試写会で観た。

 何万光年もの遠い彼方・過去から地球に届く星の光を見る天文学者と、42年前(1973年)の軍事クーデターで殺された肉親の遺骨を探す女たちが、アタカマ砂漠で隣り合わせている。大空の星と、砂漠の砂に真実を求める人々の接点を描くのが第1作だ。

 19世紀に英国人船長に連れ去られたチレ南部パタゴニアの先住民青年と、1973年の軍事クーデターで殺され死体を海に投下された人々が海底に残した物の共通点は「ボタン」だった。第2作は、「水や海に宿る記憶」を描く。

 自然科学、地理、冷酷な史実が無理なく巧みに絡ませられている。

 これほど敬虔な気持ちにさせられる映像を創り出す監督も少ない。ラ米学徒、チレ学徒に観ることをお薦めする。

 10月10日から、東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。