2016年1月23日土曜日

ボリビアのエボ・モラレス大統領が政権10周年迎える

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は1月22日、政権担当10周年を迎えた。前日21日未明、エボ、副大統領アルバロ・ガルシア=リネラ、全閣僚と、マウタ(賢者)と呼ばれる先住民族指導者らが政治首都ラパス西方のティウアナク遺跡に集い、日の出とともに、パチャママ(大地の母)に感謝する儀式を執り行った。

 エボはボリビア史上最長の政権を維持している。2005年の大統領選挙に社会主義運動(MAS)から出馬、得票率53・7%で当選した。06年1月22日就任、国家経済の柱である石油・天然ガスを国有化した。これが慢性化していた国庫赤字を黒字に転じさせることになる。続いて電気通信、鉱山、電力、航空、セメントなどを国有化した。

 08年、新憲法制定の国民投票で67・4%の支持を得て、ボリビアを「多民族国家」と規定する憲法を制定。人口の過半数を占める先住民族を事実上、国政の中心的存在として位置付けた。

 改憲後09年の大統領選挙で64・2%、同じく14年に61・3%で再選された。その間、10年にコチャバンバ市郊外のティキパヤで「世界人民サミット」、14年サンタクルースデラシエラ市で「国連開発途上77カ国集団」(G77)首脳会議を開いた。

 過去10年の経済成長率は平均5・1%で、13年には6・8%を記録した。95億ドルだった国内総生産(GDP)は345億ドルに増えた。国庫は石油国有化の06年以降、黒字が続いている。

 極貧率は37%から17%に下がった。エボの現在の任期が終わる2020年までに9・5%に下げるのが目標。

 最大の危機は08年のクーデター未遂事件だ。伝統的支配層の拠点だった保守的なパンド、ベニ、サンタクルース、タリーハで反政府行動が起き、20人を超える死者が出た。エボは、陰謀の背後にいたとして米大使を追放した。以来、両国間の大使級外交関係は途絶えている。

 エボは昨年末、「2016~20年経済社会開発計画」を打ち出し、19年の次期大統領選挙に出馬する意志をあらためて表明。来月2月21日実施の国民投票に臨む。連続3選を禁止する09年憲法の大統領再選条項を改定するためだ。

 これに勝ち19年に再選されれば、2025年まで政権に居続けることになる。計19年の長期政権となるわけで、さすがに支持者の間には戸惑いが見られ、野党勢力は猛烈に反対している。

 昨年12月、亜国でマクリ右翼政権が発足、ベネスエラ国会議員選挙では保守・右翼野党連合が圧勝した。このような「南米右傾化」の波も影響している。世論調査では、国民投票は「接戦」模様。

 だが、先住民族の誇りと認同(イデンティダー=アイデンティティー)を蘇らせ、経済を健全化したエボへの支持は依然堅固で、投票1か月前の現時点では、敗北よりも勝利の展望の方が上回っている。