2016年3月30日水曜日

ルセフ・ブラジル大統領、友党離脱で弾劾危機深刻化

 ブラジル最大の政党ブラジル民主運動党(PMDB、中道・保守)は3月29日、ヂウマ・ルセフ大統領の労働者党(PT)との政権党連合からの離脱を決め、閣僚6人を引き揚げさせた。大規模な汚職事件との関連で国会で弾劾される危機に直面している大統領は極めて困難な状況に陥った。

 国会下院(定数513)の力学は、4月半ばの審議後、3分の2(342議席)でルセフ弾劾法案を可決する方向にある。大統領とPTは、これを阻止するため最小限でも172議席を確保せねばならない。

 下院が可決した場合、弾劾法案は上院(82議席)で審議されるが、過半数で仮採択されれば、3分の2による最終可決までの180日間、大統領は政権を離れねばならない。

 大統領弾劾が正式に成れば、2018年末までの残り任期を副大統領が暫定大統領として埋めることになる。同年、次期大統領選挙が実施される。現副大統領は、PMDB党首ミシェル・テメル。

 友党離脱を受けてルセフ大統領は、原子力安全首脳会議出席のため予定していたワシントン行きを中止した。PT幹部は、PMDBの決定は、過去4回の大統領選挙で一度も勝てなかった政党を利することになる、と非難した。

 その政党は、PTやPMDBの敵党ブラジル民社党(PSDB、保守・右翼)。90年代から2期、カルドーゾ政権を担った。

 ルセフ大統領は、PSDBが主導する野党陣営は「合憲政権を国会クーデター(弾劾)で打倒しようと画策している」と非難してきた。2009年から連立してきたPMDBの離反によって、弾劾される可能性が高まったのは否めない。

▼ラ米短信 ベネスエラ国会は3月29日、「恩赦法」を可決した。1999年2月発足したチャベス前政権以来17年間に有罪となり収監されたり、起訴されたが逃亡中の「政治的犯罪者」が対象で、計5000人が恩恵を受けるとされる。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は同日、この法は殺人者、犯罪者を擁護するものであると糾弾、署名拒否の意向を表明した。「恩赦対象者」に2014年の街頭暴動事件を教唆した政治家ら極右勢力が含まれているのを、大統領は暗に指摘した。

 国会は今年初めから、保守・右翼野党連合MUDが3分の2近い圧倒的多数を占めている。少数政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV)は、「恩赦法」を獄中にいる身内救済のための「お手盛り免罪、無処罰主義」、と批判している。