2016年4月1日金曜日

ブラジルで大統領支援デモ、最高裁は反ルーラ派判事を外す

 ブラジル長期軍政(1964~85)年の発端となったクーデターの52周年記念日の3月31日、全国各地でヂウマ・ルセフ大統領とルーラ前大統領を支持する広範な街頭デモ行進が実施された。大統領は弾劾の危機に直面しており、前大統領は汚職事件で裁かれようとしている。

 ルセフ大統領は31日ブラジリアの政庁で、弾劾運動を展開してきた野党および反政府勢力について、「(弾劾を目指す運動の)激化はナチズムのようだ。思想信条ゆえに人を非難するとは悲しいことだ」と述べ、反政権勢力を牽制した。

 街頭デモ参加の労働者党(PT、政権党)党員らは、29日に政権党連合から離脱したPMDB(伯民主運動党)、および同党所属の上下両院議長を非難した。両議長ともに、国営ブラジル石油(ペトロブラス)絡みの汚職事件への関与を検察庁から追及されている。

 ルーラ前大統領は街頭デモに合わせて声明を発表、「軍政からの民政奪回のため、どれだけ大きな犠牲を払ったことか」と強調。「民主政治を崩してはならない。獲得した社会的成果を失ってはならない」と訴えた。

 最高裁は31日、ルーラの汚職事件関与捜査を指揮してきた地裁判事セルジオ・モロを捜査から外し、最高裁が捜査の指揮を執ることにした。賛成8、反対2で決まった。

 汚職容疑で起訴されているルーラは、モロ判事がルーラの身柄を一時拘束し強制尋問したことや、ルセフ大統領がルーラを政府文官長(文民内閣官房長官)に任命した際の両人の通話盗聴を警察に命じ、任命発表に合わせて通話内容を暴露したことなどから、「公正でない」とモロを忌避していた。最高裁はルーラの言い分を認めたわけで、ルーラは一息ついた。

 最高裁は来週、ルーラの文官長任命人事および、盗聴された通話内容を正当な証拠と認めるべきか否かを審理する。

 一方、ブラジル国家治安部隊(FNSB)のアヂルソン・モレイラ長官は31日、「大統領を含む道義心に欠けた集団の指揮下にはいられない」と公開書簡で政府を糾弾、辞任した。この部隊はリオ五輪の治安を担う主要機関の一つ。これに対し司法省は、重大な規律違反であり懲罰がありうるとして、モレイラの捜査を開始した。

 また重要な経営者団体「サンパウロ州産業連合」(FIESP)のパブロ・スカフ会長は31日、「大統領は行政能力を失っており早期弾劾を望む。ミシェル・テメル副大統領(PMDB党首)が暫定大統領になるのを支持する」と語った。国会下院は4月半ば、大統領弾劾審議に入る。

▼ラ米短信  解放者シモン・ボリーバルが1815~1816年にかけ、ベネスエラをはじめ南米北部の独立を目指し、船団を率いてアイチ(ハイチ)からベネスエラまで航海した「ロス・カヨス遠征」の200周年を記念する式典が3月31日、ポルトープランスで催され、アイチのジョスレルム・プリヴェール暫定大統領、ベネスエラのアリストーブロ・イズトゥーリス副大統領らが出席した。

 ボリーバルは1816年初め、アイチ大統領アレクサンドル・ペシオン大統領と会談、大統領はベネスエラへの軍事支援などを約束。遠征にはベネスエラ人のほか、アイチ人多数が参加した。この遠征は、ベネスエラ海軍の起源と位置付けられている。

 この日、ポルトープランス中心部で「ウーゴ・チャベス広場」の開場式も催された。