2016年5月1日日曜日

フランス映画「めぐりあう日」を観る

 理学療法士として働く主人公の女性エリザ(セリーヌ・サレット)は、ダンケルクで生まれて間もなく、擁護施設に入れられた。「出自の秘密」を知りたい彼女はパリに夫を残し、8歳の息子ノエとともにダンケルクに引っ越し、働きながら出自について調査を進めるが、埒が明かない。

 ある日、転倒して肉離れした初老の女性アネット(アンヌ・ブノア)が治療を受けに訪れる。レネが通う学校で給食や清掃をしている用務員だ。アネットは、レネにアラブの血が流れているのを密かに察知していた。

 エリザとアネットは治療の時間を重ねるうちに心を通わせるようになる。アネットはいつしか、エリザが実の子ではないかと思い始め、遂に調査を依頼する。

 双方からの調査は収斂され、2人が母娘同士であることが証明される。アネットが若いころ、アラブ男との間に身ごもったのがエリザだった。男は去り、アネットは家族の反対で娘を養護施設に渡したのだった。アネットは祖母の瞳で、アラブの風貌が隔世遺伝した孫レネを見つめていたのだ。

 物語の途中には、エリザと夫とのすれ違い、エリザの妊娠と中絶、エリザの<浮気>、レネの反抗期の問題などが絡む。変哲ない女性の生き方と出自探しだが、変哲ない物語を映画作品に仕立てたウニー・ルコント監督をはじめ製作側の確かな技量が感じられる。

 背景に流れるとトランペットのアラブ調の音色と、ダンケルクの港や街の情景が心に染みる。

★この映画は7月30日、東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。2015年作品、104分。