2016年5月19日木曜日

政変の兆しが見えれば「騒擾事態」宣言も、とベネズエラ大統領

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月18日、ゴルペ(クーデター)の兆しの暴力が始まれば「国内騒擾事態」を宣言する用意がある、と述べた。

 マドゥーロは14日、国内外の脅威に対抗するためとして、60日間の「非常事態」を発動、16日の官報に記載され発効した。大統領は17日、内外記者団と会見、これにはスカイプを通じ世界各地のジャーナリストも参加したが、この会見で、米軍の空中警戒管制機が今月半ば2度、領空に侵入したことを明らかにした。

 大統領は、宿敵である極右指導者アルバロ・ウリーベ(前コロンビア大統領)がこのほど、「ベネスエラ侵攻部隊編成」を米国に働きかけたこと、および米軍用機侵入を踏まえて「非常事態」を発動したことを明らかにしている。

 米国務省は18日、米軍機侵入には触れずに、ベネスエラ指導部は人民の声を聞き、合理的決断をすべきだ、と内政干渉発言を新たにした。またカラカスの米大使館は同日、人員不足のため18日から観光・商用査証の発給業務を停止すると発表した。

 ワシントンに本部のある米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は18日、マドゥーロ大統領への公開書簡で、「罷免国民投票を遮れば、独裁が増幅する。貴殿は人民、および自らのイデオロギーを裏切っている」と厳しく批判した。

 これに対しデルシー・ロドリゲスVEN外相は同日、「あなたは、主人である帝国主義国の教本内容を繰り返している、帝国主義のかすだ」とやり返した。続いてマドゥーロも、「ごみであり裏切り者であるアルマグロと米南方軍司令官は3時間会談した。会談内容はわかっている。2人ともベネスエラに執着している」と扱き下ろした。

 するとアルマグロは、「裏切り者は汝だ」とやり返した。このやりとりを知ったウルグアイ前大統領ホセ・ムヒーカはモンテビデオで18日、「マドゥーロは、雌山羊のようにいきり立っている」と批判した。アルマグロは、ムヒーカ前政権の外相だった。

 アルマグロは、OEAの「米州民主憲章」をベネスエラに適用することを検討中。加盟34か国中、3分の2(23カ国)が賛成すれば適用され、ベネスエラは加盟資格を凍結される。

 それだけならまだしも、凍結されれば、米軍介入に道を開く可能性が出てくる。マドゥーロは20~21日、「独立2016年」と名付けた軍事演習を全土で展開する。これには国軍と民兵が計51万9000人参加する。

 一方、1999年以降の政治的人道犯罪の実態を調査する政府機関「真実・正義・犠牲者賠償委員会」の国外委員である元首脳2人が18日カラカスで、マドゥーロと会談した。スペイン前首相ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロと、元パナマ大統領マルティン・トリホスだ。両人は、政府と保守・右翼野党連合MUDの間で、対話開始を仲介する可能性がある。

 MUDが多数派の国会は16日、「非常事態」を違憲と決議した。だが憲法判断は最高裁がするため、国会決議には効力がない。大統領は、「国会は政治的有効性を失った。消え去るのは時間の問題だ」と口にした。これに対し、大統領罷免国民投票の推進者であるエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は17日、国軍に対し、「憲法と政府のどちらの見方をするのか」と問いかけた。

 MUD支持派数百人は18日、カラカス中心街に抗議デモをかけ、警官隊に催涙ガスやゴム弾で排除された。首都中心部はチャベス派区長の下にあり、デモ行進は許可されていなかった。デモ隊が機動隊の女性隊員に暴行を加えるなどし、17人が逮捕された。

 この日、カラカスにパレスティーナ大使館が開かれた。開館式にはリアド・マルキ外相とデルシー・ロドリゲス外相が出席した。