2016年5月21日土曜日

スペイン、パナマなどの大物政治家がベネズエラで対話を仲介

 ベネスエラ国軍と民兵部隊は5月20日、全土で国防演習「独立2016」を実施した。演習最終日の21日は、兵士らが「地区供給・配布委員会」(CLAP)と連携し、庶民に食糧や薬品を配布するという。

 この日、南米諸国連合(ウナスール)派遣の使節団が政府と、野党連合MUDの間で対話実現への仲介工作を開始した。使節団は、スペイン前首相ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテーロ、ドミニカ共和国前大統領レオネル・フェルナンデス、パナマ元大統領マルティン・トリホスの3人。マルティンは、パナマ運河返還を米国から勝ち取った故オマール・トリホス将軍の息子。

 コロンビア、米国、フランスなどは、この対話仲介工作への支持を表明した。また亜国、チレ、ウルグアイ3国政府は20日、ベネスエラの問題は「ベネスエラ人が、人権と自由を擁護しつつ対話を通じて解決すべきだ」とする声明を同時発表した。3国外相が共同声明に署名している。

 MUD内の遵法派は、政府がニコラース・マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票を年内に実施する決意ならば対話に応じる、との立場だ。

 国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は20日、MUDが提出した国民投票請求者名簿が正しいか否かを依然検証中、と明らかにした。これは「国民投票はない」との政府首脳らの言明と異なっており、政府が緊迫する事態を前に硬軟両方の対応を図りつつあることを示唆している。

 一方、MUD内右翼には、街頭暴動で治安を撹乱、「騒擾状態」を醸し軍を放棄させるゴルペ(クーデター)戦略の選択肢もある。政権党PSUVは、彼らは2002年4月のゴルペの再来を狙っている、と非難している。

 当時、野党勢力は街頭暴動で軍部を決起させ、ウーゴ・チャベス大統領(故人)を拘禁、チャベスはカリブ海の島に連行された。だがチャベス派部隊が蜂起し、ゴルペ派軍部に手を引かせた。チャベスはゴルペ3日目に政庁に復帰した。

 最高裁は19日、マドゥーロ大統領が発動した「非常事態」を合憲と判断した。同日、警察は、MUD最高幹部の一人ヘンリー・ラモス国会議長の護衛隊長を逮捕した。18日のMUD街頭行動中、機動隊員らを襲った暴力事件を教唆した疑いがかけられている。

▼ラ米短信  ボリビアのエボ・モラレス大統領は20日クーバを公式訪問し、ラウール・カストロ国家評議会議長と会談した。ヂウマ・ルセフ大統領が弾劾の危機に直面しているブラジル情勢が議題の一つであるのは想像に難くない。

 モラレスは19日にはラパスで、米国で成立した「多国間麻薬取引法」が、ボリビアに伝統的なコカ葉文化を規制対象にしていると指摘し、「コカ葉は尊厳と主権の象徴だ」と強調。「米国は世界の主ではない。我々は規制を許さない」と述べた。大統領はまた、「現代は帝国が新自由主義モデルをかざして支配する時代ではない。国際的な解放の時代だ」と語った。

 米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長が、「米州民主憲章」をベネスエラに適用しようと根回ししつあることについては、モラレスは「われわれには主権を持つ<大なる祖国>がある。OEAは米国の植民地省になれはしない。いかなる勢力の指図も不要だ」と反駁した。

 ラ米カリブ33カ国が構成する「ラ米・カリブ諸国共同体」(CELAC、2011年12月発足)が、「大なる祖国」を象徴する機関である。