2016年12月20日火曜日

メキシコ大統領が「トランプ政策への対応策」策定中と表明

 メヒコ国会上院は12月18日、ドナルド・トランプ次期米大統領の政権に予想される対墨政策に関し上院がエンリケ・ペニャ=ニエト大統領に書面で質問していた事項への大統領の回答を公開した。上院は次のような事情から、大統領に次期米政権に対する政策を質していた。

 トランプ氏の選挙戦中からの厳しい対墨発言により、メヒコでは先行き不安感が立ち込めている。米国からの対墨投資が様子見のため幾つも停止状態にある。雇用や経済成長への影響が出ているほか、在米不法滞在メヒコ人が大量に強制送還されれば、彼らからの送金が大幅に減り、これを重要な外貨収入源としているメヒコには重大な問題が生じる、との懸念も膨らんでいる。

 ペニャ大統領は、「北方には大統領選挙戦の枠を超えての排外主義的、人種主義的な姿勢が窺える」と前置きし、トランプ就任前に国益防衛策として、移民を支援する「社会経済支援計画」を策定すると回答。

 「特に不法移民の大量送還が統御できなくなる場合に備え、在米同胞の尊厳、福利、権利を守るための措置」として、保険、雇用、教育を含む様々な救済措置を講じると強調。外務省を中心に保健、労働、教育、財務、社会開発、農業、経済、地方・都市開発の各省と連携し、対策を策定中。

 オバーマ現政権下(2009~15年)に計290万人の在米不法滞在者が送還された。2015年度は24万人だった。

 ペニャ大統領は18日、下院で発言。米加両国と1994年から維持してきた北米自由貿易協定(NAFTA、西語ではTLCAN)の見直しをトランプが語っていることについても、「墨米2国間関係の対話を通じて双方に利益のある合意が得られるよう努めてゆく」と述べた。

 トランプは当選後、メヒコ進出を決めていた米企業3社を翻意させており、メヒコではトランプ就任後、短期的には米資本の流れが止まるのではないかとの観測が流れている。万が一、TLCAN(北米自由貿易条約)がなくなれば、メヒコ人1000万人が職を失うと見られている。

 トランプの下で副大統領となるペンス氏が、「NAFTA見直しには米墨国境地帯での安全保障問題も含まれる」と語っていることもメヒコ政府を深刻にしている。また軍部右翼強硬派だったジョン・ケリー前米南方軍司令官の国土安全保障長官への就任が決まっていることも不安材料だ。ケリーは「国境警備を厳重にする」と、厳しく望む姿勢を示している。

▼ラ米短信  ◎FARC戦闘継続派は190人か

 コロンビアのフアン=パブロ・ロドリゲス国軍司令官は12月19日、内戦終結合意に反対しているFARC反主流派は約190人で、その多くは東部ゲリラ軍団所属だと明らかにし、政府から彼らを掃討するよう命令されていると語った。

 同司令官はまた、FARC主流派は国内27カ所の指定地域に集結しつつあり、国軍兵士1万5000人および警察部隊2000人が2017年元日から旧FARC勢力圏に展開する、と述べた。これはFARC不在となった地域に極右準軍部隊など組織犯罪集団が入り込まないようにするための措置。