2017年4月27日木曜日

  ベネズエラが米州諸国機構(OEA・OAS)脱退を決定、事態は重大な局面へ。OEAは5月外相会議開催へ。CELACは5月2日エル・サルバドールで緊急外相会議を予定。トランプ米大統領は27日、反ベネズエラの急先鋒アルゼンチンのマクリ大統領と会談へ

 ベネスエラ政府が4月26日、ついに米州諸国機構(OEA、英語でOAS)脱退に踏み切った。OEA大使会合が同日、ベネスエラの意向に反して、ベネスエラ情勢を話し合う特別外相会議を5月半ば以降、開催することを決めたためである。ベネスエラ情勢は、重大な局面に入った。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はOEA決定を受けて、「私は帝国による内政干渉と決別するため巨大な一歩を踏みこんだ」と述べ、脱退決定を発表。これを受けてデルシー・ロドリゲス外相は大統領政庁で、「27日に脱退手続きを開始する。脱退には2年はかかる」と表明した。また規約により、加盟国割り当金870万ドルを支払わなければならない。

 OEA(加盟34カ国)は、外相会議招集賛成19、反対10、棄権4、不参加1で、招集を決めた。反ベネスエラの急先鋒アルヘンティーナからはスサーナ・マルコーラ外相が大使に代わって発言、「他国の人民や政府に干渉するのは許されないが、制度の民主化を促すのは内政干渉ではない。(ベネスエラでの暴動事件の)死者が制度と指導者の失敗を象徴している」と述べ、外相会議招集への賛成を促した。

 これに対し、ベネスエラのサムエル・モンカーダ大使は、「OEA史上もっとも暗い日だ。主権国家に決定を押し付けている。破壊活動はこのOEAの場から始まっている」と反撃した。

 デルシー外相は、脱退手続き開始を告げた後、OEAの敵対行動を非難、「OEAは米政府主導で内政干渉同盟を結成した。歴史は、北米合州国の国益に貢献しようと跪く従僕たちを厳しく糾弾することになろう」と批判。「脱退決定は成り行き的なものではなく、ボリーバル主義の内政干渉不可原則に則り為された」と説明した。

 外相はまた、ベネスエラの要請により、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、33カ国加盟)は5月2日、輪番制議長国エル・サルバドールの首都サンサルバドールで緊急外相会議を開く、と明らかにした。

 保守・右翼野党連合(MUD)は26日も首都カラカスなどで街頭行動を決行したが、27日も続行。28日にはMUD所属の政治家らが暴動教唆罪などで服役している刑務所まで行進し、囚人への面会を求めるという。政府のOEA脱退決定を受け、嵩にかかってて挑発する構えだ。MUDは、内外圧力の増幅で、これまでマドゥーロ政権を支持してきた軍部が離反すると計算している。

 一方、政府支持派のチャビスタ(チャベス主義者)青年団らは26日、政庁前で大集会を開き、大統領と会った。大統領は全国32国立大学の施設現代化や奨学金制度拡充のため330億ボリーバルを投下すると発表した。チャビスタも厳戒態勢と動員態勢を維持している。街頭での衝突が懸念されている。

 ドナルド・トランプ米大統領は27日、マウリシオ・マクリ亜国大統領を迎え、ベネスエラ情勢への対応を協議する。マルコーラ外相は、このためワシントン入りし、OEA会議に出席した。

 過去には1962年1月末、ケネディ米政権の主唱で、OEAはクーバを追放した。クーバは復帰要請を跳ね付けている。
    

2017年4月26日水曜日

  4月初めからのベネズエラでの反政府街頭行動の死者26人、負傷者437人。米州諸国機構(0EA)が緊急外相会議招集を協議。ベネズエラは自国の了承なく外相会議が開かれればOEA脱退辞さないと表明。併せてCELAC外相会議開催を要請▼キューバが国連で米国による「電波侵略」を告発

 ベネスエラのルイサ・オルテガ検事総長は4月25日、同月初めからの一連の反政府行動による死者が同日計26人に達したと発表した。負傷者は437人。殺傷、破壊行為、略奪などで1289人を逮捕、うち217人は出廷、65人は依然取り調べ中。他は釈放された。

 ワシントンの米州諸国機構(OEA)は25日、ベネスエラ情勢を話し合う緊急外相会議を招集するか否かを26日の大使会議で討議すると発表した。招集案は、亜URU伯PAR智秘COL巴CR・HON・GUA墨米加BAR・JAM・BAHの17カ国が提案した。

 これに対しデルシー・ロドリゲスVEN外相は、OEAがベネスエラの了承なしに外相会議を開いたら、直ちにOEAから脱退する手続きに入る、と言明した。ニコラース・マドウーロ大統領の命令という。

 外相はまた、国内右翼勢力がベネスエラの憲政民主秩序を脅かしている不安定化の策謀と、VEN独立・主権・自決への内政干渉について話し合い、糾弾するためとして、CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の緊急外相会議開催を、議長国エル・サルバドールに要請した。

 米州35カ国中、OEAにはクーバ以外の34カ国が加盟。CELACには米加の北米両国以外の33カ国が加盟している。玖米加以外の32カ国は双方に加盟している。

 一方、ウグベル・ロアVEN大学教育・科学技術相は25日、私立大学が勝手に休暇を制定し授業を中断したのは違法だと告発した。私大生が授業を気にせず反政府行動に参加するのを容易にするための措置であり、政府は認めがたい。

 ロア相はまた、「反政府右翼勢力は大学生ら若者を雇って暴動を起こし、国際社会に<内戦状況>を示し、外国の介入を誘導すべく策謀している」と非難した。

 反政府行動を指揮している保守・右翼野党連合MUDは26日、首都カラカス中心部のオンブズマン事務所に向けて行進する予定。政府支持派の若者は同日、大統領政庁(ミラフローレス宮)前に集結する。

 マドゥーロ大統領は25日、「国際労働者の日」(メイデー)には、労働者の生き方を変える重大決定を発表する、と明らかにした。政府系労働者は全体の56%に当たる約738万人。全国でメイデー行進に動員される。

 ベネスエラはモンテビデーオにある南部共同市場(メルコスール)本部で25日、議長国アルヘンティーナを相手に裁定を要求した。ベネスエラは昨年12月、亜伯PAR3国の主唱で、加盟資格を停止させられた。

▼ラ米短信    ◎クーバが国連で米国による「電波侵略」を告発

 米国はクーバに向けてラジオ、テレビによる宣伝放送=電波侵略を続けている。クーバは4月25日、国連情報委員会で告発した。玖側集計で、昨年、米領内から毎週25周波・計1000時間の電波侵略があった。

 ベネズエラ反政府勢力指導者がマドゥーロ政権打倒まで街頭行動続行と表明。チャベス像も倒される。政権党幹部は、反政府勢力は「街頭謀略」などCIA教本通りに行動していると暴露▼チリのエル・メルクリオ紙社主が死去

 ベネスエラでは4月24日も反政府勢力による抗議行動および、その別働隊の破壊活動と、対抗する治安部隊および支援勢力の衝突で死傷者が出た。破壊や略奪事件も起きた。

 保守・右翼野党連合MUD所属のホルヘ・ボルヘス国会議長は、26日にチャベス派の牙城である首都リベルタドール区への行進予定を発表、★「帰らざる行進だ。選挙実施まで、民主国家樹立まで続く」と述べ、平和行進と破壊活動を含む一連の街頭行動をマドゥーロ政権打倒まで続けるつもりであることを明らかにした。

 これに対し、政権党PSUV副党首ディオスダード・カベージョ国会議員は24日記者会見し、5月1日の「国際労働者の日」に政府支持派が首都カラカスで一大動員をかけると発表。★「右翼勢力はCIAの合法政権打倒教本に沿って反政府活動をしている」と指摘。「独裁から民主へ」、「テロリズムと都市ゲリラ教本」、「新しい都市蜂起:街頭謀略」の3教本を挙げた。

 24日も非公式集計で7人が極右暴徒の狙撃などにより死亡した。死者は30人に届こうとしている。カラカス警察署長も脚を撃たれ、病院で手当てを受けた。

  カラボボ州ディエゴイバーラ市では故ウーゴ・チャベス前大統領の立像が放火され、倒された。

 スペイン保守・右翼政界の旗頭マリアーノ・ラホーイ首相は24日ブラジリアでミシェル・テメル伯大統領と会談、ベネスエラ情勢を取り上げて、選挙を早く実施すべきだと述べた。これに対しデルシー・ロドリゲスVEN外相は25日、内政干渉として撥ねつけ、「スペイン政権党(PP)内部の汚職から目をそらせるために我が国を利用している」と非難した。

 同外相は、3月末に脱出しコロンビアに逃げ込んだ国軍尉官3人の身柄引き渡しを求めていたところ、コロンビア政府から「政治亡命を認める」との回答があったと明らかにした。3人は先ごろ、ベネスエラ国軍に反政府蜂起を呼び掛けるビデオメッセージを電脳機器で流した。

 政権党PSUV幹部は24日、ルイサ・オルテガ検事総長が、MUDによる反政府行動のさなかに破壊活動や殺傷事件が続発しているのを非難していないと指摘、同検事総長を非難した。政府・政権党の高官間のこの種の批判は珍しい。

 一方、国際通貨基金(IMF)は24日マナグアでニカラグア経済状況を調査、ベネスエラによるニカラグアへの資金援助が過去2年間、大幅に減少していると明らかにした。

▼ラ米短信   ◎チレ軍政を支持した新聞社主が死去

 チリでエル・メルクリオ、ラ・セグンダ、ラス・ウルティマス・ノティシアスの保守・右翼系3紙を発行していた新聞社主アグスティン・エドゥワーズ(89)が4月24日、老衰で死去した。

 70年代初め、アジェンデ社会主義政権に反対、アウグスト・ピノチェー将軍らによる軍事クー^デターを煽った。米国に留学、親米で、米大使館やCIAと通じていた。 

2017年4月24日月曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が反政府野党連合に対話を呼び掛け、選挙実施の意思示す▼アルゼンチンでは軍政期に行方不明となった「赤子」を発見、122人目

 ベネスエラは4月23日、比較的平穏な日曜日を迎えた。ニコラース・マドゥーロ大統領はテレビの日曜定例番組で、「我々は対話の用意がある。右翼の暴力と、極右のゴルペ主義(クーデターの策謀)を止めさせるため」と述べ、保守・右翼野党連合MUDに対話を呼び掛けた。MUDは24日、首都カラカスをはじめ全国の主要道路で「立ち番(監視活動)」を展開する予定。

 大統領はまた、「我々は内戦に向かってはいない。人民革命という歴史的で新しい解放過程を進んでいる。革命の下での平和を目指している。ベネスエラに平和なくして、ラ米に平和はない」と強調した。

 マドゥーロは、「労農・先住民で構成する人民制憲議会を通じて共和国を再建するため、選挙による平和裡の人民制憲過程を推進する。私は政府首班、国家元首として、選挙を実施したい」と語り、州知事・州会議員選挙を実施する意志を示した。

 さらに、「破壊活動に駆り立てている野党議員らを、エル・バージェ地区での略奪や母子病院襲撃の責任者として司法に委ねたい」と述べた。また「ミランダ州と首都カラカスで暴徒に破壊され略奪された50軒の店舗・商店に計180万ドルの救済資金を渡した」と明らかにした。暴徒の多くは、破壊活動を働くMUDの別働隊。

 大統領は、ローマ法王による対話の仲介を希望。JLRサパテーロ前スペイン首相ら南米諸国連合(ウナスール)の仲介使節団3人の来訪を要請した。

 政府の貧困大衆向け住宅政策に触れて、既に160万戸を建設したが、年末には200万戸に到達したい、と述べた。

 政府支持派は23日、エル・バージェ地区など、暴徒による破壊活動がひどかった地区で掃除、バリケード撤去、瓦礫除去、植樹などの活動を繰り広げた。

 ネストル・レベロール内相は、19日に反政府側がビルの上層部から意図的に落とした瓶で頭部を割られた47歳の女性が23日死亡した、と発表した。非公式集計では、4月初めからのMUDによる反政府街頭行動関係の死者は21~22人に達した。

 コロンビア極右勢力の旗頭、アルバロ・ウリーベ前大統領は、「マドゥーロを排除すべき時だ」と表明した。リカルド・ルーナ秘外相は、法王庁とラ米有志諸国がベネスエラ対話の仲介者となるべきだ、と提案した。

 一方、国際通貨基金(IMF)はベネスエラの経済指標に触れ、今年のインフレを2068%と予測。経済は昨年18%縮小したが、今年7・4%、来年4・1%、それぞれ縮小すると展望した。失業率は昨年21%だった。

▼ラ米短信    ◎亜国で軍政に奪われた「赤子」を発見

 アルヘンティーナ軍政期に息子・娘を殺害され孫を奪われた祖母たちの「五月広場の祖母たちの会」は4月23日、「孫を見つけた。これで122人め」と発表した。目下、法的手続き中。まだ400人前後の「元赤子」が見つかっていない。

 1977年にブエノスアイレス市内で軍政に拉致され殺害された男女の娘で、現在39歳。殺された両親は、ペロン派極左地下結社「モントネロス」の要員だった。母親は赤子を産むとすぐに引き離され、抹殺された。

2017年4月23日日曜日

 ベネズエラ政府が外国メディアに「虚偽報道」止めるよう要請。野党連合MUDは久々に別働隊加えず平和行進▼パナマ運河を米原潜が通航▼ニカラグアで運河建設反対派が規制さる▼キューバが37年ぶりにモロッコと復交

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月22日、「ベネスエラは平和のために行動している。ヴァティカンと国際社会と対話しつつ、テロリズムに訴えている犯罪組織を取締まっている」と述べた。

 また、「帝国主義に支援された国内右翼勢力による不安定化の企みを引き続き打ち破ってゆく。ファシズムと不寛容は革命と祖国愛のベネスエラでは立ち行かない」と強調した。

 エルネスト・ビジェーガス伝達・情報相とデルシー・ロドリゲス外相は、カラカスで外国メディア通信員を集めて記者会見し、メディアによる意図的誤報、虚偽報道などを厳しく批判、「伝達の専門職として責任を持ち、倫理的で公平な報道を心がけてほしい」と訴えた。

 ビジェーガスは、虚偽報道の一例として、カラカス市リベルタドール区エル・バージェの母子病院が野党勢力に雇われた暴徒に襲撃された際、あたかも治安当局に責任があるかのように報じたメディアがあった事実を指摘した。

 同区のホルヘ・ロドリゲス区長(外相の実兄)は、暴動・略奪の被害が大きかったエル・バージェ地区で貧しい住民9800家庭に食糧品を配布した。政府支持派は、23日、一帯で破壊の跡を清掃したり、街路樹の苗木を植えたりしている。

 ネストル・レベロール内相は、タチラ州サンクリストーバル市で若い女性が19日射殺された事件の容疑者の男を逮捕、取り調べ中と明らかにした。内相は、容疑者は保守・右翼野党連合(MUD)右翼のマリーア・マチャード元国会議員の政治組織「ベンテ・ベネスエラ」に所属していると明かした。

 コロンビア政府との和平実施過程にあるゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)の最高司令ティモチェンコ(ロドリーゴ・ロンドーニョ)は22日、「ベネスエラが誹謗中傷されているいま、黙ってはいられない」として、「ボリバリアーナ革命政権を支持する」と表明した。

 同司令は、「コロンビアのメディアは、ベネスエラにあるチャベスへの情熱や、マドゥーロ大統領支持派の存在などに触れず、一方的にベネスエラを暴力や殺人だけの社会のように報じているが、ベネスエラは新自由主義政策に代わりうる政経両面の政策を実施している、民主と寛容のある美しい国だ」と強調した。

 さらに、「米国は世界各地で原油を奪うため、ありえないようなことも含め何でもやる」と、米国を非難した。

 一方、MUDは22日、予定通り、カラカス市内をカトリック司教会議本部まで「沈黙の行進」を実行した。平和裏に行進したが、このことは、MUDが破壊活動やテロリスムを働く別働隊を介入させなければ、平和裡の抗議活動が可能なことを示した。

 ブラジルのミシェル・テメル大統領は、メディアに、ベネスエラは選挙を早期実施すべきだと語った。昨年、不当な弾劾でヂウマ・ルセーフ大統領の合憲政府を倒し、政権に就いたテメルであり、発言に重みはない。顰蹙さえ買っている。

 モロッコ政府もベネスエラを非難したが、ベネスエラ外務省は21日、「国連の植民地解体委員会で議題になっている西サハラ不法占領国(モロッコ)の振舞いはいただけない」と一蹴した。

 デルシー外相は21日、1年交代・輪番制の南米諸国連合(ウナスール)議長の座を、アルヘンティーナに渡した。

▼ラ米短信   ◎米原潜がパナマ運河通過し太平洋に展開

 米海軍の原潜1隻が17日パナマ運河をカリブ海から太平洋に向けて通航したことが確認されていたが、パナマ運河庁(ACP)は22日、通航したのはUSダラス(SSN-700)だと明らかにした。朝鮮半島に近い海域に向かうと見られている。

▼ラ米短信   ◎ニカラグア運河建設反対行動が規制さる

 建設中の「ニカラグア大運河」に反対する農民や住民らは4月22日、「地球の日」に合わせて、中部のフイハルパ市で反対行進を展開することにしていたが、警察に阻止され、参加者は市内に入れなかった。

 カリブ沿岸地方の先住民らの「土地・湖水・主権防衛会議」の面々や、首都マナグアからの「サンディニスタ刷新運動」(MRS)、「民主拡大戦線」(FAD)など野党の党員が阻止された。

 政府側は同市でこの日、運河建設に賛成する政府支持派を集め、「緑の行進」を実施した。

▼ラ米短信   ◎クーバがモロッコと国交再開

 クーバとモロッコは4月21日、国連本部で国交再開文書を交わした。クーバは、西サハラで1976年に独立を宣言した「サハラウイ・アラブ民主共和国」(RASD)を80年承認、西サハラを不法占領中のモロッコは断交した。

 モロッコのムハマド6世は今月初め、秘かにクーバの保養地を訪れていた。モロッコは今年1月末、西サハラ問題をめぐり脱退していたアフリカ連合(AU)に復帰した。今回の復交で、モロッコに対するクーバとベネスエラの立場の違いが鮮明になった。

 一方、ブルーノ・ロドリゲス外相は17~22日、スペイン、ポルトガル、ギリシャ3国を歴訪した。近い将来、スペインの国王と首相が訪玖する予定。 

2017年4月21日金曜日

 ベネズエラで暴力・略奪続き、暴徒ら12人死亡、6人重傷。暴徒は母子病院も襲い、当局が赤子54人を救出。反政府勢力は街頭行動続行へ。国連総長は対話を呼び掛け▼米退役軍人らがトランプ大統領にキューバとの関係拡大を要請

 ベネズエラでは4月20日も反政府勢力による行進、集会があり、首都カラカスでは同勢力の別働隊が首都西部のエル・バージェ地区などで夜から21日未明にかけて暴動、略奪に出た。一連の事件で計12人が死亡、6人が重傷。

 ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)が出動し、催涙ガスなどで鎮圧したが、暴動時に若者1人が銃弾を受けて死亡。それを発射したのがいかなる勢力か判明していない。首都の地下鉄駅では車両の硬質ガラスが数多く破壊された。

 エル・バージェ地区ではパン屋が暴徒に略奪されたが、その際、暴徒9人が感電死した。さらに略奪を防ごうとした商店主1人が暴徒に射殺された。他の1人も死亡したが、状況は不明。

 デルシー・ロドリゲス外相は20日、カラカス市内にある母子病院を暴徒が襲撃、生後間もない赤子54人を当局が救出した、と明らかにした。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はこの日、無料保健事業「バリオ・アデントロ」の行事で演説、過去14年間にベネスエラ人176万人が命を救われた、と述べた。同事業の一環として、全国各地で病院建設などが進んでいることにも触れた。

 大統領は19日の反政府勢力との攻防戦について、「国際社会に祖国防衛の巨大な教訓を与えた。勇敢な人民に感謝する。革命的人民は国中の道路を受け尽くし、祖国を守った」と、大量動員に応じた政府支持派を讃えた。

 マドゥーロは、反政府勢力の指導部である保守・右翼野党連語MUDについて、「野党の一部が対話に応じると回答してきている」と語った。だが党名には触れなかった。
 
 大統領はまた、電話会社モビスター社を捜査するよう、当局に命じた。同社は19日、MUDのため2時間ごとに動員を呼び掛けるメンサヘ(メッセージ)を発信していた、という。

 隣国コロンビアのJMサントス大統領は20日、「ボリバリアーナ革命は失敗した。そのことを6年前にチャベス(故ウーゴ・チャベス前大統領)に伝えた」と明言した。

 マドゥーロ大統領は反発、「コロンビアは失敗国家だ。70年も内戦が続いてきた。内戦を逃れたコロンビア人がベネスエラ国内に560万人もいる。去年は10万人、ことし1~3月には3万5000人が入国した」と言い返した。

 続けて、「コロンビアは(FARCとの)和平に漕ぎつけたが、チャベスと私のお陰だ。交渉中の各当事者の発言は録音してある。公表しようか。コロンビア人が和平を蔑んでいるのだ。今も蔑み、農民、労働者、学生らの指導者が殺されている。いまはFARC幹部の殺害準備を進めているはずだ」と、厳しく非難した。

 「コロンビアでは医療と薬品はブルジョアのもので、貧者は享受できない。ベネスエラでは庶民大衆は無料で享受している」とも付け加えた。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は20日、「帝国(米国)は反帝国主義諸国への見せしめとしてマドゥーロ政権を倒そうとしている。石油確保も狙っている」と、米政府を糾弾した。

 中国政府も21日、声明で「ベネスエラ政府が内政問題をきちんと解決し、安定化をもたらすと確信する」と表明した。

 国連のアントニオ・グテレス事務総長は20日、「政治的分極化を和らげるよう、双方が具体的に提案し、話し合うべきだ」とベネスエラ両派に呼び掛けた。これに亜伯URUPAR智秘COL・CR墨9カ国政府が賛同した。

 一方、MUDは20日、「抵抗運動犠牲者の鎮魂のため」として、首都にあるカトリック司教会議本部まで22日に「沈黙の抗議行進」を実施、24日には全国幹線道路で「立ち番(見張り)」を展開する、と発表した。

 法廷は20日、今月11日に若者1人が散弾を受けて死亡した事件で、GNB要員4人の見型を拘禁した、と発表した。またポルトゲーサ州知事は、州内で起きた19日の反政府派による破壊活動で2億6000万ボルーバルの損害が出た、と明らかにした。

▼ラ米短信  ◎米退役軍人たちがトランプ大統領に対玖関係拡大を要請
 玖共産党機関紙グランマは4月20日、米軍退役将官たちが書簡でDトランプ大統領に、クーバの地政学的・戦略的重要性に鑑み、関係を維持・拡大するよう要請した、と報じた。

 米共和党内にはクーバ系議員ら、在米・反クーバ市民らの意向に沿って対玖断交や関係凍結を主張し、これをトランプに吹き込む者がいる。退役軍人らは、米国益は対玖関係拡大にあるとの立場だ。

 
 

 

2017年4月20日木曜日

 ベネズエラ政府・反政府両勢力の大動員合戦は「天王山」の19日、死者3人、負傷者64人、逮捕者312人。反政府側は20日も動員へ。大統領は対話を呼び掛け▼エクアドル次期大統領にモレーノ氏認定▼LATINA誌がエクアドル情勢特集記事掲載

 大産油国ベネスエラの新旧支配勢力間の大動員対決は4月19日、首都カラカスをはじめ全国各地で展開され、「痛み分け」に終わった。「天王山」の闘争での「引き分け」は、権力を握る政府側の「勝利」と言える。旧支配層を代表する保守・右翼野党連合MUDは20日も大量動員による反政府行動を決行すると表明、緊張状態が続いている。

 オンブズマン事務所および警察の発表によると、19日の両派の衝突で、ミランダ州内で17歳の少年、コロンビア国境に近いサンクリストーバル市で23歳の女性が、それぞれ銃弾を受けて死亡した。ミランダ州内では国家警備隊(GNB)の軍曹1人が顔面に銃弾を受け死亡、同大佐一人が脚に銃弾を受け負傷した。首都では国家警察(PNB)要員19人が負傷、うち9人は婦警だった。負傷者は64人、逮捕者は全国で312に及んだ。

 タレク・エルアイサミ副大統領は、「ベネスエラが混沌状態にあるとの偽った印象を国際社会に広めようとしている輩がいる。右翼国会議員フレディ・ゲバラがMUDの覆面別働隊を指揮していた証拠がある」と明らかにした。また、「一連の街頭暴力事件は、フリオ・ボルヘス議員(国会議長)が促進したと確信する」と断言した。

 首都チャカオ区にある「国家適正価格管理行政本部」(SUNDDE)は暴徒に破壊され、電脳危機などが略奪された。MUD系区長の下にある同区警察は見て見ぬふりしていたと、政府側は非難、区長らを取り調べることにしている。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、支持派の大群衆の前で演説。カラカスだけで政府支持派300万人を動員したと述べた。大統領は、右翼勢力(旧支配層)を、街頭暴力を煽って騒乱状態を起こし、それを内外メディアに報じさせ、国際社会に「弾圧・独裁」などの悪印象を拡め、米国と連携してゴルペ(クーデター)を起こそうと謀った、と糾弾した。

 大統領は、MUDがゴルペを画策する理由として、①米政府の内政干渉声明というお墨付きを得た②ベネスエラの経済復調を阻止する③国会で圧倒的多数を占めながら公約を果たせないーの3点を挙げた。

 マドゥーロはまた、「ベネスエラに必要なのは労働、生産、団結、調和、共生、平穏、愛だ」と指摘。MUDに対話を求めた。政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)幹部エリーアス・ハウア、首都リベルタドール区長ホルヘ・ロドリゲス、その妹で外相のデルシー・ロドリゲスを「国民和平対話」の担当者に任命。併せてジャーナリストのJV・ランヘールと教授エルマン・エスカラーに、対話顧問になるよう要請した。

 大統領はさらに、「選挙を実施したい。選挙闘争を始めよう。選挙で平和裡に勝利しよう」と支持者に呼び掛けた。16年末までに実施予定だった州知事・州会議員選挙を指している。次期大統領選挙は18年末、実施される。

 米国は内政干渉発言を続けており、レックス・ティラーソン国務長官は19日、「マドゥーロ政権は野党に耳を貸さないから我々は懸念する。ベネスエラ情勢を注視している」と述べた。これに対しデルシー外相は同日、「世界とベネスエラは、米軍によるシリアとアフガニスタンへの爆撃を深く憂慮している。米国の移民政策や制度的人種主義を懸念している」と反撃した。

 マドゥーロの「民兵隊拡大」政策に懸念を表明しているコロンビアのJMサントス大統領に対してデルシーは、「心配無用」といなした。マドゥーロも、「コロンビアはベネスエラから生まれた。我々は父であり、コロンビアの寡頭勢力は私を尊重せねばならない。両国民は兄弟だ」と述べ、サントスを揶揄した。

 諜報機関SEBINは19日、マラカイボ在住の反政府派退役陸軍少将クリベル・アルカラーの自宅を捜索した。「ゴルペの陰謀」への加担可能性が捜索理由と見られるが、軍部内のMUD同調勢力への牽制策であるのは疑いない。

 国軍の「現役佐官・尉官級将校」らの「反政府声明読み上げ場面」を映した映像が出回っているが、真偽は不明。マドゥーロ政権に忠誠を誓う国軍上層部と中堅将校を離反させたいゴルペ派の陰謀であるのは間違いない。

 チレのアジェンデ社会主義政権は1970~73年存続、国内の伝統的支配勢力、保守・右翼政党、米政府に揺さぶられ続けた結果、アウグスト・ピノチェー将軍らによる軍事ゴルペで押しつぶされた。現在のMUD・米政府・OEAの連携戦略は、44年前のチレでのアジェンデ政権打倒の陰謀を想起させる。

▼ラ米短信   ◎エクアドール選管がレニーン・モレーノ勝利を正式に認定

 赤道国で4月2日実施された大統領選挙決選の勝者は4月18日、コレア現政権の後継者レニーン・モレーノ候補と正式に確定した。モレーノは5月24日就任する。

 既に勝利は決まっていたが、敗れた保守・右翼候補ギジェルモ・ラッソが敗北を認めず、開票やり直しを要求。選管は、約120万票を集計をし直し、あらためてモレーノを次期大統領に認定した。だラッソはまだ、敗北を認めていない。

★★★◎月刊誌LATINA5月号がエクアドール特集記事掲載

 同誌連載の伊高浩昭執筆「ラ米乱反射」第133回は、「エクアドール次期大統領はレニーン・モレーノ  <市民革命>継続、南米右傾化食い止める」(6ページ特集)。現代赤道国の政情や今回の大統領選挙のもようが詳述・解説されている。 

2017年4月19日水曜日

  独立闘争開始記念日の19日、ベネズエラ全土で緊張。「クーデター阻止」主張のマドゥーロ政権と「政権打倒」狙う反政府勢力が大動員態勢。米州全体が警戒

 ベネスエラは4月19日、全土で緊張が高まる中で不気味な朝を迎えた。1810年のこの日、ベネスエラ独立派は宗主国スペインに対し独立を叫び、独立闘争を開始した。祝日だが、政府支持派と反政府派はそれぞれ、首都カラカスをはじめ全国各地で最大動員をかけ、対決する構えだ。

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は、「米政府主導で野党連合MUDが策謀しているゴルペ(クーデター)を潰すため」行動すると主張。フリオ・ボルヘス国会議長以下の保守・右翼野党連合MUDは、マドゥーロ政権打倒を目指して展開する。

 マドゥーロ大統領は18日、民・軍共同で治安を維持する「対ゴルペ作戦」である「サモーラ計画」を発動した。全国で陸海空軍および国家警備隊(GNB)の4軍(16万5000人)、国家警察と、予備役(2万5000人)を含む民兵隊(MNB、10万人)が出動、治安維持に当たっている。

 カラカス一帯では18日夜から主要自動車道の閉鎖と検問が始まり、早朝の首都の街は閑散としていた。当局は18日までに、ゴルぺ誘発を狙う破壊活動を準備していた武装集団の一部を逮捕した、と明らかにしている。

 ボルヘス議長は18日、国会内で声明を発表、国軍に「憲政と人民の側に立ってほしい」と要請、暗に政府との離反を求めた。国軍は17日、「政府無条件支持」を大統領に誓っている。

 MUDを支援するトランプ米政権は18日、国務省声明を通じて、マドゥーロ政権に「対話による問題解決、憲政擁護、囚人釈放、選挙早期実施」を呼び掛けた。17日のラ米11カ国政府の共同声明に沿った要求だ。

 デルシー・ロドリゲス外相は18日、同11カ国政府に対し、「粗暴な内政干渉を排撃する。反政府勢力に蛮行を保障する低俗な二重基準だ」と糾弾。「国際法に違反して内政干渉している。彼らは自分たちの国で人権を蹂躙しながらベネスエラを統治しようとしているが、馬鹿げたことだ」と反撃した。米政府に対しても同様の反応を示すはずだ。

 外相はまた、ベネスエラ攻撃を続けている米州諸国機構(OEA)について、「政権党指導部にOEA脱退論があるが、OEA内に留まって闘う」と述べた。

 OEAのルイス・アルマグロ事務総長は18日、ドミニカ共和国(RD)の首都サントドミンゴでレオネル・フェルナンス前RD大統領とベネスエラ情勢をめぐって会談した。フェルナンデスは、南米諸国連合(ウナスール)のベネスエラ対話仲介班の元首脳3人の一人。マドリードでは19日、スペインとメヒコの外相がベネスエラ情勢について会談した。

 マドゥーロ大統領は17日の民兵隊創設記念日の式典で、現在10万人の民兵を50万人に増やし、各要員に自動ライフル銃を持たせると表明した。ジュネーヴの国連人権担当高等弁務官事務所は18日、人民(民兵隊)へ武器供与(武装)は緊張と紛争を激化させると批判した。隣国コロンビアのJMサントス大統領も18日、武装民兵隊大増員計画に「深刻な懸念」を表明した。

 マドゥーロ大統領は18日、カラカスの表玄関の空港と港のあるバルガス州の海岸地帯に建設された広大な「ボリーバル広場」の開場式に出席。馬上のシモン・ボリーバル像と故ウーゴ・チャベス前大統領像の除幕式を執り行った。

 MUDは昨年来、内部分裂し支持率も下がっていた。だがマドゥーロ政権が3月末、最高裁・憲法法廷による国会機能代行を決める、事実上の国会閉鎖に踏み切ったことで、MUDを団結させてしまった。

 内外の激しい反発を受けた政権は、検事総長に国会機能代行を違憲と宣言させ、決定を元に戻した。この失態に勢いづいた反政府勢力は4月初めから6波の大動員をかけ、政府を揺さぶってきた。

 反政府勢力には街頭暴力に訴える若者たちの別働隊がいて、破壊活動を働いてきた。これに対し政府側は治安部隊による鎮圧の他、対暴力組織を出動させ、対抗している。行進する両派の大多数の市民は平和裡の行動を望んでいるが、両派の暴力装置が衝突すれば、流血の事態となる。

 反政府側には、流血が大惨事になり、国軍が分裂、ゴルペに繋がるのを期待する極右がいる。治安部隊が挑発にどこまで耐えられるかも試される。

2017年4月18日火曜日

  リマの日本大使公邸占拠事件決着から20年。公邸突入の国軍特殊部隊を「民主の英雄」にするか否か、ペルー国会で意見飛び交う▼ベネズエラ国軍がマドゥーロ政権に「無条件忠誠」誓う。19日カラカスでの両派最大動員前に緊張高まる

 リマ市の日本大使公邸が1996年12月17日、ゲリラ組織「トゥパック・アマルー革命運動」(MRTA)の14人の突撃隊(コマンド)に占拠された事件が97年4月22日に決着してから20年になろうとしている。これに先立ちペルー国会は17日、国会内で記念式典を催した。

 当時の日本大使公邸の玄関の模型が「英雄記念碑」として設(しつら)えられ、これを背景にルス・サルガード国会議長(フジモリ派「人民勢力」(FP)所属)が、「ペルーは公邸を解放し人質を救出した軍特殊部隊に負っている」と語った。「英雄記念碑」とは、この「チャビン・デ・ウアンタル作戦」に参加した140人の特殊部隊要員を指す。

 式典には、事件当時のフランシスコ・トゥデーラ外相、ルイス・ジャンピエトゥリ海軍中将、マルコ・ミヤシロ国家警察幹部(現FP国会議員)ら、人質だった人々も出席。MRTAに急襲されてから126日間続いた悪夢の日々や、政府当局と秘かに連絡を取り合って救出作戦を導いたことなどを語った。

 国会国防委員会は17日、ペルーアプリスタ党(PAP)所属のルシアーナ・レオン委員長提出の、特殊部隊140人に「民主の英雄」の称号を与え、勲章、最低賃金と同額の終身年金供与などの恩恵を施す法案を可決した。法案は本会議に送付された。この恩恵には、無料医療・薬品供与、大学教育補助、住宅購入補助もあり、死に際しては、墓石に「英雄」称号が記録される。

 だが、委員会審議や国会議員の間で、さまざまな意見が飛び交った。左翼野党「拡大戦線」(FA)のフスティニアーノ・アパーサ議員は、「特殊部隊は140人、MRTAコマンドは14人、多勢に無勢の作戦だった。軍は国防のためにあり、国家の危機を任務として遂行したまでだ」と指摘。「英雄とは、何らかの物事を思想や原則に基づいて解決したり守ったりする者を意味する。それに特殊部隊には、投降したゲリラ数人を射殺した疑いもある」と反対意見を述べた。

 また、FAのリチャード・アルセ議員は、「<輝く道>(SL)、MRTA、国家テロのいずれにも反対する。特殊部隊は<平定の英雄>と呼ぶべきだ」と対案を唱えた。

 だがFPのフアン・デルアギーラ議員は、「MRTAの行動は破壊活動であり、特殊部隊出動に値した」とし、「全会一致の必要はないが、FAは考え直すべきだ」と反論した。

 国会のロサ・バルトクラ第2副議長は、「反テロリズム作戦に貢献した軍・警察・市民組織の業績を認める法案を国会で通したい。公邸事件を解決した特殊部隊について学校教育で教えるべきだ」と訴えた。

 一方、PPクチンスキ大統領は19日、公邸事件解決20周年の記念行事を催す。また国防省は20日に式典を開く。ホルヘ・ニエト国防相は」17日、突撃時に隊員2人が殉職し、人質だった判事1人が死亡したことに触れ、「特殊部隊は大多数のペルー人民にとって英雄だ」と強調した。

▼ベネスエラ情勢   ◎国軍がマドゥーロ政権に「無条件忠誠」を誓う

 ボリバリアーナ国家民兵隊(MNB)発足7周年記念日の4月17日、その部隊が首都カラカス中心街を行進。ニコラース・マドゥーロ大統領は記念式典で演説、国軍(FANB)とMNBに謝意を表した。大統領は、MNB要員を50万人に拡大させると述べた。

 式典でウラディーミル・パドゥリーノ国防相は「国軍は平和と人民の民主を守る」として、マドゥーロ政権への無条件忠誠を誓った。また、保守・右翼野党連合MUDについて、「国外の極右勢力の支援を受けて、テロリズム、騒乱、略奪、蛮行を続けている」と糾弾した。大統領は、4月初めからの一連の街頭暴動事件で総額500億ボリーバルの損害が出た、と明らかにしている。

 MUDは17日、大統領から交渉を働きかけられた、とのマイアミ紙の報道を事実無根と否定した。野党は、終わったばかりの聖週間で、マドゥーロ人形を「フーダス」(裏切り者のユダヤ人)として燃やしたり、陸橋から吊り下げたりした。これに対し政府支持派は、米大統領、アルマグロOEA事務総長、MUD幹部らの人形を燃やした。

 両派は、ベネスエラ独立闘争開始記念日の19日、カラカスでそれぞれ最大動員をかけて行進し、集会を開く。衝突する危険性があり、緊張が高まってる。

 OEAでベネスエラ政府に厳しいアルマグロ総長を支持する亜URU伯PAR智COL秘CR・HON・GUA墨の11カ国政府は17日、ボゴタで共同声明を発表。ベネスエラ政府に「デモ行進の自由」尊重を、MUDに「責任ある行動」をとるよう訴えた。また政府側には、選挙実施日程を決めるよう求めた。

 一方、ドミニカ共和国(RD)政府は17日、ベネスエラの反政府勢力とCIAがRD国内で会合しているとのテレベン報道を受けて、「捜査する」と表明した。 
  

2017年4月17日月曜日

 ベネズエラ国軍現役士官らがCIAとドミニカ共和国で定期的に会合、クーデターを謀議と、ジャーナリストJV・ランヘールが暴露▼メキシコでジャーナリストがまた殺される

 ベネスエラの著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘールは4月16日、TVテレベンの日曜定例番組で、反政府勢力がドミニカ共和国(RD)の高級ホテルで定期的に米CIA(中央情報局)と会合している、と暴露した。ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権を打倒するゴルペ(クーデター)の可能性などを謀議しているという。

 この会合には、ベネスエラ側から「国軍現役士官たち、同退役将軍1人、著名な元テレビ人1人」が参加しているという。ランヘールは、故ウーゴ・チャベス前大統領の政権で外相、国防相、副大統領を務めた。マドゥーロ政権の諜報機密情報に接近できる立場にある。

 ランヘールはまた、ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDについて、「いくら街頭動員しても、ベネスエラ人民の平和主義をくずせない」と指摘。それがため、陰謀に傾斜しているとの見方を示唆した。

 さらに、ベネスエラ教会指導部はフランシスコ法王との隔たりが増しており、憲政逸脱傾向を強めている、と批判した。ラ米などの元大統領ら20人が、ゴルペ支持派の米州諸国機構(OEA)事務総長ルイス・アルマグロと連携して、「米州民主憲章」をベネスエラに適用しようと謀っている、とも述べた。

 マドゥーロ大統領は16日、定例TV番組で、「(チャベス派)市民は右翼暴力を打ち破った」と強調した。また、タレク・エルアイサミ執権副大統領は15日、MUDの街頭での反政府行動について「ゴルペ正当化のための理由づけ」と非難した。

 政府とMUDは19日、首都カラカスで、最大動員をかけると共に表明しており、緊張が高まっている。マドゥーロ大統領は、聖週間の特別警備態勢を19日まで延長、厳戒態勢をとる。

 政府諜報機関SEBINは、7日逮捕した著名な反政府派の退役少将アンヘル・ビバス(60)を取り調べた。ビバスは軍事法廷に立たされる見通しと伝えられる。

 一方、D・トランプ米大統領とフロリダ州の別荘で14日会合したコロンビア政界極右指導者アルバロ・ウリーベ前大統領は、米議会に、マドゥーロ大統領を政権から降ろし、ベネスエラを法治国家とすべきだ、という趣旨の主張を含む書簡を送ったことを15日明らかにした。

▼ラ米短信  ◎またメヒコでジャーナリストが殺される

 メヒコ北西部の南下加州都ラパスで4月14日、電子メディア「コレクティーボ・ペリクー」の論説記者マキシミニオ・ロドリゲス(73)が白昼、商店街の駐車場で、自動小銃により銃弾15発を見舞われて即死した。

 ロドリゲスは、政治、警察、治安などの専門記者。昨年来、組織犯罪集団と見られる方面から脅迫されていた。これで今年メヒコで殺されたジャーナリストは4人となった。2000年からは104人目とされる。
 

2017年4月15日土曜日

 国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が10月撤収開始へ。ノーベル平和賞受賞5人は、強姦など派遣団の罪状を告発▼ベネズエラ反政府勢力は19日を対政府行動の「天王山」と位置付け。ミランダ州では20店舗など破壊さる▼ベネズエラ外交の重鎮は「OEA脱退論」を牽制

 米州の最貧国アイチ(ハイチ)で評判の悪かった「国連ハイチ安定化派遣団」(MINUSTAH)が10月15日から撤退することになった。国連安保理が4月13日、全会一致で決めた。

 同派遣団は2004年6月、駐留を開始した。ジャン=ベルトラン・アリスティド大統領が米仏加3国によってアフリカに身柄を放置された政変後の混乱に対処するためだった。

 2010年初めには、首都ポルトープランス一帯が激震に見舞われて破壊され、22万5000人が死亡した。派遣団要員102人も犠牲になった。この大地震の後、ネパール兵からもたらされたコレラ菌が、貧しい人々が飲んでいた川の水などを通じて拡散し、約1万人が死亡した。国連は加盟諸国にコレラ対策資金として4億ドルを募金したが、260万ドルしか集まらなかった。

 国連は、昨年の選挙を経て2月7日、ジョヴネル・モイーズ大統領の政権が発足したのを受けて、民主制度が曲りなりにも定着したと判断、派遣団撤収を決めた。撤収後は代わって、「国連ハイチ司法任務部隊」が駐屯する。軍人980人、警官295人で、アイチの法治、国家警察育成、人権擁護を指導する。

 派遣団は最大人数の要員(計1万3000人)を派遣したブラジルが指揮してきた。約20カ国が軍人や警官を派遣してきた。派遣団は治安確保や災害救援などで活躍したが、犯罪も働き、特に強姦事件を数多く起こし、国際問題化した。

 国連に対する強姦告発は2000件、うち未成年者は300件。他に泣き寝入りした女性が少なくない。被害者の女性たちには、精神的に苦しみ続け、妊娠させられ子供を生み、HIVを移された者がかなりいる。

 国連の捜査で、スリランカ兵134人が04~07年に強姦など犯罪を犯した。バングラデシュ、パキスタン、ヨルダン、ナイジェリア、ブラジル、ウルグアイの兵士らも関与した。

 亜国のアドルフォ・ペレス=エスキベル、グアテマラのリゴベルタ・メンチューらノーベル平和賞受賞者5人は13日、アントニオ・グテレス国連事務総長宛てに公開書簡を送り、派遣団の罪状の徹底捜査を求めた。コレラ感染者を含む被害者への賠償も要求した。

 同5人は、派遣団撤収に「大賛成」。「彼らは、かつての米軍のアイチ占領軍のようなものだ。アイチ人には協力が必要であって、後見保護ではない。国連は信用を問われている」と厳しく批判している。

 この書簡には、昨年の同賞受賞者,JMサントス・コロンビア大統領は参加していない。09年の受賞者バラク・オバーマ前米大統領も加わっていない。

◎ベネスエラ情勢:反政府勢力は19日を天王山に定める

 保守・右翼野党連合MUDは独立闘争開始記念日の4月19日、首都カラカスで最大動員をかけ、市内26地点からオンブズマン事務所に向けて抗議行進を予定、「国会尊重」、「囚人釈放」、「選挙早期実施」、「人権擁護」などを訴える。

 ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権に圧力をかけ、米政府や国際メディアの支援を得て、政府の譲歩を勝ち取ることや、揺さぶって政府と軍部の間に亀裂を生じさせるのを狙っている。

 ミランダ州グアイカイプーロ市ロス・テケスでは14日、店舗20軒と市の文化広報用バスが反政府破壊活動集団に襲撃され、破壊された。バスは放火され全焼した。F・ガルセース市長は、州警察は暴挙を取り締まらず放置していたと糾弾した。同州はMUD幹部のエンリケ・カプリーレス知事の権力基盤。

 マイアミの西語紙ヌエボ・エラルド紙は14日、マドゥーロ大統領は最近、今年末の州知事・州会議員選挙実施と引き換えに反政府言動を抑制するようMUD穏健派に持ちかけた、と報じた。大統領は、来年末の大統領選挙まで20カ月間の「平和共存」についても話し合った、という。情報源は匿名。記事の真偽は不明。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相は14日、故ネルソン・マンデーラ元南ア大統領の孫、マンドゥラ・マンデーラからマドゥーロ大統領宛てに連帯のビデオメンサヘ(メッセージ) をもらったとして、謝意を表明した。

 ベネスエラ外交界の重鎮、ロイ・チャデルトン前OEA(米州諸国機構)大使は13日、国営テレビVTVで、「ベネスエラはOEA無しでも生きられる。クーバがそうしてきたように。だが私はOEAに留まり、内側から闘い続けるのが望ましいとの立場だ」と述べた。これは政府部内にある「OEA脱退論」を牽制したもの。

 チャデルトンはまた、「米軍のシリア爆撃はベネスエラへの警告でもあろう。米支配層はベネスエラの石油に関心を持っている。我々は注意深く慎重に事を運ぶべきだ」と指摘した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は13日、「ベネスエラでの暴動事件の責任者はルイス・アルマグロ(OEA事務総長)だ」と非難した。そのアルマグロは同日マイアミで、「OEAは加盟国の民主問題では中立であるわけにはいかない」と述べた。

  ドナルド・トランプ米大統領は14日、フロリダ州の別荘で、コロンビアのアルバロ・ウリーベ前大統領およびアンデレス・パストゥラーナ元大統領と、ベネスエラ問題をめぐって話し合った。

 

2017年4月13日木曜日

 東カリブ諸国首脳会議にマドゥーロ・ベネズエラ大統領が出席、連帯への謝意を表明。本国では最近の一連の街頭暴力事件で計5人が死亡。政府は「破壊活動分子による撹乱」を糾弾。トランプ米大統領は月末ワシントンでアルゼンチン大統領と会談すると発表

 東カリブ諸国機構(OECS)の第64回首脳会議が4月12日、セントヴィンセント&グラナディーン(SVG)の首都キングズタウンで開かれた。招待され出席したベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は、加盟諸国・地域から寄せられた連帯への謝意を表した。

 これに対し、セントクリストファー&ネヴィス(SCN)のティモシー・ハリス首相は、ベネスエラによるOECS諸国への援助に謝意を表明した。会議に先立ち、マドゥーロ大統領はSVGのラルフ・ゴンサルヴェス首相の案内で、ベネスエラの援助で完成した同国東島新空港を視察した。

 OECSは1981年設立、セントルシーアの首都カストリーズに本部がある。カリコム(カリブ共同体・共同市場)と連携し、地域統合・開発を目指す。SVG、SCN、アンティグア&バーブーダ、ドミニカ、グレナダ、セントルシーアの英連邦6カ国と英領モンセラトが加盟。協賛島として英領アンギラ、英領ヴァージン諸島。

 マドゥーロ大統領は12日帰国、カラカスで、11日に卵を投げつけられた事件について、「反政府分子による待ち伏せ攻撃だった。カラカスなどで破壊活動分子が逮捕されている」と述べた。

 ララ州都バルキシメトでは11日の保守・右翼野党連合MUDによる反政府行動のさなか、12人が銃弾を受けて負傷、うち3人が12日までに死亡した。これで今回の一連の反政府行動での死者は計5人となった。

 ララ州のヘンリ・ファルコーン知事は、極右武装勢力が群衆の中に紛れ込んで攻撃している、と非難している。既に約50人が逮捕されている。

 カラカス市内には地下鉄5路線があるが13日、5路線にまたがる計28駅が閉鎖された。地下鉄と連携する路線バスのメトロブスとブスカラカスは終日休業した。これはMUD指揮下の反政府勢力が同日、動員をかけていたため。

 政府側は18、19両日、カラカスで大動員をかける。18日は、故ウーゴ・チャベス前大統領が2010年に民兵隊(MNB)を創設した記念日で、民兵部隊が行進する。その200年前の1810年4月19日は、ベネスエラ政界がスペインに対し、独立闘争を開始した日。いずれもチャベス派政権にとって重要な記念日だ。

 反政府勢力も19日に大動員をかける予定。今は聖週間だが、首都大聖堂などでのミサのさなかに両派の信者らが罵り合い、にらみ合う不穏な空気となっている。

 一方、ドナルド・トランプ米大統領は11日、マルリシオ・マクリ亜国大統領を27日ワシントンに招き、ベネスエラ情勢を含め話し合う、と明らかにした。米軍がシリアを攻撃し、北朝鮮近海に空母艦隊を急派しつつある時だけに、ベネスエラや支援国は、この米亜首脳会談を警戒している。
  
  

2017年4月12日水曜日

  ブラジルのルーラ元大統領が2018年大統領選挙出馬の意思を表明。検察は現職閣僚、上下両院議員ら76人を収賄容疑で捜査へ▼ベネズエラは反チャベス未遂クーデター15周年迎える。マドゥーロ大統領は群衆に卵投げられる

 ブラジルのルーラ元大統領(任期2003年元日~10年大晦日)は4月11日、ラジオインタビューで、「私は労働者党(PT)に求められれば、2018年の大統領選挙に出馬する用意がある」と述べた。出馬意志をこれほど明確にしたのは初めて。

 ルーラは3年前から収賄容疑など5件で起訴され、法廷闘争中。10日には建設最大手オデブレヒト社のマルセロ・オデブレヒト前社長が、「ルーラ大統領に1300万レアル(約415万米ドル)を贈賄した」と証言している。

 これについてルーラは、「虚偽発言がメディアに漏らされるのが問題だ」と前置きし、「当局は私の罪状に関する証拠を提示していない。私は刑務所に入ることなど全く考えたことがない」と反論した。

 さらに、「政敵らは過去3年間、私を叩いてきたが、叩く度に私の支持率が上がるため、神経質になっている。人民大衆は私の
政権期に郷愁を抱いているようだ」と、自信を示した。

 ルーラが裁判で有罪確定となれば、公職から追放されるため、来年の出馬も不可能となる。ルーラは、「彼らは私を挑発してきた。私は挑発される度に一層出馬したくなる」と語った。

 一方、最高裁のエジソン・ファシン判事は5日、検察庁の要請に応じて、収賄事件に絡む現職の閣僚8人、上議24人、下議39人、州知事3人ら計76人の捜査を許可した。

◎ベネスエラがクーデター15周年迎える

 ベネスエラは4月11日、2002年のこの日起きたウーゴ・チャベス大統領(当時)打倒のクーデターの15周年を迎えた。きっかけとなったカラカス中心部ジャグーノ橋一帯には、政府支持派数万人が集まり、政府支持を表明した。

 15年前、この橋の上と橋の下には、反政府勢力と政府支持勢力が対峙していた。反政府派が雇ったエル・サルバドール人の狙撃手らが近くの建物などから銃撃、19人が死亡した。

 クーデターを準備していた経団連と軍部は、この事件の責任をチャベスに被せ、チャベスを拘禁、カリブ海のベネスエラ領の小島に幽閉した。だが軍部内のチャベス支持派が蜂起、チャベスを救い、カラカスの大統領政庁に送り届けた。

 チャベスは、こうして奇蹟的に復権し、クーデター派は一気に潰された。この陰謀の背後にブッシュ米政権がいたことから、チャベスの反米施政が以後、鮮明になる。エンリケ・カプリーレス、レオポルド・ロペスら今日のMUD(保守・右翼野党連合)の中堅政治家は、クーデターに加担し逮捕されたが、チャベスに恩赦された。

 この日、リカルド・モリーナ運輸相は、4月に入ってから10日まで5日に亘って展開されたMUDによる反政府行動で、地下鉄を含む公共施設に総額200万ドルの被害が出た、と明らかにした。MUDによる抗議行進参加者の大勢は平和裡に行動したが、大学生ら若者の別働隊が投石、バリケード設置、最高裁を含む公共施設破壊などで大暴れした。

 国家警察と国家警備隊は放水、催涙ガス弾発射、交通遮断などで取り締まった。一連の事件のさなかに若者2人が死亡した。この街頭暴動事件は、2014年2月に始まり3カ月間続いた「グアリンバ」(街頭暴動事件)に酷似している。逮捕者が数十人出ている。負傷者は200人を超えている。

 一方、ニコラース・マドゥーロ大統領は11日、東南部のボリーバル州グアヤナ市郊外サンフェリックスで、「サンフェリックスの戦い」200周年を記念する軍事式典に出席した。この戦いで独立軍はスペイン植民地軍を破り、その後、勝ち戦を続け、独立に漕ぎつけることになる。

 式典終了後、マドゥーロ大統領は軍用車で大群衆の中を移動していたところ、1~2ダースの鶏卵を投げつけられた。うち1個が大統領の頭部に命中した可能性がある。この事件に関与した青少年5人が逮捕された。

 反政府派は、聖週間さなかの13日も、その後の19日にも抗議行動を予定している。「マドゥーロ打倒」の世論を盛り上げ、軍部に決起させるのがMUDの狙いだ。米政府や保守・右翼の外国メディアはMUDを支援している。
 

2017年4月11日火曜日

 マドゥーロ・ベネズエラ大統領が「野党勢力によるクーデター行動に直面している」とALBA会合で糾弾。同外相会議はベネズエラ、ニカラグア、カリブへの連帯宣言を採択▼チェ・ゲバラ部隊最初のキューバ人ゲリラの死から半世紀

 LAC(ラ米・カリブ)左翼・進歩主義諸国が構成する「米州ボリバリアーナ同盟」の第15回外相会議が4月10日ハバナで開かれた。今会議は、ALBA主導国ベネスエラへの連帯、LAC「平和地域」化実現への方策が主な議題だった。

 議長のブルーノ・ロドリゲス玖外相は、ベネスエラ攻撃の中心にいる米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)を「常軌を逸している」と批判した。エクアドールのギヨーム・ロング外相は2日の同国大統領選挙決選で、「市民革命」を10年間推進してきたコレア政権の後継候補レニーン・モレーノが当選したことを報告した。

 ニカラグアのシッダルタ・マリーン国際問題担当大統領顧問は、米共和党極右のクーバ系議員イレアナ・ロスレティネンらによる米議会への「ニカラグア投資条件法」(通称「ニカ法」)案再提出の動きを糾弾した。法案は、「ニカラグア選挙の公明正大な実施」、「人権尊重」などが保障されなければ投資を制限する、という内容。昨年9月、同議員らが提出、下院は通過したが、上院で否決されていた。

 外相会議では4種類の文書が採択された。「ニカラグア連帯宣言」は、ニカ法案を「経済封鎖法案」と捉え、再提出しようとしている議員たちを糾弾した。「カリブ連帯宣言」は、カリブ地域の統合と発展を支援。最貧国ハイチに連帯。欧州連合(EU)によるカリブ共同体(カリコム)への対応を批判した。

 エクアドール関係文書は、「市民革命」10年の成果とモレーノ当選を讃えた。「ベネスエラ支援宣言」も採択された。

 閉会式は会議殿堂で開かれ、ラウール・カストロ玖国家評議会議長、ニコラース・マドゥーロVEN大統領も出席した。クーバ国歌で始まり、終わって首脳らが着席しようとすると、会場に居たベネスエラ人留学生らが同国国歌を歌い出し、合唱となって拡がった。ベネスエラへの連帯の感動的な場面だった。

 ラウール議長に代わって演説した玖大学生連盟(FEU)のジェニファー・ベーヨ議長は、べネスエラをはじめとするラ米進歩主義政権を攻撃しているOEAを「米国の植民地省」と扱き下ろし、「クーバは絶対にOEAに復帰しない」と強調した。

 マドゥーロ大統領も演説、「ALBAは<奇蹟作戦>でLAC住民400万人の視力を回復させた」と讃えた。次いでOEA批判を開始、「創設以来69年のOEA史は、痛み、死、侵略者の血で彩られている。帝国主義者の利益へ我々ラ米諸国が従属した屈辱の歴史だった。LACの全合法政権への侮辱の歴史だった」と述べた。

 さらに、アルマグロOEA総長を厳しく批判、「ベネスエラは、OEAと米国に支援され、帝国主義者の利益に供する野党勢力によるゴルペ・デ・エスタード(クーデター)の行動に直面している」と指摘した。

 べネスエラの首都カラカスでは10日も、保守・右翼野党連合MUDの反政府行進があった。その若者らの別働隊は投石や「器物損壊」行動を展開、治安部隊が催涙ガスと放水で鎮圧した。18人が逮捕され、200人が負傷した。

 この野党行動は4月になってから5回目。マドゥーロ大統領が指摘するように、反政府勢力は街頭での騒乱状態を重ね、これを政権打倒の起爆剤とし、軍部に蜂起を促す戦略をとっている。

▼ラ米短信   ◎ボリビアでゲバラ部隊最初の玖人ゲリラが死んでから半世紀

 1967年4月10日、ボリビアでゲリラ戦を展開していたチェ・ゲバラのゲリラ部隊の一員ヘスース・スアレス=ガヨル(30)が激流に呑まれて死亡してから50年が経った。ゲバラ部隊で最初に死んだ玖人ゲリラだった。この日、クーバでは追悼行事が催された。

 スアレスは、スペイン・アストゥリアス州からの移民の子孫。ハバナ大学生だったころ、フィデル・カストロの「7月26日革命運動」に参加、都市部で反軍政の破壊活動に従事した。

 追及されてメヒコに亡命。革命戦争中の58年、玖島西部のピナール・デル・リオ州に潜入する。ゲバラの部隊に入って闘い、革命勝利を迎えた。革命後、ゲバラ工業相の下で、砂糖産業担当副工業相に就任。だがゲバラに従って66年12月19日、ボリビアに赴いた。 

2017年4月10日月曜日

 ベネズエラ首都カラカスで暴動状態が断続的に続く。マドゥーロ政権は政敵カプリーレス知事に公職追放処分科す。ハバナでは10日ALBA外相会議開催、米政府や米州諸国機構(OEA)の「対ベネズエラ圧力」への対応策練る

 ベネスエラの首都カラカスが4月初めから大荒れに荒れている。3月末、最高裁・憲法法廷が国会権限を代行する決定を下し、後に取り下げた一件をめぐり、国会で圧倒的多数派の保守・右翼野党連合MUD(ムドゥ)は4波の大規模な反政府抗議行進を展開。その若者たちの別働隊が激しい投石を治安部隊に浴びせ、公共施設を破壊、騒乱状態が続いた。

 その間、7日には会計検査院がミランダ州のエンリケ・カプリーレス知事を「公職追放15年」に処した。同知事が、「州予算案を州議会に提出せず、許可なくポーランド、英国両大使館と国際協力協定を結び、企業と違法契約を結んだ」のが理由とされている。

 カプリレースは過去2度、MUDの統一候補として大統領選挙に出馬。故ウーゴ・チャベス前大統領と、ニコラース・マドゥーロ現大統領に敗れた。来年末には大統領選挙があり、知名度の高いカプリーレスはMUDの有力候補の一人。

 公職追放は、知事任期が切れた日から15年続く。次期知事選がいつ実施されるか未定だが、その選挙への出馬はできず、選ばれた新知事が就任した時点で失職、公職追放となるもよう。8日にはカプリーレスの事務所が不審火に遭い、科学警察が捜査を開始した。

 この公職追放措置についてメヒコ、亜国、ブラジル、コロンビアの4カ国政府が直ちに声明を発表、ベネスエラ政府を批判した。これを受けて9日、デルシー・ロドリゲスVEN外相は激しく反発。「コロンビアは自国の現状を見よ。人権が蹂躙されており、労組・農民指導者らが殺されている」と逆襲した。

 メヒコに対しては、「ベネスエラへの内政干渉という不道徳な行為をする代わりに、自国の現実を見よ。何が起きているか、我々は知っている」。ブラジルには、「5400万人の有権者が選んだ大統領が昨年、クーデターで排除された。そうして生まれた非合法政府がベネスエラに民主について講義しようとしている」と皮肉った。

 アルヘンティーナのマクリ政権に対しては、「ひどく腐敗している上に、亜国人民の社会経済的権利に反する犯罪的な新自由主義政策を導入している。ベネスエラから鼻をひっ込めろと言いたい。我が国が聴くべきことなど何もない」と厳しかった。

 デルシー外相はその上で、「ここベネスエラ外務省から糾弾する。あなた方は米政府の利益と命令を満たすためにベネスエラに干渉している」と、はねつけた。

 カラカス首都圏を構成する5区の一つ、エル・アティージョ区のダビー・スモランスキ区長は9日、「マドゥーロ政権はシリアのように化学兵器を使い始めた」と、恐るべき虚偽情報をtwtで流した。大統領は、警察に同区長の捜査を命じた。

 マドゥーロ大統領は9日、「私は近く地方選挙(州・市)を公示するつもりだが心配だ。なぜならMUDがこてんぱんにやられることになるからだ」と述べ、野党連合を揶揄した。

 同大統領、デルシー外相は9日、ハバナに飛んだ。同市で10日開かれる第15回ALBA(米州ボリバリアーナ同盟)外相会議に出席するためだ。この会議は、米州諸国機構(OEA)によるベネスエラへの「米州民主憲章」適用問題、ラ米・カリブを「平和地域」にする方策策定などを話し合う。

 デルシーはハバナで、マイアミの米南方軍司令部がベネスエラへの干渉発言をしていることについて、「我々は南方軍の脅迫には屈しない」と表明した。

 会議には、ALBAのダビー・チョケウアンカ事務局長(前ボリビア外相)、クーバ、ボリビア、エクアドール、ニカラグアなど加盟10カ国の外相もしくは高官が出席。オブザーバーのエル・サルバドール外相も参加する。2日の赤道国大統領選挙決選で、穏健左翼のレニーン・モレーノが保守・右翼の財界候補を破ったことから、ALBAの士気は高まっている。

 一方、MUDは、カラカスで10日新たに大規模な反政府行動を実施する準備中。欧州連合(EU)は10日、「ベネスエラ政府がカプリーレスを公職追放処分にしても、ベネスエラの緊張状態は収まらない」と表明した。
 

2017年4月8日土曜日

 ベネズエラ大統領が米軍のシリア爆撃を厳しく非難。キューバ政府も「重大な違反」と糾弾。ボリビアは安保理で会合開催を主唱。ウルグアイは「戦争犯罪・人道危機」に際しての国連介入を阻む安保理常任理事国の拒否権行使を批判。同国含むラ米8カ国が「シリアの化学兵器使用」を糾弾

 シリア軍の「化学兵器使用」と、これに対応した米軍のシリア爆撃をめぐり、ラ米諸国も反応している。ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は4月7日、米軍の爆撃について、「シリアの主権と尊厳への攻撃であり、過激な戦争主義を押し付けるものだ」と糾弾した。

 さらに、「ベネスエラは戦争を前にして沈黙しない。戦争、爆撃、流血はもうたくさんだ。世界は平和と融和を望んでいる」と述べた。同国外務省は声明を発表、「シリア主権の侵害であり、国連憲章違反」と、米国を非難した。マドゥーロはまた、ベネスエラへの介入を求めてワシントン詣でしている反政府勢力を「売国奴」と扱き下ろした。

  クーバ外務省も7日声明を発表した。「米軍のシリア爆撃は国連の枠外で為された不法行為であり、国連憲章と国際法の重大な違反にして、主権国家に対する蹂躙だ」と厳しく指摘。「シリアと中東地域における紛争を激化させ、交渉による可決に資さない」と批判した。

 ロヘリオ・シエラ玖副外相は声明発表に際し、「化学兵器監視機関による公平かつ客観的で透明性があり非政治的な査察がなされないままの米軍のシリア攻撃を断固糾弾する」と述べた。また、シリア軍の攻撃による子供含む市民多数の死に哀悼の意を表した。

 国連安保理非常任理事国ボリビアのサチャ・ジョレンティ大使は7日、安保理に米軍による一方的シリア爆撃問題に関し理事会を開くよう要請。また、「人権演説は米国の関心を呼ばない。彼らは組織的に人権を蹂躙している」と非難した。

 同大使は、その後の記者会見で、「国連は、この種の重大行為について沈黙すれば共犯者になる」と警告した。さらに、「ボリビアは小国で、軍隊らしい軍隊を持たないが、原則には忠実であり、国連憲章原則を力の限り守る」と強調した。  

 一方、ウルグアイ外務省は7日声明を発表、シリア軍の「化学兵器使用は国際人道規約と市民の人権を損ねる野蛮な行為であり、断固糾弾する」と強調するとともに、「全当事者に戦火拡大を押しとどめるべく努めるよう」促した。

 声明は続けて、「国連安保理常任理事国は、戦争犯罪や人道的危機に際しては拒否権を行使しないのが妥当だ」として、国連の介入を阻む拒否権行使を批判した。

 ウルグアイの他、アルヘンティーナ、ブラジル、パラグアイ、チレ、ペルー、コロンビア、メヒコのラ米7カ国が「シリアの化学兵器使用」を非難している。これは南部共同市場(メルコスール)と太平洋同盟(AP)の計8加盟国が連携して意志表明したものだ。

 アルゼンチンで全国24時間ゼネスト成功。マクリ政権の新自由主義路線に反対。首都ブエノスアイレスでは世界経済フォーラム(WEF)ラ米版開会。労働者庶民と富裕経営者層の対比鮮やか

 アルヘンティ-ナで4月6日、マウリシオ・マクリ政権に反対する初の24時間全国ゼネストが実施された。「亜国労働者センター」(CTA)と「労働総同盟」(CGT)の2大労連が組織、「スト参加率は90%」と労連側は評価した。

 2015年12月発足したマクリ保守・右翼政権は、新自由主義による緊縮財政政策をとり、労働者解雇、停職、賃下げなどによるインフレ抑制に力を入れている。12年続いた、労働者重視のペロン派左翼政権が敷いた電気・ガス・電話・自動車道・公共玖通機関などの無料サービスを有料化するなどの対策を講じてきた。

 だが昨16年、インフレは年率40%。今年の目標は17%だが、既に28%に及ぶ兆候が表れている。労働者の購買力は減り、不満が日ごとに高まっている。去年の失業率は8・5%、25万人が職を失った。

 特に教員組合は賃上げを要求し続けてきたが、政府は無視。このほど法廷は、政府に回答するよう命じた。教員組合の闘争が今回のゼネストの引き金の一つとなった。

 交通機関、タクシー、航空、学校、銀行、商店、工場、ごみ収集、病院(最小限対応)などがストに応じ、首都ブエノスアイレスは閑散となった。若者や左翼はあちこちで自動車道を遮断した。

 これに対し政府は憲兵隊や機動隊を大量に投入、バリケードを除去、ピケラインを崩した。催涙ガスが発射され、数人が逮捕されたり負傷したりした。マクリ政権は昨年2月、法廷命令なしに道路封鎖やピケットを解除できる法令を定め、これを今回発動した。

 ストに参加した亜国労働党(POA)のホルヘ・アルタミーラ党首は、「インフレ抑制策と公定歩合引き上げで景気が後退した。インフレはかえって昂進している」と指摘した。

 一方、マクリ大統領はこの日、首都で開催中の「世界経済フォーラム」(WEF)ラ米版で演説。パラグアイのオラシオ・カルテス大統領を含むラ米政財界人1100人が参加している。

 労連は「ゼネストに参加していない全国で唯一の場はミニWEF会場だ」と皮肉った。外国からのフォーラム参加者は、遭遇したゼネストに亜国が直面する問題を垣間見た。

 それでもマクリの支持率は40~50%台。1日には首都でマクリ支持デモが展開された。

2017年4月7日金曜日

 アルベルト・フジモリ元ペルー大統領による「アウトゴルペ(自作自演クーデター)」から25年。娘ケイコ世代は政変を讃えず、民主制度を重視▼米法廷がメキシコ麻薬組織「ベルトゥラン=レイバ」首領に終身刑と巨額の罰金言い渡す

 ペルーは4月5日、1992年のこの日フジモリ政権が起こした「お手盛りクーデター」(アウトゴルペ)25周年を迎えた。当時のアルベルト・フジモリ大統領は四半世紀前、「非常事態・国家再建政権」樹立を宣言、「真の民主を創る」と強調。国会を閉鎖、司法を再編、マスメディアを規制した。首都リマには戦車部隊が出動、兵士が要所を固めた。

 その後間もなくして選挙を実施、制憲議会を開設。新憲法草案を策定し、国民投票を経て93年に新憲法を公布した。

 25周年のこの日、フジモリは、人道犯罪(殺人)命令罪で禁錮25年の実刑に服している特別の収監場からメンサヘ(メッセージ)を7回発信。「私は現代民主の建築家であり、あの日採った手段には意味があった。みなが今日尊重している現行憲法をつくったのは私だ。4月5日は民主を圧殺したのではなく、救ったのだ。国民の80%が支持した」と述べた。

 93年憲法は、国会を2院制から1院制に変え、大統領の連続再選を1回だけ可能にした。自ら指揮した政変後、大権を握ったフジモリは、自派の国会議員ともめったに会わず、報道を規制。国家情報局の諜報報告を基に施政、この関係で情報局を握っていたブラディミロ・モンテシーノスに頼り切った。「密室政治」が罷り通り、「国家テロリスム」による殺傷事件、逮捕・拷問事件が続発した。

 90年大統領選挙決選で作家マリオ・バルガス=ジョサを破って政権に就いた数学者フジモリだったが、白人富裕層、伝統的保守政界、海軍などによる政変の陰謀に直面。安定政権を築くため、陸軍や警察と組んで「自作自演の政変」を打ったのだった。

 だが95年に再選を果たしたフジモリは、1回だけの連続再選を拡大解釈し、2000年選挙に強引に出馬、3選を勝ち得た。これが墓穴を掘った。孤立し、アジア外遊の帰途、帰国せず、父母の祖国・日本に亡命した。

 しかし政権に返り咲きたい野心から、チレ経由での帰国を決意。2005年11月チレで逮捕され、後に身柄をペルーに引き渡された。裁判を経て服役している。

 娘ケイコ・フジモリは2011、16両年の大統領選挙に出馬、いずれも決選で惜敗した。対立候補が父フジモリのクーデターを攻撃、これで勝利を阻まれた。現在、国会ではケイコの政党「人民勢力」(FP)が圧倒的多数を握る。だがPPクリンスキ大統領の新自由主義政権に是々非々主義で対応している。

 フジモリの熱烈な支持者であるマルタ・チャベス元国会議員(現FP顧問)は、25年前の政変について「当時、国土の40%はゲリラの影響下にあった。国を内戦から救ったのだ。<4・5>を破壊活動へのクーデターと捉えれば、フジモリは国家に貢献したことになる」と説いた。

 だが世代交代も進み、ケイコを含めFPの若手・中堅幹部らは、国会を閉鎖した政変を肯定することはない。「アルベルティスタ」(フジモリ元大統領派)は、マルタら少数派になっている。

▼ラ米短信    ◎メヒコ人麻薬組織元首領に米法廷が終身刑言い渡す

 ワシントン地裁は4月5日、メヒコ北西部に根を張る麻薬組織「ベルトゥラン=レイバ」(BL)の元首領アルフレド・ベルトゥラン=レイバ(46)に終身刑と罰金5億2900万ドルを言い渡した。

 直接的な罪状は、2000~12年、米墨国境越しにコカイン29・7トンを米側に密輸したこと。米検察は求刑で罰金を100億ドルとしていた。

 アルフレドは08年1月逮捕、14年11月、身柄を米国に引渡され、16年2月有罪となっていた。BLは90年代に麻薬組織シナロアマフィアと連携したが今世紀になってから対立、シナロアの裏切りと見られる密告でアルフレドは逮捕された。兄アルトゥーロも09年12月、国軍に包囲され射殺された。

2017年4月6日木曜日

 ブラジル選挙最高裁判所がルセーフ前大統領とテメル現大統領の「不正選挙資金」事件の判決公判日程を延期。ルーラ元大統領は大統領選挙の早期実施を訴える▼ベネズエラ大統領が「来年、選挙を実施」と発言

 ブラジル選挙最高裁判所(TSE)は4月4日、ヂウマ・ルセーフ前大統領とミシェル・テメル現大統領が2014年に正副大統領として当選した選挙時、不正資金を用いたとされる容疑の裁判の判決公判日程開始を今月下旬まで延期した。この日開始の予定だったが、ヂウマ被告側弁護団が証人証言日程を延期するよう求め、これを認めたため。

 同選挙で敗れたPSDB(伯社民党)は16年12月、ヂウマ-テメル陣営は、建設会社最大手のオデブレヒト社から3400万ドルをもらい、それを選挙資金に組みん込んだとして、選挙無効を求めて提訴した。

 PSDBが、選挙で勝てない労働者党(PT)を叩き潰す狙いで提訴したのは明らか。ヂウマ(PT所属)と、次期大統領選挙での最有力候補と目されるルーラ元大統領(PT)=不正蓄財などで公判中=を有罪で「参政権8年停止」に追い込めば、選挙で勝つ公算が膨らむからだ。

 ヂウマは、訴訟の基となったオデブレヒト前社長マルセロ・オデブレヒト(服役中)の証言について、「(資金を提供したという)マルセロの証言は偽りだ。おそらく拷問されて言わされたのだろう」と語っている。ルーラは、「一時も早く(国会でなく)直接選挙で大統領を選ぶべきだ」と主張している。

 テメルはPMDB(伯民主運動党)所属で、昨年、PTと袂を分かち、PSDBと結託して強引にヂウマ大統領を国会での弾劾裁判にかけ失職させ、自分が後釜に座った。

 裁判で有罪になれば、ヂウマは8年間公職に就けなくなり、テメルは大統領の座を追われることになる。そうなれば国会が下院議長を暫定大統領として、新大統領を選ぶことになる。その新大統領の任期が半年を上回る場合は、大統領選挙実施に道が開ける。

 かつての正副大統領は今は敵同士で、共に被告になっている。両被告の弁護団は、TSEが却下の判決を下すのを望んでいる。ヂウマは既に弾劾で失職、テメルは支持率が10%しかないが2018年末までの残り任期を全うしたいからだ。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ大統領が「選挙実施」を口にする

 ニコラース・マドゥーロ大統領は4月4日、訪問先のアプレ州で、「来年は大統領選挙であろうと地方選挙であろうと選挙がある。だから闘おう」と述べた。

 大統領選挙は18年10~12月に実施される見通し。州知事・州会議員選挙は16年末までに実施されねばならなかったが延期
されてきており、今年半ば実施という観測も出ていた。

 だが、この日の大統領発言は、大統領選挙と州選挙を来年同時に実施する可能性をも示唆している、と受け止められている。
 


  

 

2017年4月5日水曜日

 チリ大統領選挙(11月)に女性放送記者ベアトゥリス・サンチェスが出馬表明。左翼「拡大戦線」でまず指名を争う。左右2大勢力の谷間で旋風を巻き起こせるか

 チレで今年11月29日に第1回投票が実施される大統領選挙に4月3日、著名な女性放送記者が出馬への名乗りを挙げた。ラジオ放送「ラ・クラベ」で3月まで政治記者をしていたベアトゥリス・サンチェス(46)だ。子供3人の母親だ。

 サンチェスは、新興の左翼野党連合「拡大戦線」(FA)に所属する「民主革命党」(RD)と「自治主義者運動」(MA)から3月21日、出馬を要請され受諾、記者を辞め、4月28日のFA候補指名の予備選に出馬することを決めた。社会学者アルベルト・マジョールと指名を争う。

 サンチェスは3日、首都サンティアゴ中心街のイタリア広場で出馬を宣言。最初の演説で、「私は政治は素人だが、皆さんも素人だ。素人同士が水平に繋がり、全員で物事を決める政治をしよう」、「女性が女性の問題を決め、先住民族が自分たちの未来を決め、ピノチェー独裁の負の遺産を自由に話し合える社会、異なるチレを創る」と訴えた。

 各会派の「候補者候補」は既にほぼ出そろっている。中道・中道左翼・左翼の政権党連合「新多数派」はアレハンドロ・ギジエル(ジャーナリスト)、リカルド・ラゴス元大統領、カロリーナ・ゴイク(キリスト教民主党首)。

 ピノチェー独裁の流れを汲む「独立民主連合」(UDI)と「国民改新党」(RN)の保守・右翼野党連合は、セバスティアン・ピニェーラ前大統領、マヌエル・オサンドーン上院議員、フェリーペ・カストが指名を争う。

 現時点での支持率は、ピニェーラ24%、ギジエル16%、ラゴスおよびベアトゥリス・サンチェス4%、オサンドーン3%、ゴイク2%、その他各1%。政権党連合と野党連合の谷間にある第3勢力FAは、組織と資金で最初から劣勢に立たされているが、サンチェスは知名度ではまずまずだ。

 サンチェスは1994年に放送記者となり、2014年に5局目の「ラ・クラベ」放送に移っていた。テレビ番組にもしばしば出演してきた。サンチェスが力をつければ、その分、政権党候補は票を食われることになる。

 政権党連合はギリエル、野党連合はピニェーラ、FAはサンチェスが指名を勝ち取る公算が大きい。サンチェスがダークホースになれるかどうかに関心が集まっている。
 
 FA(拡大戦線)には、前記両会派の他、人道党(PH)、「緑環境党」(PEV)、「平等党」(PI)、「自治左翼」(IA)、「絶対自由主義左翼」(IL)が参加している。社会党と共産党は「新多数派」に属している。

2017年4月4日火曜日

 エクアドルのレニーン・モレーノ次期大統領が貧困対策継続を強調。「ラ米は世界変革の前衛」などと各国首脳から祝電続く▼米州諸国機構(0EA)が反ベネズエラ決議を強引に採択▼メキシコ北部の調査報道紙が閉刊に追い込まれる

 エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ次期大統領は4月3日、キト中心街のカロンデレー宮(大統領政庁)のバルコニーにラファエル・コレア大統領、ホルヘ・グラス次期大統領と並び立ち、眼下の「独立広場」一帯を埋め尽くした大群衆から祝福を受けた。

 前日の大統領選挙決選は開票率99・46%でモレーノ51・17%、ギジェルモ・ラッソ48・83%だった。ラッソは「開票に不正があった」と主張、モレーノ当選を認めず、開票作業のやり直しを求めている。

 モレーノは、「私は全赤道国人の大統領になる。とりわけ貧者のための大統領になり、貧困問題解決政策を継続する。支持者を決して裏切らない」と述べ、大群衆に抱擁を送った。

 コレア大統領は10年間「市民革命」を掲げ、改革政策を続けてきた。この日の勝利集会でみな、「市民革命」の讃歌「新しい人民」を合唱した。

 赤外務省によると、3日までにベネスエラ、ボリビア、クーバ、ニカラグア、エル・サルバドール、亜国、ブラジル、パラグアイ、コロンビア、メヒコ、チレ、ペルーなどの元首ないし政府から祝電が届いている。米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長、クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル前亜国大統領からも祝賀の言葉が届いた。

 ラウール・カストロ玖国家評議会議長は、「市民革命の新しい過程が始まる。赤道国は<我らのアメリカ(ラ米・カリブ)>の統合と主権防衛に今後も貢献する」と祝電で述べた。

 ニコラース・マドゥーロVEN大統領は、「<大なる祖国(ラ米・カリブ)>の勝利だ」と祝福。同国外務省は声明で、「米国務省主導の政権奪取の画策が敗れた。ラ米進歩主義政権不安定化の企図はまたも敗れた」と強調した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は咽頭の手術を受けたハバナから祝電を送った。大統領代行のアルバロ・ガルシア副大統領はラパスで、「ラ米解放過程の新しい始まりだ。この勝利は右翼・保守勢力を黙らせた。ラ米は再び世界の革命過程の前衛になった」と論評した。

 米国務省は、勝利を期待していたラッソが敗北を認めていないことから、モレーノ勝利について言及を避けている。

▼ラ米短信   ◎OEA大使会議が変則的にベネスエラ批判決議を可決

 米州諸国機構(OEA)は4月3日ワシントンの本部で緊急大使会議を開き、強引に反ベネスエラ決議を採択した。決議は「ベネスエラには憲政中断状況がある。最高裁が制度的に国会に介入している」として、マドゥーロ政権に選挙実施日程策定と<政治囚>釈放を求めている。

 この日、輪番制議長国(4~6月)のボリビアは同副議長国ハイチとともに、開会目的の異常性を指摘し閉会を主張。これにベネスエラ、ニカラグアなどが同調した。だが米国、カナダ、亜伯両国など保守・右翼を中心に21カ国が開会に賛成、オンドゥーラスを臨時議長に仕立てて議事を進行させた。

 決議は、ベネスエラ国内対話優先を訴えるエル・サルバドール、ドミニカ共和国、ベリーズ、バハマが棄権。17カ国の賛成で可決された。

 マドゥーロVEN大統領は決議を受けてカラカスで、「OEAは反ベネスエラの異端尋問所と化した感がある。右翼諸国は米国の圧力を受けて域内諸国と我が国の断交を謀っているが、そうはいかない」と糾弾した。

▼ラ米短   ◎記者を殺されたメキシコの新聞が閉刊

 メヒコ北部チウアウア州フアレス市のタブロイド紙「ノルテ・デ・シウダー・フアレス」(北部フアレス市)は4月2日、第1面に「アディオス!」の大見出しを付け、この日限りで閉刊すると発表した。

 同紙は1981年、フアレス市で「エル・ウニベルサル」として創刊。90年に現在の紙名となった。小さな地方紙ながら、麻薬取引、麻薬組織と政財界の癒着、女性殺しなどの果敢な調査報道で有名になった。

 それだけに当局や麻薬組織からの圧力や脅迫も多く、今年3月23日には、麻薬取引を暴く報道で名を挙げていたミロスラバ・ブリーチ記者が殺害された。

 オスカル・カントゥー社主は3日、「社員の安全が保障されなくなって久しい。政争、腐敗、麻薬組織の暗躍などで危険な環境となっている。チウアウア市には社会の木鐸として調査報道に重きを置く新聞を発行する条件がなくなった。閉刊は抗議のしるしでもある」と述べた。今後は電子版でニュースや論評を流す。



 


 
 

2017年4月3日月曜日

★★★エクアドル大統領選挙決選で政権党候補レニーン・モレーノが当選。新自由主義路線の銀行家ギジェルモ・ラッソ候補を接戦で凌ぎ、「南米左翼の潮流」を辛くも守る▼マルビーナス(フォークランド)戦争35周年行事催さる

 エクアドール(赤道国)で4月2日実施された大統領選挙決選で、政権党「パイース同盟」(AP)候補レニーン・モレーノ元副大統領(64)が当選した。同国のアンデス通信をはじめ内外がメディアが一斉に報じた。

 国家選挙理事会(CNE=中央選管)が開票率95・56%段階で、モレーノ候補51・10%、対立候補ギジェルモ・ラッソ48・90%で、モレーノ当選と発表した。ラッソは銀行家で元経済相。「機会創出運動」(CREO)党首で、「行動活発化統合社会運動」(SUMA)と連合している。その後、開票率98%段階でモレーノ51・14%、ラッソ48・86%で、趨勢は変わらなかった。

  モレーノは当確を受けて、「市民革命は続く。だが作風が変わる。敬意を払い対決はしない」と述べた。

 現地時間1700の投票終了時に公表された出口調査結果は、A社とB社は52%対48%でモレーノ勝利。C社は53%対47%でラッソ勝利だった。今決選は赤道国史上最高の接戦で、出口調査結果以上の激戦だった。新政権は5月24日発足する。任期は4年。ラッソはC社の数字を頼りに、「開票の不正」があったと主張、票の数え直しを要求していた。

 モレーノは、ラファエル・コレア大統領が連続10年間続けてきた「市民革命」と名付けられた改革政策を継続する。これに対しラッソは、内外大企業優先の新自由主義経済路線の推進者。

 南米左翼が下降傾向にある中、エクアドールの決選は「南米左右両勢力の潮流の行方を懸けた戦い」と位置付けられていた。モレーノn勝利は、「南米左翼は辛くも踏ん張った」ことを意味する。

 決選直前の3月末、このブログでも詳述した通り、ベネスエラでは一時的に「国会閉鎖状況」となり、マドゥーロ政権は「憲政破壊」、「お手盛りクーデター」と厳しく批判された。

 ベネスエラ主導のラ米・カリブ左翼・進歩主義諸国の「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA)にコレア政権の赤道国が加盟していることから、選挙戦最終段階でラッソ候補は、「モレーノが勝てばベネスエラのようになる」と宣伝した。これがある程度奏功し、得票差が縮んだもよう。

 3月21日発表の支持率調査では、モレーノ52%、ラッソ48%だった。この時点で「支持候補未決定」(浮動票)は、有権者1243万人の16%で、これが勝敗を左右すると見られていた。だが決選の投票率は75%で、浮動票の動向はさほど影響しなかったと分析される。

 ラッソは、コレア現政権10年の施政を攻撃、「変化」を強調して支持を固めた。2月19日の第1回投票では、モレーノの39・36%に対し、28・09%で2位に着けたラッソは、第1回投票での落選候補たちの票を取り込んで20ポイントも支持票を増やした。

 当選条件は過半数得票者が居ない場合、得票率40%以上で、2位に10ポイント差をつけること。モレーノは40%にわずかに及ばず、決選に持ち込まれた。

 ラッソは追い上げた勢いとベネスエラ情勢の影響で勝利の可能性もあった。だが選挙戦終盤初期に、ラッソがパナマに所有する銀行の租税回避疑惑が報じられて痛撃となり、これが最後まで響いた。

 このため、ラッソは、それまで否定していた「無料の社会政策」実施などを公約に加えた。ところが社会政策重視は政権党の最重要政策であり、ラッソの唐突な追加公約は自身の独自性を弱める結果となった。

 モレーノは熱血漢のコレアと比べ穏健な改革者で、コレアの「急進主義」的作風とラッソの富裕層優先策の中間に位置し、選挙民に安心感を与えたと言えるかもしれない。事件に遭い車椅子生活を余儀なくされているモレーノは、身体障害者への理解が深く、この「人道的雰囲気」も有利に作用したはずだ。

 第1回投票と決選で、南米諸国連合(ウナスール)の選挙監視団代表を務めたホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領は「選挙は全く問題なく実施された」と評価した。

▼ラ米短信   ◎亜英マルビーナス戦争35周年

 ガルティエリ亜国軍事政権が1982年4月2日、同国東方の南大西洋にある英領マルビーナス(フォークランド)諸島奪回を狙って開始した戦争から35年経った。この日、亜国法で諸島が同国最南端のティエラ・デル・フエゴ州に属することから、州都ウスアイアで記念式典が催された。

 政府代表のロヘリオ・フリヘリオ内相は演説し、「主権を要求し続ける。主権回復のため賢明な道を探ろう」と、元従軍兵や、戦死者の遺族らに呼び掛けた。ロサーナ・ベルトネ州知事は、マルビーナス島民を「フエギーノス」(州民よ)と呼んだ。

 戦争は6月まで74日続き、サッチャー政権の英国が勝った。亜国兵649人、英国兵255人、島民3人が戦死した。

2017年4月2日日曜日

 パラグアイ上院議員25人が憲法の大統領再選禁止条項を違憲行為で修正。野党が抗議、警官隊に1人が射殺され30人が負傷、首都アスンシオンは混乱に陥る

 パラグアイで3月31日、国会上院の議員25人が不正に憲法条項を修正、怒った野党党員や市民ら約1000人が国会周辺など首都アスンシオンで抗議行動を展開した。国警機動隊が出動、1人が警官に散弾銃で射殺された。他に約30人が負傷、211人が逮捕された。

 事の起こりは28日、憲法の大統領再選禁止条項を修正して再選を狙いたいオラシオ・カルテス大統領の政権党コロラード党、これに同調する野党「グアスー戦線」(FG=拡大戦線)、および野党・真正急進自由党(PLRA)反主流派の上院議員計25人が、上院本会議場でなく上院内のFG会派室で、憲法修正案を<可決>したこと。上院定数は45。

 同25議員は31日、再びFG室で<本会議>を開き可決、下院に<送付>した。下院(定数80)は4月1日審議を開始する予定だったが、混乱が収まらないため、3日以降に延期した。下院は政権党が多数派のため通過は容易。

 エフライーン・アレーグレ党首らPLRA主流派を中心とする野党勢力は上院内外で25議員の違憲行動を糾弾、31日、抗議行動に出た。若者ら一部勢力は上院に放火、市内でも小競り合いが続いた。

 機動隊はPLRA本部に乱入した際、党青年部のロドリーゴ・キンターナ(25)に散弾銃を1回発射、キンターナは散弾9発を受けて死亡した。さらに約30人が重軽傷を負った。PLRAのエドゥガル・アコスタ下院議員は顔面に散弾を浴びせられ重傷。カルテス大統領は、死傷者が出たのを受けて、内相と国警長官を更迭した。

 上院議員25人が一方的に可決した憲法修正案は、「正副大統領は連続または非連続的に計2期まで就任できる」とし、「連続再選を目指す正副大統領は任期満了半年前に辞任せねばならない」というもの。

 パラグアイでは1954~89年、故アルフレド・ストロエスネル将軍が35年間の長期軍事独裁を敷いた。これを教訓とした政界は92年、憲法に大統領再選禁止条項を盛り込んだ。コルテスは2016年、再選禁止条項修正を試み、失敗している。

 上院では過半数に達しない政権党は、12年に「国会クーデター」と呼ばれる不当な弾劾裁判で大統領を解任されたフェルナンド・ルーゴ元司教の政党FGおよびPLRA反主流派に働き掛け、25人議員集団を結成した。

 ルーゴは、1989年の独裁体制終焉後、最初の非コロラード党政権を率い、穏健な社会改革で成果を挙げた。改革路線が定着するのを恐れたコロラード党は2012年6月、農民・警官殺害事件をでっちあげてルーゴを弾劾した。

 ルーゴは現在、上院議員だが、志半ばで解任されたため、やり残した改革をやりたいと、再選条項修正に回った。18年4月の大統領選挙で再選が可能になった場合の現時点での予想候補者支持率は、ルーゴ52%、カルテス12%で、ルーゴが優位。カルテスは敗れても、<ルーゴ次期政権>の次を狙うことが可能になる。

 この来年の総選挙では正副大統領の他、国会上下両院議員、17州知事・州会議員、南部共同市場(メルコスール)議会議員18人が選ばれる。

 今回、問題の25議員は、上院本会議を開けないことから、コルテス派の上院第2副議長を<上院議長>に就け、FG室で審議、憲法修正に必要な賛成票を従来の30から23人に変更し、憲法修正案を可決した。

 パラグアイ弁護士会は、大統領再選は憲法条項修正では不可能で、正式に改憲せねばならないと主張している。ラ米進歩主義世論は、米州諸国機構(OEA)がベネスエラ問題だけに集中し、パラグアイ上院での違憲の暴挙を取り上げないのはおかしいと非難している。

2017年4月1日土曜日

★ベネズエラ最高裁・憲法法廷による国会権限代行決定は、検事総長の「違憲判断」を受け覆さる。米州諸国機構(OEA)は3日ワシントンで緊急会合へ▼ボリビア大統領はOEA事務総長の恣意性を非難

 ベネスエラ国家防衛会議(CDN)は3月31日、最高裁の憲法法廷が28~29両日決定した国会権限代行に関し31日、検事総長が違憲だと異議を唱えた問題を協議した。その結果、国会権限を憲法法廷が代行する決定(事実上の国会閉鎖)は覆された。4月1日未明、発表された。

 CDNはまた、最高裁と検察庁が対立したことに鑑み、「憲法判断の権限は憲法法廷だけに属する」ことを確認した。会議は、国外勢力による内政干渉を断固排除することも確認した。大統領に与えられた「非常大権」も取り下げられた。

 さらにCDNは、南米諸国連合(ウナスール)によるベネスエラ政府と野党連合MUDの対話継続を確認、MUDに対話に応じるよう求めた。

 最高裁(憲法法廷)の国会権限代行決定は内外に強い衝撃を与え、「違憲」、「お手盛りクーデター」などと厳しい批判を浴びた。それがルイサ・オルテガ検事総長の異議申し立てによって一転、CDN開催となり、最高裁決定は元に戻された。

 オルテガ検事総長は従来、ニコラース・マドゥーロ大統領の支持者で、今回のような重大案件で異論を唱えることはなかった。それだけに意外性が強い。内外世論の強烈な非難を受けた大統領が検事総長を使って事態収拾に走ったのか、検事総長が法律家として信念を貫いたのか、謎が残る。

 一方、米州諸国機構(OEA、加盟34カ国)は、20カ国の要請で3日、ワシントンの本部で緊急大使会議を開き、ベネスエラ情勢を話し合う。ルイス・アルマグロOEA事務総長は、ベネスエラにOEAの「米州民主憲章」を適用し、同国のOEA加盟資格を停止させるのを狙っている。

 これについて、ハバナで咽頭の治療を受けているボリビアのエボ・モラレス大統領は1日、パラグアイ上院が31日、違憲と見られる強引な手法で大統領再選を可能にする改憲法案を可決したことに触れて、「アルマグロはなぜパラグアイ上院の動きを問題にしないのだ」と非難した。

 同大統領はまた、昨年8月末の「国会クーデター」と内外世論から見なされたD・ルセフ伯大統領弾劾や、昨今のトランプ米政権による対墨国境での壁建設事業についてアルマグロが問題にしなかったことも指摘。アルマグロにベネスエラを指弾する資格はないと糾弾した。




2017年3月31日金曜日

★★★ベネズエラ最高裁が国会権限を代行。N・マドゥーロ大統領に大権授与。内外で「違憲」、「お手盛りクーデター」の非難高まる。米州諸国機構(OEA)は「加盟資格停止」に動く▼ブラジル前下院議長に収賄などで禁錮刑

 ベネスエラ最高裁は3月29日、国会が行政府に対し妨害行為を繰り返してきたため、国会の権限を最高裁の憲法法廷が代行する、と決定した。国内反政府勢力と米州諸国の間で一斉に「アウトゴルペ」(自作自演のクーデター、お手盛りクーデター)と非難する声が上がっている。

 最高裁は28日には、「反ベネネスエラ」事項を討議する米州諸国機構(OEA)大使会議開催に賛成した国会議員を「反逆罪」の容疑ありとし、その不逮捕特権を剥奪した。同時にニコラース・マドゥーロ大統領に政治、軍事、経済、社会、刑事、民事上の大権を授与した。

 同大統領は、「制度、安寧、国民統合を守り、侵略される脅威や内政干渉を排除するため特権を与えられた」と述べた。

 最高裁は、国会が29日、国営石油会社PDVSAとロシア石油企業との合弁会社設立を否決したのを受けて、憲法法廷の国会機能代行を決めた。

 ペルーのPPクチンスキ大統領は30日、「ベネスエラの状況は受け入れられない」として、ベネスエラ駐在大使を無期限に召還した。1992年4月のアルベルト・フジモリ大統領による国会閉鎖と酷似すると受け止めており、OEA諸国にベネスエラの加盟資格を停止させるための「米州民主憲章」適用について根回しする、と表明した。

 PPK大統領は昨年の大統領選挙決選で、フジモリ元大統領の娘ケイコを超僅差で破り、政権に就いた。国会では圧倒的多数派をケイコ派政党に握られている。大統領には、今回のベネスエラの「国会機能剥奪」事件をフジモリ派牽制に使う戦略が窺える。

 チレのミチェル・バチェレー大統領も30日、事態把握と対応策をねるため、ベネスエラ駐在大使を召還した。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は30日、ペルー大統領の発言を内政干渉として糾弾した。

 OEAのルイス・アルマグロ事務総長は30日、「緊急大使会合を招集し、民主憲章適用について話し合う」と表明した。米国、メヒコ、グアテマラ、コスタ・リカ、パナマ、コロンビア、チレ、アルヘンティーナ、ブラジルの各政府も、ベネスエラ政府を非難する声明や談話を出している。

 故ウーゴ・チャベス大統領が1999年2月政権に就いてから2013年3月死去するまで14年間、後継のマドゥーロ現大統領が4年間の計18年のという長いチャベス派政権下で鬱積した矛盾が爆発、緊張が頂点に達した感がある。

 今後の政治状況は、政権に忠実なベネスエラ軍部が内外世論を受けてどう動くか、に大きく懸かっている。

▼ラべ短信   ◎ブラジル前下院議長に禁錮15年の実刑

 ブラジルの第1審法廷は3月30日、国会下院のエドゥアルド・クーニャ前議長を汚職、資金洗浄、外貨不正持出しの罪で禁錮15年4カ月の実刑判決を言い渡した。クーニャは昨年、議員資格を剥奪され、10月から拘禁されている。

 今回の汚職罪は、アフリカ・ベニンでの油田開発をめぐりブラジル国営石油ペトロブラスから150万ドルを収賄したことによる。だが、このほかにも巨額の収賄資金の存在が明らかにされている。

 クーニャは下院議長だった2014年12月、当時のヂウマ・ルセフ大統領がクーニャの汚職調査を当局に認めたことに逆恨みし、ルセフ大統領の弾劾に道を開いた。ルセフは昨年8月末、理不尽な理由で弾劾された。内外世論は、これを「国会クーデターと受け止めた。




2017年3月30日木曜日

  コスタ・リカで第16回中部アメリカ(メソアメリカ)機構首脳会議が開かれ、トランプ米政権と移民問題を中心に討議。「移民犯罪者視」を断固糾弾。

 中部アメリカ(メソアメリか)開発のための「トーストゥラ・グティエレス対話・協和機構」(MDCTG、10カ国加盟)の第16回首脳会議が3月29日「メソアメリカは統合する」を標語に、コスタ・リカ(CR)首都サンホセで開かれた。

 CR、メヒコ、グアテマラ、パナマ、コロンビアの5カ国大統領と、エル・サルバドール、オンドゥーラス、ニカラグア、ベリーズ、ドミニカ共和国(RD)の外相らが出席。議長のLGソリースCR大統領は、移民、女性の地位向上、気候変動、核軍縮、持続的開発を重要議題として列挙した。特にトランプ米政権登場後、米墨国境の壁建設、不法移民取締・国外退去が大問題になっており、移民問題に時間が多く割かれた。

 メヒコのEPN大統領は、対米対立時にメヒコに連帯した加盟諸国に感謝、「メヒコは米政権との新しい関係構築という試練に直面している。対話を通じて双方に意味ある合意に到達できると考える」と述べた。

 コロンビアのJMサントス大統領は、トランプ政権の化石燃料開発優先のための気候変動政策変更を批判。「最良の<壁>建設は、メソアメリカの開発だ」と強調した。対米移民の出身地域であるメソアメリカ(メヒコ南東部および中米)が発展すれば、移民が減るとの考えに立つ。

 会議は、37項目の「政治宣言」を採択した。「移民差別増大を懸念」、「人種主義、差別、外国人排斥、不寛容、移民犯罪者視に断固反対」、「移民出身国・通過国・目的国として移民発生の構造的原因を直視し、移民の人権に最大限配慮」などが盛り込まれたが、米政府やトランプの名前は書き込まれれなかった。次回首脳会議は19年オンドゥーラスで。

 MDCTGは、1991年にメヒコ・チアパス州都トゥーストラ・グティエレス(TG)で開催されたメヒコと中米5カ国の首脳会議に始まる。98年、MDCTGが生まれ、2001年、フォックス墨政権が「プエブラ・パナマ計画」(PPP)を策定、メソアメリカ全域の開発に制度的に着手した。

 これには、環境破壊や収奪を怖れる加盟諸国の先住民族や農民の反対が強い。94年元日にチアパス州で放棄した「サパティ
スタ民族解放軍」(EZLN)も反対してきた。

 開発事業としては、PPPが08年に移行した「メソアメリカ事業計画」(PM)、「官民同盟」(APP)などがある。PMの下で既に107事業が実施され、計31億ドルが投下された。
  

  米州諸国機構(OEA/OAS)が「ベネズエラ問題」で激論。だが「国内対話継続」で合意▼ニカラグアとイスラエルが7年ぶりに国交再開▼コスタ・リカで地域首脳会合開催 

 米州諸国機構(OEA)は3月28日、ワシントンの本部で大使会合を開き、ルイス・アルマグロ事務総長が先に提出したベネスエラ政情に関する報告書および、27日のデルシー・ロドリゲス同国外相の発言を受けて討議した。

 開会に先立ち、ベネスエラ、ニカラグア、ボリビア3国は、「米国益に利するアルマグロ総長の発議に基づく、ベネスエラ内政への干渉であるため会合は開くべきではない」と動議を出したが否決され、会合はベリーズを議長国として開かれた。27日までの18カ国に加えガイアナとベリーズが開会賛成に回った。

 20カ国の中核をなす「G15」の主導国メヒコは、「ベネスエラで民主体制が変更されたか否かを毎月検証すべきだ」と提案。「内政不干渉原則は、民主秩序変更や人権尊重欠如を覆い隠すために使われてはならない」と主張した。

 米国は、「OEA内に友邦グループを結成してベネスエラに派遣し、全当事者の意見を聴くべきだ」と提案。「メヒコ提案の検証実施のため特別デスクを置くべきだ」と述べた。カナダは、「ベネスエラには民主的価値が欠けている。OEAは民主復活に貢献すべきだ」と語った。

 これに対しエル・サルバドールは「アルマグロ報告はベネスエラの主権を侵すもの」、ニカラグアは「この会合自体が違法かつ不法だ」と、それぞれ非難した。ベネスエラのサムエル・モンカーダ大使は、「OEA原則の現行違反だ。反ベネスエラのことばかりが展開されており、徹底的に闘う」と反駁した。

 米国など反ベネスエラ派には、「<政治囚>釈放、選挙日程決定、国会決議尊重」の3点を盛り込んだ決議案の採択を求める意見もあったが、結局、断念。代わって、ベネスエラの政府と保守・右翼野党連合MUDとの対話継続を促す声明を採択した。これには加盟34カ国中、パラグアイを除く33カ国が賛成した。米州で唯一、社会主義クーバはOEAに加盟していない。

 デルシー外相は28日ワシントンで、「メヒコの態度は残念だ。我々ベネスエラはメヒコが国境の壁や移民排斥で困っていた時に連帯したのに」と述べた。また、「OEAは、米州の極右勢力がベネスエラを攻撃するための場となってしまった」と批判した。

 カラカスでは28日、政府と政権党・ベネスエラ統一社会党(PSUV)が動員をかけて「反帝国主義大行進」を実施。演説したタレク・エルアイサミ執権副大統領は、「アルマグロを虚偽拡散(名誉棄損)で訴えるつもりだ」と強調した。また最高裁は、今回のOEA会合開催を支持したMUD議員たちを「反逆罪」で捜査するよう、行政府に要請した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領はテレビ取材に対し、「OEAの存在意義を国際社会で検証すべきだ」と訴えた。「メヒコには壁や移民の問題で連帯しようと手を差し伸べたのに、この仕打ちは何だ。メヒコ政府はメヒコ人民にどう説明しようというのか」と憤懣を露わにした。

 一方、米共和党クーバ系極右のマルコ・ルビオ上院議員は28日、米テレビに、「ベネスエラは民主的でないと決議できないようでは、OEAの存在価値はない」と述べた。デルシー外相は29日、「対話継続」が支持されたことを「ベネスエラの勝利」と強調した。

▼ラ米短信   ◎ニカラグアとイスラエルが復交

 ニカラグアとイスラエルは3月28日、国交を再開したと発表した。ニカラグアは、イスラエル軍が2010年、パレスティーナ・ガザ地区に向かっていたトルコ船を攻撃し9人が殺された事件に抗議し、断交した。7年ぶりの復交。

▼ラ米短信   ◎コスタ・リカで29日、墨・中米・コロンビア首脳会合開催

 コスタ・リカ政府は3月28日、首都サンホセで29日、「トゥーストラ・グティエレス対話・協和機構」(MSCTG)の第16回首脳会合を開くと明らかにした。同機構にはメヒコ、中米統合機構(SICA)加盟8カ国国、およびコロンビアの10カ国が加盟している。

 
 
 
   

2017年3月28日火曜日

 ベネズエラのデルシー・ロドリゲス外相がワシントンの米州諸国機構会議で激しく反撃▼ラウール・キューバ議長の末妹死去▼メキシコ学生43人強制失踪事件から30ヶ月

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は3月27日、ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部での加盟国大使会議で45分間に亘って自国の立場を説明。ルイス・アルマグロOEA事務総長および賛同18カ国による、ベネスエラ問題をめぐる28日の特別大使会合開催決定を「内政干渉」として糾弾した。

 ロドリゲス外相は右隣に着席していたアルマグロ総長を時折見やりながら、「アルマグロは米帝国主義の利益のために活動しており、ベネスエラの寡頭勢力および国際右翼勢力と連携して、ベネスエラへの不安定化活動をしており、ボリバリアーナ革命を終わらせ、ニコラース・マドゥーロ大統領を交代させようと策謀している」と厳しく指摘した。

 デルシーはまた、「2015年にアルマグロが事務総長に就任した時から、彼の反ベネスエラ性を懸念していた。彼は就任以来、反ベネスエラ言動に淫してきた。(アルマグロがウルグアイ外相だった時の上司)ホセ・ムヒーカ(前)大統領は、マドゥーロ大統領に、アルマグロには反ベネスエラ行動はとらせないと約束していた」と、秘話を暴露した。

 外相はアルマグロを「嘘つき、不正直、悪人、傭兵、裏切り者」と扱き下ろし、「米政府が立案し支援するベネスエラへの金融、メディア攻撃などを展開している。米国の利益に従属していることから独立性がない」と批判した。

 28日の大使会合開催を提案した加盟諸国に対しては、「マドゥーロ政権打倒と反ベネスエラ行動が狙いであり、そうでないかのように装う仮面を剥がせ」と言い、内政干渉を止めるよう警告した。

 デルシーは、アルマグロがベネスエラの保守・右翼野党連合MUDと26回会合したとし、その半分は暴力を厭わない極右政党だと指摘。またアルマグロは欧州やラ米など諸国を訪問しては必ず反ベネスエラ発言をしてきた、と非難した。

 OEAについては、「機能しなくなっている。内政干渉の伝統を断ち切れない。機関としての方向性を見失い漂流している」と指摘。1948年の創設以来OEAがCIAと組むなどして、ラ米・カリブ地域で50を超える軍事クーデターに関与してきたとも述べ、1954年のグアテマラ改革政権を米政府が打倒した流血の政変を例に挙げた。

 ベネスエラ政府は27日、OEAに28日の会合を中止するよう求めたが、論番制議長国ベリーズは開催を決めている。ベネスエラ政府と野党連合MUDの政治対話を仲介してきたJL・Rサパテロ前スペイン首相、レオネル・フェルナンデス前ドミニカ共和国(RD)大統領、マルティン・トリホス元パナマ大統領の3人は27日、OEA大使会議に向けて、ベネスエラの国内対話を重視するよう呼び掛けた。

 ベネスエラ最高裁のマイケル・モレーノ長官は27日カラカスで、アルマグロの事務総長解任を発議するよう行政府に求める、と発表した。

 一方、米共和党極右のクーバ系上院議員マルコ・ルビオは27日、マイアミのヌエボ・エラルド紙に、「RD、ハイチ、エル・サルバドールがOEAでベネスエラを支持しているかぎり、3国への米援助の維持は難しい」と述べ、3国に圧力をかけた。RDなどの新聞がマルコ発言を取り上げ、非難した。

▼ラ米短信    ◎ラウール・キューバ議長の末妹が死去

 ラウール・カストロ玖議長の末妹アグスティーナ・カストロ(78)が3月26日、ハバナで死去した。ラウールの兄弟姉妹は7人だったが、長姉アンヘラ、長男ラモーン、次男フィデルは昨年までに死去。残るは、ラウール議長、二女フアーナ、三女エマの3人となった。

 フアーナは革命政権に反対、カストロ兄弟と袂を分かって1964年出国、マイアミで亡命生活を送ってきた。エマはメヒコ人と結婚し、メヒコ市に住んでいる。アグスティーナの葬儀にはエマも参列する。

▼ラ米短信    ◎メヒコ学生43人強制失踪事件から2年半

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市2014年9月26~27日起きた、同州内にあるアヨツィナパ農村教員養成学校生43人の強制失踪事件と市民殺害事件から30カ月が過ぎた。家族、支援者ら200人は3月26日、43人の写真を掲げてメヒコ市中心街を行進した。

 陸軍兵士や連邦警察の事件関与が明るみに出ているが、政府は捜査を事実上、打ち切っている。捜査の最高責任者であるMAオソリオ内相は、来年7月の大統領選挙に政権党PRI候補として出馬する方向にある。

 学生の父母らは、「内相が捜査を疎かにして政権に就けると思ったら大間違いだ。アヨツィナパ事件は内相の<靴の中に入った大きな石>となって選挙戦で攻撃の的となるはずだ」と指摘した。

2017年3月27日月曜日

  アルゼンチンの知識人ロドルフォ・ワルシュが軍政に殺されてから40年。状況参加ジャーナリズムで不正義を告発、ノンフィクション作品も数多く世に出した 

 アルヘンティーナ(亜国)の著名なジャーナリストでノンフィクション(NF)作家だったロドルフォ・ワルシュ(1927~77)が1977年3月25日、当時のビデーラ軍政に殺害されてから40年が過ぎた。24日の軍事クーデター41周年記念日と併せて、故人を知る人々が追悼行事を催した。

 アイルランド系亜国人ワルシュは、1950年代から創作物語やNF作品を書き、ジャーナリストとしては1959年のキューバ革命後にハバナで設立された通信社プレンサ・ラティーナの創設にも関与、健筆を振るった。

 以後、政治・社会状況に関与する「ペリオディズモ・コンプロメティード」(アンガージュマン・ジャーナリズム)の手法で調査報道をよくし、殺害される直前まで書き続けた。

 歿後18年の1995年に刊行された『書くという激烈な仕事』には、1953~77年に発表されたジャーナリズムの記事がまとめられている。

 ワルシュは、1960年半ばから70年代半ばにかけての都市ゲリラ活動激化期、ペロン派極左の「モントネロス」に参加、イデオローグとなった。76年のクーデターで政権を握った故ホルヘ・ビデーラ陸軍司令官(軍政大統領)の軍部独裁下で3万2000人が暗殺・殺害されることになるが、ワルシュは「状況参加」し、軍政の悪を告発、糾弾した。

 地下に潜伏し、76年4月、「ANCLA」(地下通信社)を始め、地下から報道を続けた。その年9月、愛娘ビクトリアが軍政の秘密警察に拉致され殺された。

 ワルシュは1977年1月、NF『フアンは川伝いに行こうとしていた』を書き終えた。そのころモントネロス指導部はワルシュにローマに亡命するよう勧告、旅費を渡そうとする。これをワルシュは断り、亜国に留まり、ジャーナリスムを通じて軍政告発を継続した。

 77年3月24日、クーデター1周年の日、ワルシュは軍政の人道犯罪、CIAと組んでの国家間連携テロリズム、富裕層のための経済政策などを非難、告発する長文の「ある作家の軍事評議会への公開書簡」を書いた。ブエノスアイレスに亡命していたボリビア軍政の元大統領JJ・トーレス暗殺、同じくアジェンデ・チレ政権の中枢部に居たカルロス・プラッツ将軍暗殺などへの軍部関与を暴いた。

 ワルシュは、この書簡の写しを10部作成、国内主要紙と外国メディア支局に配布した。軍政は激怒、翌25日、ブエノスアイレス市内で海軍兵25人がワルシュを包囲、ワルシュは拳銃で抵抗するが、たちまち銃弾を浴びせられ命を絶たれた。

 遺体は、拷問・殺害所となっていた市内の海軍上級機械学校(ESMA)に運ばれた。ESMAでの拷問を辛くも生き延びた仲間が、後年、ワルシュの身内に、遺体を見たことを伝え、明るみに出た。

 その後、遺体の在り処は不明のままだが、ESMAの向かい側にある土地に埋められている可能性が強いとされている。だが、依然発掘作業は為されていない。

 ワルシュのNF作品には、『虐殺作戦』、『サタノフスキ事件』、『誰がロセンドを殺したか』など。物語には『赤の変化』、『一キロの金』、『写真、書簡と、その女』などがある。 

 

2017年3月26日日曜日

 ベネズエラ問題めぐり27~28日、米州諸国機構(OEA/OAS)が会合▼アルゼンチンはクーデター41周年迎え、抗議渦巻く

   ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は3月24日、ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部で27日、ベネズエラの政治状況について加盟国大使たちに説明し話し合う、と明らかにした。

 これに対し、加盟34カ国のうち18カ国は同日、デルシー外相会合翌日の28日、OEA大使会議を開くことを決めた。この会議は、デルシー発言を受けて、ベネスエラの政治状況を分析、同国政府が憲法規定を逸脱した施政をしているかどうかなどを判断する。

 加盟国の3分の2を超える24カ国が賛成すれば、OEA外相会議を招集できる。その会議で24カ国以上が賛成すれば、ベネスエラにOEA民主憲章を適用し、同国のOEA加盟資格の停止を決めることが出来る。

 28日の大使会議開催を決めた18カ国は、ラ米12カ国(亜URU伯PAR智COL秘GUA巴HON墨CR)、カリブ英連邦4カ国(バハマ、バルバドス、ジャマイカ、セントルシーア)、北米2カ国(米加)。同ラ米12カ国と北米2カ国に英連邦加盟のベリーズを加えた15カ国は、ベネスエラに対して厳しい「G15」を構成している。だがベリーズは大使会議の輪番制議長国であるため中立でなければならず、18カ国提案に参加しなかった。

 一方、ベネスエラの側に立つのは、ボリビア、エクアドール、ニカラグア、エル・サルバドール、ドミニカ共和国(RD)、ハイチのラ米6カ国と、英連邦加盟7カ国、およびスリナムの、計14カ国。ベネスエラを入れて15カ国になる。

 ベネスエラが、この15カ国の結束を崩されなければ、民主憲章適用決議を否決できることになる。適用賛成派は、ベリーズを加えても19カ国しかならず、3分の2に達しないからだ。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)は28日に合わせカラカスで、「反帝国主義大行進」を実施。OEA大使会議を牽制する。OEAのルイス・アルマグロ事務総長は昨年来、ベネスエラへの民主憲章適用の旗振り役を演じてきた。

 カラカスでは24日、ルイサ・オルテガ検事総長が委員長を務める「正義・真実委員会」が、1958年1月23日のペレス=ヒメネス独裁崩壊から98年までの40年間の「国家テロリズム」について報告書を発表した。

 それによると、40年間に殺害、強制失踪、拷問、他の人権蹂躙事件が1万数千件発生。死亡者と行方不明者を合わせた犠牲者は1万6000人に及ぶ。身元が判明した死者は1万71人。

 オルテガ検事総長は、「歴史的記憶をベネスエラ人が集団として維持し、起きた事実を知ることが重要だ」と述べた。

▼ラ米短信    ◎亜国が軍事クーデター41周年記念日迎える

 この日3月24日は、国定の「真実と正義のための記憶の日」。首都ブエノスアイレスをはじめ全国各地で多くの市民が参加して、記念の行進と集会が開かれた。首都五月広場の大統領政庁(カサ・ロサーダ)前の集会は最大規模だった。

 人々は、殺された肉親らの写真やスローガンを掲げて行進。過去の軍政、3万人以上が殺された軍政の犯罪、現在のマクリ保守・右翼政権を糾弾した。

 
 

2017年3月25日土曜日

メキシコでジャーナリスト殺害が相次ぐ

 メヒコでジャーナリスト殺害事件が続発している。首都メヒコ市の日刊紙ラ・ホルナーダ(今日の出来事)のチウアウア州都チウアウア市通信員ミロスラバ・ブリーチ=ベルドゥセア記者は3月23日、市内の自宅を出て自家用車に乗ったところを男に9発撃ち込まれて即死した。

 彼女はノルテ・デ・シウダー・フアレス(フアレス市北部)紙の記者でもあり、人権蹂躙や麻薬組織の犯罪を暴く調査報道を続けていた。たとえば現中央政権の党PRI、前政権党PANのチウアウア州内市会議員比例代表名簿に麻薬組織の関係者が記載されていた事実をすっぱ抜いた。麻薬輸送路や麻薬原料栽培・生産地の名簿に特に記載が多いという。

 ハビエル・コラル州知事は、ブリーチ記者を「勇気ある批判的記者だった」と讃え、3日間の州喪を宣言。州議会も黙祷を捧げた。だが、州当局はブリーチが以前から脅迫されていたにも拘わらず保護せず、かつ過去の犯罪者を無処罰にしてきた、との非難が高まっている。

 ラ・ホルナーダ紙はチウアウア州・市政府に対し、事件の速やかな解明と解決を要求した。また、スペインのジャーナリスト協会連合(FAPE、会員2万人)のエルサ・ゴンサレス会長は24日、「同じ言語(スペイン語)で繋がる同業者同士、事件は決して他人事ではない」と強調。「メヒコはジャーナリストの墓場だ。すなわち自由と民主の墓場だ」と指摘した。

 今年に入ってからメヒコでは2月20日、コリマ州テコマン市でコリマ放送のカルロス・ガルシア記者が殺された。3月2日、ゲレロ州アルタミラーノ市でラ・ボス・デ・ラ・ティエラ・カリエンテ(熱地地方の声)紙のセシリオ・ピネーダ編集長が殺害された。続いて19日にはベラクルース州ヤンガ市でエル・ソル・デ・コルドバ(コルドバ市の太陽)紙のリカルド・モンルイ記者が射殺された。

 1983年以来メヒコで殺されたジャーナリストは約230人に達した。ラ米でも最悪の部類だ。州・市政府・当局が麻薬組織など組織犯罪集団から買収されて捜査を怠り、犯罪者の無処罰が当たり前のようになっている状況下で、「売られる記者」、「買われるジャーナリスト」も少なくない。

 買収を跳ね付け、真実を追求する正義派は命懸けで取材し報道することになる。やがて死の脅迫が届き、これを無視して取材を続ければ、無防備のまま、権力や麻薬組織から雇われた殺し屋の標的となる。脅迫され、国外に身を隠したり、亡命したりするジャーナリストも珍しくない。

2017年3月23日木曜日

 チリ大統領選挙前哨戦が本格化。ピニェーラ前大統領が野党側から出馬表明、政権党連合も5人が統一候補指名を争う。▼最高裁は元諜報機関員33人に禁錮刑言い渡す

 チレでは11月19日、大統領選挙が実施されるが、野党側のセバスティアン・ピニェーラ前大統領(67)が21日出馬を正式に表明したことで、前哨戦が本格的に始まった。

 資産25億ドルという富豪ピニェーラは、ピノチェー軍事独裁政権(1973~90)の流れを汲む保守・右翼野党連合の候補として2005年に最初の出馬を試みたが、中道・左翼政党連合のミチェル・バチェレーに敗れた。

 バチェレーの第一期政権末期の09年、2度目の出馬でエドゥアルド・フレイ元大統領を破って当選、10~14年、政権に就いた。現在2期目にあるバチェレー政権は支持率が低迷、野党に政権交代の可能性が出ている。

 野党側は7月2日、予備選で統一候補を決めるが、ピニェーラは逸早く立候補を表明した。その演説で、バチェレー政権が為した無料教育、奨学金制度などを導入した教育改革、労働、保健制度改革を「悪政」と扱き下ろした。会場では、極右勢力が「チレ万歳、ピノチェー万歳」のう歌を合唱した。

 ピニェーラは、90年に自財閥傘下の企業が脱税を指摘され、07年にはインサイダー取引でLAN航空株を買った罰金70万ドルを支払った。このように過去に財界人として問題があった。

 政権党連合「新多数派」は、最大勢力のキリスト教民主党(DC)がカロリーナ・ゴイク党首、もう一つの大勢力である社会党(PS)がリカルド・ラゴス元大統領、JMインスルサ前OEA(米州諸国機構)事務総長、フェルナンド・アトゥリア議員、急進党(PD)がジャーナリストのアレハンドロ・ギジエルと、それぞれ名乗りを挙げている。

 社会党は1990年3月の民政復活後、ラゴス、バチェレー(2期)の両大統領を出してきた。一方、DCは同じく、故パトゥリシオ・エイルウィン、フレイの両大統領を出した。

 故アウグスト・ピノチェー陸軍司令官が率いた軍部による流血のクーデターで1973年9月11日倒された人民連合社会主義政権の故サルバドール・アジェンデ大統領(社会党)の娘である上院議員イサベル・アジェンデ現党首は出馬を予定していたが昨年10月辞退、ラゴスら党員を支援する側に回った。ところが、3候補ともパッとしない。

 そこで輝きだしたのは、急進党のギジエルだ。現時点での支持率調査で、ピニェーラの25%に次ぎ、15%で2位に着けている。ギリエルは早速、ピニェーラの立候補演説を批判。「何ら新しい政策が見られない。現政権が遂行した教育、保健、税制改革を覆すことなどできまい」と、福祉政策削減を図りたいピニェーラの新自由主義路線を攻撃した。

 ゴイクDC党首は、「ピニェーラは現政権を非難するのではなく、自陣営内の極右勢力を気にかけるべきだ」と指摘。ラゴスも「ピニェーラは政府が保障すべき人民の自由にも、年金基金問題にも触れていない」と批判した。社会党は4月中に候補者を一本化する方針。

 一方、チレ最高裁は22日、ピノチェー軍政期の諜報機関「国家情報局」(CNI)に所属していた元機関員33人に市民5人の拉致・殺害・遺体放棄の罪で禁錮刑を言い渡した。

 33人は1987年、カルロス・カレーニョ陸軍大佐誘拐事件への報復として同年、共産党の地下武闘組織「マヌエル・ロドリゲス愛国戦線」(PPMR)のフリアン・ペーニャら5人を拉致、拷問して惨殺。遺体をヘリコプターに載せ、バルパライソ沖の太平洋に投棄した。事件の詳細は、軍政下の人道犯罪専任のマリオ・カローーサ特別検察官が明かした。

 禁錮刑は、元将軍と少佐の計2人に15年、21人に10年、9人に5年、1人に3年。国家が支払う5人の遺族への賠償金は計3億8000万智ペソ(約57万5000ドル)。

 チレでは、軍政終焉後27年経つ今も、時効のない軍政期の人道犯罪追及が続いている。軍政期には3200以上が殺され、数多くの市民が拷問された。多数が国外に亡命した。だが依然、ピノチェーを讃える極右勢力が健在だ。

 

 
  

2017年3月21日火曜日

 チリに奪われた太平洋岸領土の回復が悲願のボリビアが国際司法裁判所に新たな意見書を提出。チリは半年後に立場表明へ。両国間にいざこざ続発

 ボリビア政府は3月21日、ハーグの国連・国際司法裁判所(ICJ)に、太平洋岸領土回復に関する主張を盛り込んだ意見書を提出した。この書類提出時、ボリビアの外相、司法相、国会下院議長が立ち合った。

 ボリビアは1879年、チレに仕掛けられた「太平洋戦争」で、現在チレ領となっている広大なアントファガスタ地方をチレに奪われた。双方は1904年の条約で領土問題に決着をつけたが、ボリビアは「条約で全問題が解決したわけではなく、未解決の案件が残っている」と主張、「海岸領土回復」を国家的悲願として訴えてきた。これに対しチレは、全問題が解決したとの立場をとってきた。

 先住民族アイマラ出身で民族主義の強いエボ・モラレス大統領は2013年4月24日、領土問題交渉に応じるようチレに促す裁定をICJに求めた。チレは14年7月15日、ICJには同領土問題を裁定する権限はないとの意見書を提出した。

 双方の主張を受けたICJは15年9月24日、ICJにはその権限があると判断。両国政府に新たな意見書を提出するよう求めた。ボリビアは提出期限の21日、これを済ませた。チレは9月21日までに立場を表明せねばならない。

 モラレス大統領は20~21日、政治首都ラパスの大統領政庁前で盛大な行事を主宰、ハーグでの意見書提出を内外に印象付けた。大統領はICJでの「領土回復活動」を全世界に知らしめるため、ボリビアの在外公館・代表部の全てにボリビア国旗を掲げるようしじしている。

 これを受けて、アントファガスタ州都アントファガスタ市にある「ボリビア領事部」は先週、国旗を掲げた。ところがチレのカラビネロス(治安警備隊)に国旗を外されてしまた。チレ政府は、同領事部は正式な外交登録がなされておらず、国旗を掲げる資格がないと
説明、ボリビア政府に抗議した。

 さらに19日、ボリビア国境警備隊兵士2人と税職員7人が智タラパカ州の国境地帯で身柄をカラビネロスに拘禁される事件が起きた。智当局は、ボリビア人9人は智領内にあったトラックを盗みに侵入したため拘禁したと主張。

 一方、ボリビア政府は、9人は密輸物資を載せたトラック3台を追跡していたところ、ボリビア領内に入ってきた智カラビネロスに拘禁され、拉致された、と主張している。

 これに対しバチェレー智政権は、ICJでのボリビアの外交的振る舞いを目立たせるため「チレとの紛争」をでっちあげて利用するな、とやり返した。

 両国は、双方が共に軍政だった時期に領土問題交渉がこじれて断交、以来、大使はおらず、総領事級外交に留まっている。  

 
 
 

2017年3月20日月曜日

  ベネズエラが大平原ジャノを讃える第1回「ジャネリダーの日」を祝う。N・マドゥーロ大統領は強国支配に対抗するため「政治のイデオロギー化」が急務と強調

 ベネスエラは3月19日、「ジャネリダー(ジャノ性)の日」を迎えた。ジャノ(大平原)文化、ジャノ人の認同(イデンティダー)などを評価し、謳い上げる日。ニコラース・マドゥーロ大統領が17日、指定したばかりだ。ジャノの拡がるアプレ州エロルサが19日、「一日首都」となった。

 マドゥーロ大統領は18日、カラカスにある、ボリバリアーナ「ヘスース・リベロ」労働者大学の卒業式で演説、「強国群は諸国を支配するため、諸国の脱イデオロギー化、脱政治化を謀っている」と前置きし、「そのような危険な状況にある今、政治をイデオロギー化せねばならない」と強調した。

 大統領は、「ベネスエラの歴史に明確に根ざした堅固なイデオロギーが必要」とし、その特質を「ベネスエラ性、ラ米性、キリスト教、人間的、連帯主義、深淵、民主的、自由、直接民主主義」と説明。同時に、「反ブルジョア、反資本制、反帝国主義、反市場、反虚偽、反陰謀」と指摘した。

 さらに、故ウーゴ・チャベス前大統領が始めたボリバリアーナ革命が「21世紀型社会主義」建設を目指していることに触れ、「社会主義社会では人間が自由でなければならない。そのためには平等性、意識、教育、分かち合う文化が不可欠だ」と述べた。

 一方、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長は20日ワシントンで記者会見し、米州民主憲章のベネスエラへの適用提案について新たな意思表明をする。会見の場には、ベネスエラの極右政治家の妻らも出席する予定。

 これについてマドゥーロは18日、「ベネスエラ革命はOEAの有無に拘わらず進行する。アルマグロはならず者、裏切り者だ」と反駁。ベネスラの歴史家オマール・ウルタードは、「アルマグロは<アルマグロテスコ>と呼ばねばならない」と扱き下ろした。

 OEAの民主憲章適用には、加盟34カ国の3分の2である23カ国以上の賛成が必要。既にペルーが賛意を表明、ボリビアが反対している。

 

  伊高浩昭の最近のジャーナリズム活動。最多の主題は「フィデル・カストロ死去」▼パナマ第3水路を超大型船1000隻通航

◎伊高浩昭の最近の執筆記事など

★月刊誌「LATINA」
▼2017年4月号(3月20日発行) 「ラ米乱反射」連載第132回
「米州南北間の歴史的矛盾が爆発  トランプ米政権に翻弄されるメキシコ」 6ページ、写真4枚使用

▽書評:『パナマ-歴史と地図で旅が10倍おもしろくなる』松井恵子著、三冬社、1500円

▼同3月号(2月20日発行) 同131回
「ラ米最後の内戦終結を目指し本格交渉開始  キトでコロンビア政府とゲリラ・民族解放軍」

▽書評:『ホセ・ムヒカ  日本人に伝えたい本当のメッセージ』萩一晶著、朝日選書、780円

▼同2月号(1月20日発行) 同130回
「対応はトランプ米新政権の出方次第  革命の父フィデル・カストロが逝ったキューバ」

▽書評:『第三帝国』ロベルト・ボラーニョ著、柳原孝敦訳、白水社、3600円

▼同1月号(2016年12月20日発行) 同129回
「アイスランド人は<新世界一番乗り>を主張  コロンブス到達の地バハマに目立たぬ銅像」(ルポルタージュ)

▽書評:『マラス  暴力に支配される少年たち』工藤律子著、集英社、1800円

▼共同通信加盟各紙(2016年11月27日)
「フィデル・カストロ死去  緊急識者評論」

▼毎日新聞(11月27日)
「フィデル・カストロ死去についての論評」

▼毎日新聞社「エコノミスト」誌(12月13日号)
「フィデル・カストロ死去解説」

▼キューバ映画「オリソンテス(水平線)」冊子(11月)
「常に<革命の祖国>と共に」(アリシア・アロンソの半生についての解説)

▼週刊金曜日(2017年1月20日号)
解説「トランプ対策練るキューバ プーチン氏と油田開発に期待」

▽書評:(12月9日号)『マラス』(前出)
「中米の恐るべき青少年暴力団を取材したルポルタージュの傑作」

▼ラジオJWAVE青木理番組(12月2日)
「フィデル・カストロ死去論評」

▼NGOレコム機関冊子「そんりさ」(2017年2月4日号)「ラ米百景」連載第61回
「フィデル・カストロを書いて糾弾されたジャーナリスト」

▼NGOキューバ友好円卓会議機関冊子「サルー」(3月8日号)
「フィデル・カストロの<英雄の生涯>」(長文評伝)

▼講演(1月25日夜、NGOピースボート高田馬場本部)
「フィデル・カストロの死とキューバ」

▼シンポジウム(2月6日午後、早稲田大学ラ米研究所主催、小野梓記念講堂)
「今 キューバを考える」=カストロ亡き、トランプ有りの=


▼ラ米短信  ◎パナマ運河第3水路を超大型船1000隻が通航

 パナマ運河庁(ACP)は3月18日、昨年6月開通した運河閘門式第3水路を超大型船1000隻が同日までに通航したと発表した。コンテナ船、自動車運搬船、穀物運搬船、石油タンカー、液化天然ガス(LNG)タンカー、石油液化ガス(LPG)タンカーなど。

 4月、乗客4000人の超大型旅客船が通航する予定。第3水路の閘門間の水路の規模は、全長366m、幅49m、喫水15m。
 
 

2017年3月18日土曜日

 メキシコ人学生43人失踪事件解明を急ぐよう米州人権委員会(CIDH)が墨政府に厳しく要請。ワシントンでの会合で父母側は、政府側の真相隠しを追及

 米州諸国機構(OEA)の機関「米州人権委員会」(CIDH=シダーチェ)はワシントンの本部でメキシコ政府代表と、アヨツィナパ農村教員養成学校生強制失踪者43人の父母代表を招き、同失踪事件解明を急ぐべく話し合いの会合を開いた。

 CIDHの代表パウロ・ヴァヌチは、「麻薬組織首領ホアキン・チャポ・グスマンを逮捕できた墨政府がなぜ学生43人の殺害犯を逮捕、特定できないのか」と、厳しく政府側を追及した。グスマンは昨年逮捕され、今年1月下旬、身柄を米国に送られた。

 墨政府からは、外務、内務両省と検察庁の人権担当次官が出席した。政府側は、既に信憑性が否定されている「事件の公式見解」を繰り返すだけで、積極的発言はなかった。

 事件は2014年9月26~27日、墨ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた。同市警、同州警、連邦警察、同市駐屯陸軍、麻薬組織などの関与が明らかになっている。だが政府は、連邦警察と陸軍の関与を認めれば、行政府の長である大統領に責任が及ぶため、その面の捜査をせず沈黙を決め込んでいる。

 父母代表は、「虚偽と腐敗まみれで、真実を隠している」と政府を糾弾。麻薬組織と国家の不正を捜査するよう要求した。またCIDHに対し、事件をうやむやに終わらせないよう、引き続き捜査に関与するよう求めた。

 CIDHは4月20日訪墨し、CIDH派遣の専門家調査団が得ている捜査結果に基づき真相を暴くよう、政府に働きかけることにしている。ヴァヌチ代表は、政府側に「いつまで時間を引き延ばすのか。真相解明のため時間を限るべきではないか」と迫った。

 来年7月のメヒコ大統領選挙の野党有力候補AMLO(アムロ=アンドゥレス=マヌエル・ロペス=オブラドール)が訪米中の15日、43人失踪事件への陸軍関与の可能性を示唆したところ、政権党PRIや前政権党PANなどから激しい反発が起きた。

 一方、メヒコ政府は14日CIDHに対し、トランプ米政権の不法移民追放政策を問題にするよう告発した。またメヒコ国会上院外交委員会は15日、米墨国境の壁建設工事に参加する両国建設会社には公共事業を発注しない方針を決めた。

 墨内務省は16日、米国からの移民大量帰国への準備が整った、と明らかにした。「ソモス・メヒカーノス」(私たちはメキシコ人)という計画で、当面、帰国者5万人に職を与える用意が出来たという。

 米国からメヒコへ過去8年間、墨人不法移民250万人が送還された。去年は30万人だったが、うち10万人は自発的帰国だった。  
  
  

2017年3月17日金曜日

 キューバがFARCゲリラ復員者1000人を医学留学に招く。医療協力国際主義外交が健在ぶり示す★WBC敗退のキューバ、オランダ戦のKO負けに衝撃、「国喪宣言」

 キューバ政府は3月16日、コロンビア政府および、武装解除中のゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)の復員者計1000人を医学留学生として受け入れる、と発表した。向こう5年間、毎年200人、政府推薦者と元ゲリラ半数ずつを受け入れる計画。

 だがコロンビア政府は、割り当ての500人分をFARC側に回すと表明。1000人全員がFARC系留学生となる。総予算は2380億コロンビアペソ(約8000万ドル)。クーバ政府が負担する。

 コロンビア政府とFARCは昨年までの4年間、ハバナで和平交渉を続け、和平合意に達した。ラウール・カストロ玖国家評議会議長は昨年9月、カルタヘーナで和平合意調印式が挙行された折、JMサントス・コロンビア大統領に直接、留学生受け入れ計画を伝えていた。クーバは、コロンビア内戦終焉へのクーバの関与を続けるため医学生を受け入れると表明している。

 チェ・ゲバラは61年前、医師からゲリラになったが、今年9月からコロンビア人元ゲリラがクーバで医師になる勉強に励むことになる。クーバ外交の柱である医療協力国際主義は健在だ。

★ラ米短信    ◎クーバ野球チーム:衝撃の惨敗、<国喪に服す>

 東京でのWBC予選第2次リーグで一勝も挙げられずに敗退したクーバ代表野球チームのカルロス・マルティ=サントス監督は3月15日、同日の最終選でオランダに14対1でノックアウト(コールドゲイム)された衝撃の後、「玖チームには技術的問題がある。特に投手の養成だ。投手はWBC級に達していなかった。我がチームの一線級投手はオランダから打ち崩された。敵の攻撃力が勝っていた」と語った。

 監督はまた、「少年野球に始まる国内下級リーグからの育成という課題もあり、短期間で修正できる問題ではない」と、クーバ野球の問題点を指摘した。

 だが、「WBCで戦ったどのチームも高級であり、連日、技術や戦術で学ぶことが多かった。ロサンジェルスに行ければ良かったが、ライバルたちの方が上だった」と述べ、「優勝は蘭日米RD(ドミニカ共和国)から出るのではないか」と展望した。

 一方、クーバメディアの特派員たちは、予選敗退に嘆いている。「最悪の結末」と題した論評記事は、「野球はクーバでは宗教のようなもので、不可侵だ。オランダにKOされたのは、いかなるシェークスピア悲劇にも勝る劇的な衝撃だった」と書く。

 さらに、「試合経過には触れまい。負けたというだけで十分だ。<国喪>が宣言された。だがページをめくろう」と記し、再出発を促した。

2017年3月16日木曜日

 米州諸国機構(OEA/OAS)事務総長の内政干渉策めぐり、ベネズエラ政府との関係が険悪化。マドゥーロ大統領はアルマグロ総長を「愚劣なごみ」と扱き下ろす★エクアドル大統領選挙決選支持率は政権党候補が優勢

 ベネスエラと米州諸国機構(OEA)事務総長との関係が極度に悪化している。ルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は3月14日、OEA常設会議(加盟国大使会議)に、ベネスエラ政府に大統領を含む総選挙を早期実施させるため圧力をかける目的で、同国のOEA加盟資格停止を提案するという趣旨の報告書を提出した。

 これに対しベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は15日、内政干渉としてアルマグロを糾弾。「アルマグロと呼ばれる愚劣で小さな裏切者、ごみ」と扱き下ろした。また、「米国の植民地省であるOEAは過去に何度ラ米で介入やクーデターを生み出してきたことか」と非難した。

 D・トランプ米大統領、米国務省、米共和党極右のクーバ系上院議員マルコ・ルビオ、ベネスエラ野党連合MUDと意を通じるアルマグロは2015年に事務総長に就任して以来、右傾化が著しく、かつての上司、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領から昨年、「絶縁」を言い渡された。

 米国はジョージ・ブッシュ(息子)、バラク・オバーマ両大統領期から続いてきたベネスエラ改革政権打倒の動きを、トランプ政権になってからも維持しており、OEAを使ってマドゥーロ政権打倒工作を活発化させようとしている。

 加盟国資格停止には、追放されて以来、復帰していない社会主義クーバを除く加盟34カ国のうち3分の2(23国)の賛成が必要。採決は外相会議で為される。

 ベネスエラ支持国は、同国を含め12カ国を超えており、その切り崩しの対象はカリブ英連邦諸国。今後、米政権が経済援助と引き換えに自陣への取り込みを図る可能性がある。

 ベネスエラ外務省は14日、「ベネスエラの敵アルマグロは誤った前提に基づき国際介入を促進し、ベネスエラへの経済戦争を強化しようとしている」との声明を出した。次いでデルシー・ロドリゲス外相が15日、ベネスエラは市民団体などラ米225組織から支持表明を受けていると明らかにした。

 同外相はさらに、「アルマグロは、危険で反民主の米州極右ファシスト分子を指揮している。べエスエラ人民への憎悪をかきたてて介入しようと謀っている」と激しく非難した。

 ブラジル新外相アロイジオ・ヌネスは11日、「ベネスエラ政権は独裁だ」との見方を示したが、デルシー外相は、昨年8月末の政変で政権に就いたミシェル・テメル大統領の現政権を「クーデターを決行し腐敗し人民を攻撃する寡頭体制」とけなした。続けて、「一役人がベネスエラの力強い民主を裁こうとは図々しく卑しむべきことだ」と糾弾した。

 ブラジルの弾劾は、巨額の収賄事件を捜査されていた国会多数派が正当な根拠なくヂウマ・ルセフ大統領を弾劾、事実上の「国会クーデター」だった。だがアルマグロは、ブラジルの加盟資格停止への動きを見せなかった。

 マドゥーロ大統領は9日の(現政権が指定した)「反帝国主義の日」の式典で、「爪、武器、精神、歴史をもって国を守り、帝国主義の内政干渉を許すな」と、支持層のチャベス派に発破をかけた。

 一方、保守・右翼野党連合MUDが圧倒的多数派のベネスエラ国会の外交委員会は15日、アルマグロ提案への支持を表明した。

▼ラ米短信   ◎エクアドル大統領選挙決選支持率調査では政権党候補優勢

 エクアドール大統領選挙(2月19日)の得票上位2人が臨む4月2日実施の決選まで半月余り。3月15日公表された支持率調査結果によれば、ラファエル・コレア大統領の進歩主義改革政権の候補レニーン・モレーノが51%、新自由主義復活を目指す保守・右翼の財界系候補ギジェルモ・ラッソが35%。14%は態度未決定・棄権・白票。

 グアヤキル銀行社主であるラッソは16日、「オフィショー富豪ラッソ」という題名の調査報道記事で、パナマ、ケイマン、デラウェアの租税回避地にある49社に資金を流していたことを暴露された。「選挙民の敵」(脱税者)という非難も起きており、選挙戦に不利に作用するのは疑いない。 



 

2017年3月15日水曜日

 チリのビーニャ・デル・マルで15日、アジア太平洋会合。TPP頓挫後の統合の道探る。日中韓も参加

  チレ太平洋岸のビーニャ・デル・マル(海浜の葡萄畑)市で3月15日、米国脱退によるTPP頓挫後の環太平洋経済統合の道を探る閣僚級会合が開かれた。題して、「アジア太平洋統合計画高級対話=課題と機会=」。

 ラ米から、太平洋同盟(AP)加盟のチレ、ペルー、コロンビア、メヒコ、北米からカナダ、アジア太平洋から日シンガポール韓ブルネイ中マレーシア越豪乳の計14カ国が参加した。うち11カ国はTPP調印国。

 これに先立ち14日、AP4カ国はビーニャで外相・経済相会議を開いた。議長のエラルド・ムニョス智外相は、APの経済ブロック化強化を図り、APに協賛国制度を設けることを決めた、と明らかにした。また4月7日ブエノスアイレスで、APと南部共同市場(メルコスール)の合同閣僚会議を開く、と発表した。

 一方、新自由主義経済路線に基づく広域経済圏設立に反対する市民団体は14日、ビーニャで15日の会合に反対する抗議行動を展開、11人が機動隊に逮捕された。「チレにTPPは要らない」などと書かれたプラカードを掲げて抗議していた。

▼ラ米短信   ◎ラ米一「生活しやすい都市」はモンテビデーオ

 米メルセルが3月14日発表した2017年版「生活しやすい世界231都市順位」で、ラ米ではウルグアイ首都モンテビデーオが1位(世界79位)になった。2位はブエノスアイレス(93位)、3位は智サンティアゴ(95位)。ラ米最下位のアイチ首都ポルトープランスは世界で228位だった。

 世界最高位はウィーン。2位以下はチューリッヒ、乳オークランド、ミュンヘン、バンクーバー、デュッセルドルフ、フランクフルト、コペンハーゲン、バーゼル。。。欧州的美観都市ばかりだ。 

2017年3月13日月曜日

ホンジュラス主要3党が大統領候補指名の予備選実施

 オンドゥーラス総選挙は11月24日実施される。大統領、国会議員128人、298市長、市会議員2092人、中米議会議員20人を選ぶ。3月12日、主要3党の大統領候補指名のための予備選挙があり、各党の有力候補がほぼ確定した。

 政権を握る国民党(PN、保守・右翼)は現職大統領フアン=オルランド・エルナンデスが93%を得た。憲法は大統領再選を禁じているが、最高裁は15年、再選可能と判断した。だがエルナンデスの出馬には依然、反対意見が少なくない。

 野党第1党の「自由と再建」(LIBRE=リブレ、進歩主義・左翼)党は、シオマラ・カストロが94%を確保。シオマラは、2009年6月28日の軍民クーデタで追放されたマヌエル・セラーヤ大統領の妻。13年の前回選挙で善戦したが、エルナデスに勝利を持って行かれた。

 LIBRE党は、政治運動「反腐敗と刷新」、「民主社会連合」と連携、エルナンデス再選阻止を狙う。もう一つの自由党(PL、保守)はルイス・セラーヤ56%、ガブリエーラ・ヌニェス34%と割れた。有権者は535万人。

▼ラ米短信   ◎ボリビアがコカ葉栽培地を拡大

 ボリビアで3月8日、コカ葉作付面積を従来の12000haから22000haに増やす新法が公布された。うち14300haは、政治首都ラパス郊外のユンガス、7700haはコチャバンバ市郊外のチャパーレに割り当てられた。

 署名したエボ・モラレス大統領は、「生活のため、古来の伝統のため、アンデス住民の神秘的儀式のため」のコカ葉生産が保障されたと公布式で述べた。だがユンガスの栽培者代表は、チャパーレ産コカ葉の9割がコカイン生産の原料となることから異議を唱え、式に出席しなかった。

 エボ自身が、チャパーレのコカ葉栽培農民6組合の連合組織の代表を務めている。この連合組織と政権党MAS(社会主義運動)がエボの勢力基盤となってきた。

 政府は、チャパーレ産コカ葉の大部分は、コカ茶、薬品、栄養剤の原料として使うと説明している。国際的な麻薬取締機関から批判や異論が出るのは必至だ。エボ政権以前のコカ葉作付面積は37000haだった。

▼ラ米短信   ◎ガルシア元ペルー大統領が「暗殺未遂事件」に触れる

 アラン・ガルシア元秘大統領は3月11日、第1期政権期の1987年、対外債務返済を制限し、銀行国有化を提案した際、これに反対する勢力が国軍をたきつけてクーデターを画策したが、難を逃れたと明らかにした。

 ガルシアは当時、空軍のミグ戦闘機が夜間、大統領政庁を目指して飛来する情報をつかみ、リマ市全域を停電させた。これにより戦闘機は標的を見失ったという。

 2度目はアルベルト・フジモリ元大統領が92年4月5日、国軍と組んでのお手盛りクーデターで憲政を停止させた日、軍と警察の特殊部隊で構成された暗殺コマンド「コリーマ」がガルシアを自邸で暗殺しようと謀ったが果たせなかった、という。

 ガルシアは、その後、隣国コロンビアに亡命している。ガルシアが過去の話を今出したのは、伯建設会社オデブレヒト社贈収賄事件絡みで収賄した嫌疑がかけられているため、それから目をそらせるためではないかとの見方が出ている。
 

2017年3月12日日曜日

 ハバナで「カリブ諸国連合」(AEC)と「カリコム・キューバ協力」機構の外相会議が相次いで開かる。ビデガライ・メキシコ外相はAEC諸国の対メキシコ連帯に謝意表明

 カリブ沿岸および周辺の25カ国が加盟する「カリブ諸国連合」(AEC)の第22回外相会議が3月10日ハバナで開かれた。ラウール・カストロ玖国家評議会議長が歓迎の挨拶、次いでブルーノ・ロドリゲス玖外相を議長に討議に移った。外相22人が参加する盛会だった。

 ロドリゲス外相は、1995年8月トゥリニダード&トバゴ(TT)でのAEC設立首脳会議で観光、通商、運輸の開発3本柱が決まり、後に災害対策と気候変動が追加され、重要案件5本柱となった経過を振り返った。さらに今外相会議に先立ち8日ハバナで、第1回AEC協力会議が開かれたことや、中露両国との協力の重要性に触れた。

 最も注目されたメヒコのルイス・ビデガライ外相は、「米新政権との意見の明確な隔たりがあるが、我々は交渉過程にあり、必ずや良い決着を見るだろう」と述べ、AEC加盟諸国によるメヒコへの連帯に謝意を表した。

 来年までの議長国に選ばれたベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「外部勢力からの内政干渉、覇権主義押し付けを糾弾する。メヒコに連帯する。国境の壁はラ米・カリブ全域に対する壁だ」と語った。会議は、域内の航空・海洋運輸接続強化などを謳ったハバナ宣言を採択し、閉会した。

 ビデガライ墨外相は、9日ワシントンでハーバート・マクマスター大統領国家安全保障担当補佐官、ジャレッド・クシュナー上級顧問(トランプの女婿)らと会談し、ハバナに来た。ハバナでは、クーバ、ベネスエラ、コロンビア、ガアテマラの外相と会談した。

 今会議で日本は、AECのオブザーバー資格が認められた。出席した薗浦健太郎副外相はジューン・スーマAEC事務局長、ロドリーゴ・マルミエルカ玖通商・外資相、ロヘリオ・シエラ玖副外相、コロンビア、グアテマラ、バルバドス3国外相と会談した。

 薗浦副外相は、マルミエルカ同相との間で、クーバの米作技術協力とごみ収集車供与など総額22億円強の協力合意書に調印した。

 ハバナでは続いて11日、カリブ共同体(カリコム)とクーバの第5回外相会議が開かれた。議長を務めたロドリゲス玖外相は、トランプ政権登場を踏まえて「米州の新たな試練の下での連帯強化」を強調、カリブ統合努力の一環としてクーバが近く「カナル・カリーベ」(カリブチャネル)というテレビ放送を開始することを明らかにした。カリコム・クーバは12月、バルバドスで第6回首脳会議を開く。

 マルミエルカ玖相は、カリコムのコリン・グランダーソン事務次長に「経済協力合意第2議定書」を渡した。カリコム産品240品目とクーバ産品85品目を相互に自由化する合意が記されている。

2017年3月7日火曜日

 ペルー検察がブラジルのオデブレヒト社贈収賄事件絡みで、クチンスキ大統領、アラン・ガルシア元大統領らの捜査を検討。選挙資金や地下鉄建設工事めぐり疑惑渦巻く

 ペルーのPPクチンスキ(PPK)大統領が昨年の大統領選挙の選挙資金に収賄資金を加えていた疑いで捜査される可能性が出ている。カテリーネ(キャサリン)・アンプエロ特別検事は3月6日リマで記者会見し、伯国およびラ米で最大手の建設会社オデブレヒトから、PPKに近い財団を通じて資金がPPK陣営に流された疑い関し捜査開始を検察庁に要請した、と発表した。

 その財団は「ラティンアメリカ・エンタープライズ財団」(LAEF)。PPKが見返りに同財団に何らかの便宜を図った可能性も指摘されている。PPKは昨年の大統領選挙決選に2位で進出、1位のケイコ・フジモリを僅差で破り、7月末、政権に就いた。

 同特別検事はまた、アラン・ガルシア元大統領2期目に建設されたリマ地下鉄1号線の工事入札時にオデブレヒト社から賄賂が渡された可能性についても捜査開始を検察庁に3月1日求めていたことを明らかにした。

 この汚職問題ではガルシアおよび、ガルシア政権で運輸相だったエンリケ・コルネホらが捜査対象となっている。オ社は、今年1月、秘検察庁で、地下鉄建設に関し総額800万ドルを支払ったと証言している。この事件の容疑者3人が既に予防拘禁されている。

 また、クスコ新空港建設工事をめぐり、PPK政権のマルティン・ビスカーラ第1副大統領兼運輸相がクントゥル・ワシ企業連合との談合に関与した疑いで、特別検事は捜査開始を検察庁に要請した。検察庁は特別検事による一連の要請について検討中。

 ラ米の半分とアフリカの一部を巻き込んだ巨額のオ社贈収賄事件は発展するばかりだ。ペルーのオヤンタ・ウマーラ前大統領の夫人ナディーンは2011年の選挙時にオ社から300万ドルを渡され、夫の選挙資金に用いたことが明るみに出ている。ウマーラは、この選挙決選でケイコ・フジモリを破った。

 またアレハンドロ・トレード元大統領は、秘伯間自動車道建設をめぐってオ社から2000万ドルを収賄、起訴され、国際手配されている。米加州で逃亡生活を送っていると伝えられる。

 政府高官の背信共謀罪には最高15年の禁錮刑が科される。だが無処罰が横行、立件されることは稀だ。ガルシアは1980年代後半の第1期政権期に巨額の汚職疑惑が出ていたが、うやむやに終わっている。

 ケイコの父で服役中のアルベルト・フジモリ元大統領が有罪、収監されたのは、反フジモリ世論が高まるなかで、殺人命令など重罪関与が法廷で立証されたため可能だった。

 コロンビア検察庁は同じ6日、2014年の同国大統領選挙時に、JMサントス現大統領陣営に100万ドル、対抗馬のオスカル・スルアガ候補陣営に160万ドルが、それぞれオ社から渡された証拠が整った、と明らかにした。

 一方、ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6日、PPK秘大統領が訪米中の2月25日に、ラ米の人権・民主問題について、ベネスエラは重大な問題を抱えていると発言したのに関連し、PPKは米国に尻尾を振るかわいらしい犬だ、と扱き下ろした。

▼ラ米短信   ◎ボリビア大統領が、ラ米進歩主義政権は復調の兆しと指摘

 エボ・モラレス大統領は3月6日、帰国を前にしてハバナで、5日カラカスで開かれたALBA首脳会議は同盟(ALBA)の最強化を打ち出したと述べ、「右翼政権下に置かれたラ米人民は苦しんでおり、今後の選挙では進歩主義勢力が巻き返して勝つだろう」と指摘した。

 モラレスは、声が枯れたためハバナで治療、いったん5日にカラカスへ行き、再びハバナに戻ってから帰国した。
  

2017年3月6日月曜日

 チャベス4周年忌に米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)首脳会議が在米移民支援を決める。キューバのラウール・カストロ議長はトランプ政権のメキシコ政策を批判

 ラ米の左翼・進歩主義諸国を中心に12カ国で構成される「米州ボリバリアーナ同盟」(ALBA)の第14回首脳会議が3月5日、カラカスのベネスエラ大統領政庁ミラフローレス宮で4時間に亘って開かれた。この日は、故ウーゴ・チャベス前大統領の4周年忌で、首脳たちは会議の後、遺族とともに市内の「山上兵営」のチャベス廟で式典を執り行った。

 首脳会議には、ベネスエラ、ボリビア、ニカラグアの大統領、クーバ議長、セントヴィンセント&グラナディーン、セントクリストファー&ネヴィスの首相、エクアドール、アンティグア&バーブーダ、グレナダ、ドミニカ、セントルシーア、スリナムの外相らが出席。オブザーバーのエル・サルバドール代表も参加した。

 また、ベネスエラ政府から招待された約200人の諸外国市民組織代表や知識人も参加した。ブエノスイアレスに事務局を置く「ALBA5大陸人民組織会議」加盟のチュニジア、ザンビア、米国の代表も出席。サンパウロフォーラム(FSP)代表も参加した。「もう一つのより良い世界を創る」には、政府だけでなく、市民と社会との協働が不可欠という故チャベスらの考えに基づく。

 首脳会議ではニコラース・マドゥーロVEN大統領の司会進行の下、加盟各国代表が演説した。ラウール・カストロ玖国家評議会儀長は、「(LAC=ラ米・カリブ)地域は今、否定的影響を及ぼしている政治的後退によって重大な時期を迎えている」と述べ、暗に亜伯両国など南米諸国での保守・右翼勢力の台頭に警鐘を鳴らした。

 また、ベネスエラで進行している「ボリバリアーナ革命」については、「腐敗した寡頭勢力が牛耳る金融機関、消費生活が習慣づいている国民、新自由主義に基づく(生産経済でない)収益経済を伴う産油国での革命遂行が難しいことを示した」と、率直に指摘した。

 トランプ米政権の対墨政策については、「米国の利己主義的な保護貿易主義は我々の経済に影響を及ぼすだろう。移民迫害・追放も問題だ。メヒコ国境の壁建設問題は兄弟国メヒコだけでなくLAC全体に対する非理性的政策の表れだ。メヒコに連帯する」と表明した。

 ハバナで声帯の治療をしていたボリビアのエボ・モラレス大統領はしゃがれ声で、「チャベスもフィデルもいない今、右翼は何をしようとしてるのか。我々は両人の主義者として一層団結する。チャベスは反帝国主義闘争で無敗のまま逝った」と述べた。

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は、「新自由主義はひところ不可侵だと思われていたが、今や、資本主義勢力間の衝突で危機に陥っている」と前置き。「我々は代替経済モデルを基に、同盟の団結を強化しよう。資本主義の全球化には反対だ。地球を救うために民主と公平の全球化、核兵器無き全球化を」と訴えた。

 会議は「我らのアメリカ(LAC)の団結・尊厳・主権を防衛する」と題した「カラカス宣言」を採択、デルシー・ロドリゲスVEN外相が読み上げた。

 宣言は、新自由主義を「収奪理論」として糾弾。ベネスエラを「LACの自由の発祥地にして、反帝国主義の砦」と礼賛。LAC統合が不可欠として、その中心機構としてのCELAC(LAC諸国共同体)の重要性を指摘した。

 米国が推進する「汎米主義(パナメリカニズム)」については、「LACで失敗したが、引き続き警戒を怠らないよう」警告した。

 宣言はさらに、ALBA銀行の事業として、在米LAC人移民への資金・法的援助開始が決まったことを明らかにした。また、ボリビアのコチャバンバで6月20、21両日開かれる「壁無き世界と世界市民を目指す国際人民会議」への支援を表明した。

 ALBAの事務総長にダビー・チョケウアンカ前ボリビア外相が就任することも確認された。チャベス4周年忌の記念行事は15日まで続き、その一環として「チャベス思想」に関する国際知識人シンポジウムも開かれる。

▼ラ米短信   ◎パナマの港湾建設計画が足踏み

 パナマ運河庁(ACP)は3月3日、同日締め切りの入札に応募社がなかったため、コロサル・オエステ港開発事業の入札を出直し、将来もう一度やりたい、と発表した。

 パナマ運河太平洋側地帯で、コンテナ港設計、建設、一帯の開発、操業の総合的事業を遂行するための入札だった。パナマ国内では、運河運営を担うACPが、それ以外の事業に参入したとして、ACPを厳しく非難する声が高まっている。






 

2017年3月4日土曜日

コロンビアで過去14ヶ月間に人権活動家120人殺さる

 コロンビアのオンブズマン、カルロス・ネグレーは3月3日ボゴタで、2016年元日から17年2月20日までの期間に同国で人権活動家120人が殺害された、と発表した。他に33人が対人テロに遭い、27人が攻撃対象になった。

 16年は、コロンビア政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)との和平交渉の山場だった「和平特別法制」策定で合意した15年9月の後で、和平に現実味が増した時期だった。内戦で利益を得る極右勢力らは和平に反対、和平過程実施に関与する人権活動家をも目の敵にしてきた。

 ネグレーは、昨年末からFARCが全国各地の支配地域を離れ、武装解除のため集結地に移動したことから、FARCの居なくなった地域に極右武装組織(パラミリタレス)など無法集団が入り込み、市民殺害などに関与している、と指摘した。

 同オンブズマンは、和平合意を受けて創設された「特別捜査隊」(UEI)が一連の人権活動家殺害事件を急ぎ捜査し、活動の安全を補償するよう、政府当局に要請した。FARCが支配地域に展開していた期間は、同地域一帯で活動していた人権活動家はFARCによって安全が守られていた。

 FARCは現在、武装解除過程にあり、半年後には解除が終わり、社会復帰過程に入る。「丸腰」になった後、極右勢力に暗殺される可能性を強く懸念している。1980年代後半、FARCの政党「愛国同盟」(UP)の党首2人を含む党員3000人が殺害された事実があるからだ。

 ノーベル平和賞を昨年受章したJMサントス大統領は、威信にかけて極右による殺戮を防止せねばならない立場にある。

▼ラ米短信   ◎ルネ・プレヴァル元ハイチ大統領死去

  ルネ・ウレヴァル(73)が3月3日、心臓発作で死去した。アリスティド政権期の1990~91年首相を務めたが、91年9月末の軍事クーデターで亡命。帰国後、「民主同盟」(ALYANS)を結成、大統領の座を目指し政治運動を展開した。

 その結果、96~2001年、06~11年の2期、政権に就いた。2期とも5年の任期を満了、この国の現代民政史上、快挙とされている。2月7日のJモイーズ同国大統領就任式に出席したのが人前に出た最後だった。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ大統領がペルー大統領に注文

  ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統は3月3日、PPクチンスキ秘大統領が先ごろワシントンでDトランプ米大統領と会談した際、「ラ米は、重大な問題であるベネスエラを除いては、絨毯に寝そべる犬であり、米国には無害だ」と述べたのを「ラ米全体への誹謗で容認できない」として、発言を公式に取り消すよう要求した。だがマドゥーロはクチンスキに、将来、相互に敬意を払いながら会談したいと呼び掛けた。

 一方、タレク・エルアイサミ副大統領は3日、経済・社会政策の成果について報告、昨年の失業率は7・5%だったとし、今年は4・5%に減らしたいと述べた。極貧率は4・4%に落ちたと指摘。1999~2016年の期間に大学進学率が240%増えたと強調した。 
 
 

2017年3月3日金曜日

ブラジル新外相は元ゲリラ、アロイジオ・ヌネス氏

 ブラジルの新外相に3月2日、アロイジオ・ヌネス上院議員(71)が就任した。2月22日に辞任したジョゼ・セラ外相の後任。ヌネスは軍政期の1960年代、都市ゲリラだった。

 ヌネスはサンパウロ大学法学部生だった1963年、政治活動に参加。64年軍事クーデターで軍政が発足すると、非合法だったブラジル共産党(PCB)に入党する。だがやがて、武闘派指導者カルロス・マリゲーラに従って離党、ゲリラ「民族解放行動」(ACN)を結成。最高司令マリゲーラの側近になる。

 ACNは68年8月、列車を襲撃し、給与袋を強奪。資金1億800万新クルゼイロ(当時の通貨単位。約1万1600ドル)を得た。ヌネスは、逃走時に車を運転した。

 同年、指導部の命を受けてフランスに亡命。アルジェリアでのゲリラ訓練実施の交渉などを担う。79年まで巴里に滞在、パリ大学で政治学修士となる。恩赦法が施行された79年に帰国する。

 83年、サンパウロ州会議員となって政界に入り、その後、同州選出連邦下議、同州副知事、連邦政府司法相、連邦上議を歴任。このたび、テメル政権の外相に抜擢された。当初はPMDB(伯民主運動党)党員、後にPSDB(伯社民党)に移り、現在に至る。ヌネスはゲリラ時代を振り返って、「ゲリラ闘争は結果的に失敗したし、民主的ではなかった」と語っている。

 ブラジルのヂウマ・ルセフ前大統領も元ゲリラだった。ウルグアイのホセ・ムヒーカ前大統領も元ゲリラ。ラ米には独特の「ゲリラの政治文化」があり、元ゲリラが要職に就くのは全く珍しいことではない。

 クーバのラウール・カストロ議長は元ゲリラ部隊司令で、1959年のクーバ革命の覇者。ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領も79年のサンディニスタ革命の覇者。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もゲリラ司令だった。

▼ラ米短信   ◎メヒコ・中米外相会議開かる

 中米統合機構(SICA、8カ国)と、SICAオブザーバー国メヒコの外相会議が3月2日、コスタ・リカの首都サンホセ郊外で開かれた。トランプ米政権下で重大問題になっている不法移民問題を中心に協議した。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ政府が米国を糾弾

 ベネスエラ外務省は3月2日、米上院による2月28日の反ベネスエラ決議について、「ベネスエラに対する内政干渉であり、帝国主義の脅し」と指摘、決議を糾弾。「世界の友邦人民はベネスエラの大義を支持している」と述べた。

 ベネスエラ国会の政権党会派も、米上院宛てに抗議し、反ベネスエラ行動を止めるよう要求した。

2017年3月2日木曜日

コロンビア革命軍(FARC)ゲリラの武装解除始まる

 コロンビア最大のゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍、戦士6900人)の武装解除が3月1日始まった。2012年11月ハバナでのコロンビア政府とFARCとの和平交渉開始から4年4カ月、昨年11月の和平最終合意から4カ月目、双方は武装解除段階に漕ぎ着けた。

 FARC要員は2月までに国内26カ所の集結地域に入っていた。国連および国連に委託されたCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の管理下で集結したFARC要員のうち、最初の322人が武装解除に応じている。

 和平交渉を促進しノーベル平和賞を昨年受章したJMサントス大統領は1日、「きょうFARCの合法化過程が始まった。3月1日からまず要員全体の3割を武装解除する。5月1日からは3~4割を、6月1日からは残り3割方の武装を解除する」と明らかにした。全体の武装解除日程は180日。

 解除された武器には通し番号が付けられ、所有していたゲリラの氏名、武器の種類、型が登録される。武装解除がすべて終わったら武器は破壊され溶かされ、その金属で和平記念碑を3つ造る。和平交渉の実った地ハバナ、NY国連本部、コロンビアにそれぞれ設置される。

 政府は現在、エクアドールのキト郊外で2月から、第2のゲリラ組織ELN(民族解放軍)を和平交渉を続けている。

▼ラ米短信   ◎中国がプエルト・リコ投資会合に参加

 米植民地プエルト・リコ(PR)の首都サンフアンで3月1~3日、「中国・PR投資フォーラム」が開かれており、中国人投資家および企業代表150人が参加している。

 中国の石油企業は昨年12月、メヒコでのメヒコ湾深海油田開発入札で米経済水域に近い開発地区の開発権を落札している。この落札やPRでの投資は、中国の南シナ海での軍事的進出を牽制している米国への「逆牽制」と受け止められている。

 PRでは6月11日、住民投票が実施される予定で、PRの「米国併合=51番目の州化」、もしくは「独立」かを決める。「独立」が過半数を占めた場合、「(国防・外交権のない)自由連合国(ELA)」か「完全独立」かを問う新たな住民投票が10月8日実施される。

▼ラ米短信   ◎ボリビア大統領がクーバで診断

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は3月1日ハバナ入りした。喉の炎症の診断のため。エボは数日来、声がかれ、「失声症」とされている。2日後には演説機会があり、ハバナで「声の回復」を図る。

2017年3月1日水曜日

トランプ政権の「もう一つの事実」強弁戦術が米上院に伝染

 事実に対し、非事実を「もう一つの事実」として強弁するトランプ米政権の「ポスト真実」期の詭弁戦術が米議会にも伝染したようだ。米上院は2月28日、ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権に対する内政干渉となる決議案を全会一致で採択した。

 決議は、ベネスエラの「政治、経済、社会、人権状況に深い憂慮」を表明、「政治囚釈放」と「国外からの人道支援物資受け入れ」を求め、併せて、米州諸国機構(OEA)事務総長の対ベネスエラ努力を支持する、などとしている。

 特に問題なの「政治囚」という規定だ。ベネスエラ政府は、2014年2月以降の街頭暴力事件に関与した極右政治家らを刑事犯とし、裁判を経て禁錮刑に処している。米議会は、この点について全く触れず、一方的に「政治囚」と決めつけている。ここに強弁がある。

 この根本的疑問に万人が納得できる理由を示して答えない限り、決議には説得力がなく、「ポスト真実」期の詭弁と受け止められても仕方ないだろう。

 OEA総長ルイス・アルマグロは以前からベネスエラへの「米州民主憲章」適用を主張してきたが、最近また適用のためOEA内で支持集めに動いている。アルマグロは、ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDと連携している。

 米共和党クーバ系の反共右翼マルコ・ルビオ上議もMUDの意向を汲んでいる。ルビオは、昨年大統領候補指名を争ったドナルド・トランプ大統領に接近、米国の対ラ米外交で影響力を行使しようと謀ってきた。上院決議もルビオの工作が効いている。

 一方、ベネスエラ国防相ブラディーミル・パドゥリーノ将軍は27日、カラカス大騒乱事件(1989年)の発生28周年記念日に際し、「当時の選良勢力の大統領カルロス=アンデレス・ペレス(故人)は、国家の武装機関を使って人民を過度に弾圧した」と表明。

 さらに、故ウーゴ・チャベス前大統領期以降、「文民と武人の連携が最高の状態にある」と指摘、その維持を確認した。MUD右翼、米政府などはベネスエラ軍をマドゥーロ政権から引き離し、軍事クーデターで政権を倒す戦略を抱いてきた。これに対し国防相は、あたらめて今回、政権擁護と主権防衛を打ち出した。

▼ラ米短信   ◎中国がコロンビア人麻薬犯を処刑

 コロンビア人麻薬犯イスマエル・アルシニエガス(72)死刑囚が2月28日、処刑された。元ジャーナリストの元死刑囚は2010年、5000ドルの謝礼と引き換えにコカイン4kgを中国に持ち込んで逮捕され、死刑判決を受けていた。

▼ラ米短信   ◎クーバ外相がスペイン訪問へ

 スペインのラ米担当外務次官フェルナンド・ガルシアが2月27日ハバナでブルーノ・ロドリゲス玖外相と会談、同外相を4月訪西に招待した。昨年12月ブリュッセルでロドリゲスと、アルフォンソ・ダスティス西外相が会談、ロドリゲス訪西の後に、マリアーノ・ラホーイ西首相が訪玖するという段取りで原則的合意に達していた。

 一方、ラウール・カストロ議長は27日、モロッコ占領下にある西サハラの独立を主張し戦ってきたサハラウイ・アラブ民主共和国(RASD)の国家樹立宣言41周年に際し、ポリサリオ戦線のブラヒム・グハリ書記長に祝電を送った。この日ハバナでは同戦線書記局のハンバ・サラマ常任委員が、クーバ共産党のサルバドール・バレデス=メサ政治局員と会談した。
  

2017年2月28日火曜日

 メキシコ学生43人失踪事件から29カ月、「かくも長き不在」に家族ら苦悩。来年7月の大統領選に人権派が出馬

 「かくも長き不在」という題名の洋画が半世紀前にあった。メヒコ・ゲレロ州イグアラ市で2014年9月26日、アヨツィナパ農村教員養成学校生43人が軍隊、警察に強制連行されたまま行方不明になってから2月26日で29カ月経った。学生たちの家族や友人は、愛する若者たちの長い不在に悲しみ苦悩し怒っている。

 学生たちの家族や支援団体の数百人は25~26両日、メヒコ市で教員組合、労農組合などと共に第5回全国人民会議(CNP)を開き、メヒコの不公正極まりない政治経済社会状況を根本から変えるための話し合いを繰り広げた。

 また両日、目抜きのレフォルマ大通り、フアレス大通りで抗議行進した。検察庁前では抗議集会を催した。政府は捜査継続を約束しているが、本気で捜査する気配は全くない。

 米州諸国機構(OEA)の機関である米州人権委員会(CIDH)はワシントンの本部で3月15~22日、第161回定例会議を開くが、その折、アヨツィナパ学生失踪問題も取り上げことにしている。メヒコの団体「人権擁護増進委員会」、「反犯罪連合」などが、メヒコの人権状況を報告し、問題提起する。

 一方、CIDH前事務局長エミリオ・アルバレス=イカサ政治学博士(51)は26日、「アオラ(今)」という政治運動を基盤に来年7月の大統領選挙に独立候補として出馬する意志を表明した。人権問題専門家の出馬だけに関心を集めている。

 PRI、PAN、PRDなど既存政党に帰属感を持てない無党派層、反政党派層、恒常的棄権主義層などを開発して支持を広げる方針。まずは出馬申請手続きに必要な有権者8万人の署名を集めねばならない。

 既存政党からは、同3党とMORENA(国民刷新運動)の計4人の候補が出馬する。メヒコには決選投票制度がないため、泡沫候補でない候補者が多ければ多いほど当選ラインが下がる。このため独立候補でも、知名度が高ければ当選可能性が出てくる。

 この日、国営石油PEMEXは、今年の原油生産が日量194万4000バレルになると予測した。昨年は日量200万バレルの大台保っていた。 
  

2017年2月27日月曜日

ベネズエラのエルアイサミ副大統領がトランプ政権に反撃

 ベネスエラのタレク・エルアイサミ執権副大統領は2月26日、トランプ米政権が先ごろ同副大統領を「麻薬取引首領」名簿に加え、「在米資産を凍結」したことについて、「米政府は証拠が全くないのに私を攻撃している。私は一度も訪米したことはなく、米査証を取得したこともない。ましてや資産など保有していない。一方的な虚偽の告発にすぎない」と反撃した。

 エルアイサミは、民放TVテレベンの日曜ニュース番組「ホセ=ビセンテ・オイ」に出演、キャスターのホセ=ビセンテ・ランヘール(元副大統領・外相・国防相)によるインタビューに答えた。

 麻薬関連嫌疑については、「ベネスエラ政府は以前から、米政府の麻薬捜査局(DEA)は麻薬問題そのものだと告発、(DEAを追放したが、)DEAは報復として私を一方的に追及しようとしている」と指摘。「ベネスエラは主要な麻薬取締国として国連から認められている」と強調した。

 副大統領はまた、「米政府のやり方は専横的、違法、かつ内政干渉だ。べネスエラ政府の高官を倫理的に傷つけようと狙っている。これにベネスエラの野党勢力が連携している」と非難。「ベネスエラは威厳をもって弁明せねばならない」と述べた。

 先日NYT紙の一ページ全部を買い取って自身とベネスエラの立場を説いたことについて、「攻撃を受けた副大統領として当然為すべきことをした。あの記事は米社会を震撼させた」と評価。だが、「米政府から侮辱されるのは、ある意味で特権だ。なぜなら私が(米国が蛇蝎のごとく嫌う)チャベス主義者の革命家だからだ」と付け加えた。

 さらに、トランプ政権による攻撃は、マドゥーロ政権を「米国の安保にとって脅威」と規定したオバーマ前政権の反ベネスエラ政策の流れを汲む、と指摘。「(米議会などで反ベネスエラのロビー活動をしている)マイアミマフィアはメディアと連携して、ベネスエラへの憎悪を醸そうとしてきた」と非難した。

 続けて、米TV放送CNNの西語版の有線放送をこのほど禁止したことについて、「暴力とテロリズムをベネスエラ社会に誘発させようと謀っていた放送を禁止したのは的確な措置だった」と強調した。

 また、「米政府は(内外メディアを動員して)、<ベネスエラは違法国家>だと偽りの印象を内外世論に広め、それによってベネスエラへの介入を正当化しようと画策している」と分析した。

▼ラ米短信   ◎チレで3月、アジア太平洋会議

 チレで3月14~15両日、アジア太平洋「統合計画高官対話」会合が開かれる。TPP加盟国と、太平洋同盟(AP、チレ、ペルー、コロンビア、メヒコ)が参加する。

 一方、亜智両国財務相は23日サンティゴで会談。メルコスール(南部共同市場)とAPの統合を促進することで合意した。メルコスールには亜国、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、ベネスエラ(資格停止中)が加盟。ボリビアが加盟手続き中。  
 

 

2017年2月25日土曜日

ペルーのクチンスキ大統領がトランプ大統領と会談

 ペルーのペドロ=パブロ・クチンスキ(PPK)大統領は2月24日ホワイトハウスで、ドナルド・トランプ米大統領と会談、トランプと直接会談した最初のラ米首脳となった。PPKはかつて世界銀行幹部としてワシントンに駐在。英語は西語よりも流暢に話すとされる。この英語能力が買われ、逸早く訪米に招かれた。

 会談の冒頭、トランプは記者団を前に、「PPKは米国製軍用車を買うと言っている」と披露した。会談では、この軍用装備購入、在米ペルー人移民、麻薬取引取締、ベネスエラ問題などが話し合われた。トランプは、ペルーの麻薬取締政策への協力を約束した。移民問題についてPPKは、トランプの移民政策を批判せずに、在米ペルー人移民を擁護した。

 米加州には、伯建設大手オデブレヒト社から2000万ドルを収賄した容疑で国際手配されているアレハンドロ・トレード元秘大統領が隠れ住んでいる。PPKはトレードの身柄引渡への協力をトランプに求めたもよう。

 双方はまた、来年ペルーで開かれる第8回米州首脳会議についても話し合い、PPKはトランプに出席するよう招待した。

 トランプは冒頭で、「我々はベネスエラとの問題を抱えているが、極めて悪い状態だ」とも述べた。両首脳が会談でベネスエラ問題を取り上げたことから、ベネスエラ政府が内政干渉として反発するのは必至だ。

 トランプはPPKに次いで、亜国、コロンビア、パナマの大統領をワシントンに招いている。一月末に真っ先に訪米することになっていたメヒコ大統領は、関係悪化により訪米を中止。このため訪米がいつになるのかわからない。

▼ラ米短信   ◎米政府が壁建設入札日程を発表

 米国境管理当局は2月24日、米墨国境の壁建設計画工事の入札案内を3月6日、入札期限3月10日、入札会社絞り込み20日、絞り込まれた複数社の再入札24日という日程を明らかにした。4月半ばまでに落札社を決め、工事開始に向かう見通し。イスラエルの建設業者も入札に関心を示している。

▼ラ米短信   ◎OEA総長がベネスエラに選挙実施呼び掛け

 米州諸国機構(OEA/OAS)のルイス・アルマグロ事務総長は2月24日、ベネスエラに総選挙を即刻実施すべきだと呼び掛けた。事態が進展しない場合、OEA民主憲章20条適用を提案するとも述べた。

 20条は、「民主体制に重大な影響を及ぼす憲政変更があった場合、OEA加盟国もしくは事務総長は常設会議を招集することができる」と規定。スペイン滞在中のMマクリ亜国大統領は、アルマグロ発言に賛意を表明した。

 一方、ベネスエラのONG「ベネスエラ反腐敗」は24日、ミランダ州知事エンリケ・カプリーレスが伯オデブレヒト社から300万ドルをもらい、2013年の大統領選挙の資金に充てた可能性があるとして、検察庁に告訴した。

 同知事は事実無根と反撃している。カプリーレスは過去2度、野党連合の大統領候補となったが、2011年に故ウーゴ・チャベス前大統領に、13年ニコラース・マドゥーロ現大統領に、それぞれ敗れている。

 国連は24日、ベネスエラが分担金未払いのため、投票資格を失ったと公表した。未払い分は2400万ドルという。他に南太平洋とアフリカの計6カ国も同様の理由で投票権を失った。支払えば、投票権は復活する。

 
 
 

2017年2月24日金曜日

米メキシコ閣僚会議が中米開発協力で合意

 メヒコ外務省で2月23日、墨米閣僚会議が実施され、両国外交は、これまでの「対立」から、ひとまず「対話」に向かうことになった。だがトランプ大統領の出方次第では、関係が再び険悪化する。メヒコ政府は今や、貿易、移民は安全保障問題そのものだと理解している。

 メヒコ側はルイス・ビデガライ外相、ミゲル・オソリオ内相、ホセ・メアデ財務相、米側はレックス・ティラーソン国務長官、ジョン・ケリー国土安保長官が出席、会議は2時間に及んだ。

 ビデガライ外相は会議で、トランプ政権が「メヒコ経由で不法入国した中米人らもメヒコに送還する」と表明しているのに対し、「メヒコ人以外を受け入れるいわれはない」と否定。会議後の共同記者会見で、「墨米両国間には違いがある。我々はメヒコの利益のために対話を通じて合意を探る」と述べた。

 外相はまた、「墨米両国は、中米北部三角形(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)、コロンビア、カナダなどを加えた会合で移民問題を考え、(経済難民の)出国因を減らす方策を練る会議開催で合意した。我々は共同責任で中米開発に当たる」と明らかにした。問題の力点がメヒコから中米に移った感がある。

 ケリー安保長官は、「不法移民の大量送還はない。人権を重視する。軍の出動はない」と強調した。だがワシントンではトランプ大統領が、「犯罪者追放のための軍事作戦だ」と発言、物議を醸している。

 閣僚会議では、北米自由貿易条約(TLCAN=テエレカン、英語でNAFTA=協定)見直しや、国境の壁建設問題の話し合いはなかった、という。

 ケリー長官は、米南方軍の前司令官としてラ米情勢を鳥瞰した経験を踏まえ、中米の犯罪状況や墨ゲレロ州のゲリラの存在などに安保上の観点から関心を抱いており、その分野の発言もあったとされる。
 
 両長官は、大統領公邸ロス・ピノスで1時間弱、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領を表敬した。大統領は、「常に相互の主権を尊重しつつ、対話で解決を探るべきだ」と述べた。

 メヒコの新聞論調には、「両長官の来訪で、トランプ政権の対墨態度は、喧嘩腰から思慮深差に変わったが、EPNの弱腰は不変」という指摘があった。

▼ラ米短信  ◎日本がクーバのインフラ整備に協力

 日玖は2月23日ハバナで、建設、輸送、観光面のインフラ整備で協力する議定書に調印した。市内にあるナシオナルホテルでは同日、日本企業30社が参加して「日玖インフラ会議」が開かれた。

2017年2月23日木曜日

キューバ政府がOEA(OAS)事務総長の入国を拒否

 米議員訪玖団は2月21日、ラウール・カストロ国家評議会議長ら玖政府中枢と「米玖双方の関心事」について話し合い、22日ハバナで記者会見した。団長のパトゥリック・ヒーリー民主党上議は、「米連邦議会の多数派は対玖関係強化を求めている。将来の世代のためにも両国関係を改善していかねばならない」と述べた。

 また、「経済封鎖と米国人対玖渡航禁止令が解除されるのは疑いないが、それがいつになるか、予測するのは難しい」と語った。団員のジェイムス・マムガヴァン民主党下議は、「民主・共和両党は共に対玖関係強化の意思を共有している。問題は、共和党執行部が対玖法制審議を許可しないことだ」と指摘した。

 一方、玖政府は22日、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)の入国を拒否した。同総長は、「オスワルド・パジャー賞」授賞式に出席しようとしていた。アルマグロはラ米の左翼・進歩主義政権を揺さぶる右翼思想の持ち主で、かつての上司ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領は去年、アルマグロに「絶縁宣言」を突き付けた。

 玖政府は21日には、同じ授賞式に参加しようとしていたフェリーペ・カルデロン前墨大統領、マリアーナ・エイルウィン元智教育相の入国を拒否している。玖外務省は22日、アルマグロらへの入国拒否に関し声明を発表した。要旨は次の通り。

 不法な小集団が主催する「賞」は、ラ米の左翼・進歩主義合法政権に敵対する極右の「汎米民主財団」と結託している。同財団は(2015年4月パナマ開催の)第7回米州首脳会議のロビーで結成された。

 アルマグロは、そんな「賞」を受章するため入国しようとしていた。玖を不安定化させ玖の国際関係を損なわるため、ハバナで公然と挑発行動を展開しようとしていた。

 アルマグロおよび、「スペイン・ラスアメリカス民主計画」(IDEA)傘下の右翼勢力は近年、ベネスエラをはじめとするラ米左翼・進歩主義政権を攻撃してきた。

 彼らは「民主・共同体センター」、「ラ米開発研究・工作所」(CADAL)、「米州民主研究所」(CIAのアルベルト・モンタネル玖系米人主宰)などと連携。これらの組織は2015年から、米「国家民主財団」(NED)と協力し、反玖地下活動資金を得ていた。

 玖政府は主権防衛のため、こうした活動に関係する人物の入国を拒否した。アルマグロとOEAは反玖言動をとってきた。アルマグロはOEA加盟国の同意なしに、勝手にベネスエラ、ボリビア、エクアドールを攻撃してきた。

 ラ米・カリブ統合に反対する帝国主義と寡頭勢力の行動や、新自由主義推進行動がこのところ倍加している。OEAは黙して、共犯状態にある。

 1962年2月、フィデル・カストロ首相(当時)は(対玖陰謀を前に)第2次ハバナ宣言を発し、OEAを脱退した。我々は、歴史の教訓を忘れない。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ副大統領がNYT紙で反撃

 ベネスエラのタレク・エルアイサミ執権副大統領は2月22日、NYT紙上に意見記事を掲げ、同副大統領を「麻薬取引首領」と決めつけ、在米資産凍結に踏み切った米財務長官に反撃した。以下は要旨。

 あなた(財務長官)は、VEN・米国関係を相互の承認と尊重に基づく関係に改善しようとする努力を妨げる在米利益集団に騙されている。彼らは証拠もなく虚偽によって「犯罪」をでっちあげようとしている。

 私が内相だった時期を含めベネスエラ政府は、麻薬取引業者取締で多大な成果を挙げ、身柄を米国やコロンビアに引き渡した。米政府はいったい米国内で何人、大物麻薬業者を摘発してきたのか?

 米国は麻薬取締の国際条約に加盟せず、自国法をベネスエラなど国外に押し付けようとしている。

▼ラ米短信  ◎米国務長官と国土安保長官がメヒコ入り

 レックス・ティラーソン国務長官とジョン・ケリー国安長官は2月22日、メヒコ市に到着。同夜、駐墨大使邸で、ルイス・ビデガライ墨外相、国防長官、海軍長官と会食した。

 両長官は23日、エンリケ・ペニャ=ニエト大統領と、両国関係について話し合う。ビデガライ外相は、国安省が21日明らかにした不法移民取締方針について、「一方的措置は受け入れられない」と表明している。

 一方、ケリー長官はメヒコ入りに先立ち22日、グアテマラ市でジミー・モラレスG国大統領と移民問題で会談、グアテマラ人移民の大量送還はないと伝えたした。

 在米G国移民は200万人で、本国への年間仕送りは72億ドルに上る。強制送還の対象となる前歴者は4500人という。

▼ラ米短信   ★エクアドール大統領選挙は決選へ

 エクアドール国家選挙理事会(CNE)は2月22日、4月2日に決選を実施すると発表した。19日の大統領選挙(第1回投票)では当選者がなく、得票率1位の政権党候補レニーン・モレーノ元副大統領(39・3%)と、2位の保守・右翼候補ギジェルモ・ラッソ(28・1%)が決選に進出する。

 モレーノは、わずか0・7ポイント足らずで40%に達せず、当選を逃した。ラファエル・コレア大統領は、決選で野党(ラッソ)が勝てば、私は政治の第一線に復帰するに吝(やぶさ)かでない、と述べた。コレアはかつて留学し、夫人の祖国でもあるベルギーで第2の人生を送ることにしている。






   

 メキシコとカナダが米含む「3国間NAFTA見直し交渉」促進で一致。米は壁の優先的建設地を公表

 メヒコとカナダは2月21日トロントで経済相・外相会議を開き、北米自由貿易条約(TLCAN、英語では協定=NAFTA)の見直し交渉は加盟3国間でするのが望ましいという点で一致した。

 この日、メヒコ国会は次期駐米大使にヘロニモ・グティエレスを決めた。政府は、米側が通商、移民規制、国境壁建設などで押しまくってきた場合、国境地帯を含む両国間の麻薬取引取締り、不法越境者規制などで協力しない方針を選択肢に加えている。

 米国土安保省のジョン・ケリー長官は21日、壁建設を米テキサス州エルパソ・墨チウアウア州フアレス市、アリゾナ州トゥーソン・ソノラ州ノガレス、加州エルセントロ・下加州メヒカリの3カ所の間の国境線で優先的に建設する方針を明らかにした。

 国境最西端の墨ティフアーナ市では21日、米側から送還されたばかりの30代のメヒコ人男性が橋から飛び降りて自殺した。

 一方、シカゴの墨系ベニート・フアレス高校で21日、メヒコの政治家AMLO(アムロ)が講演、「米国第一ではない。墨米間に正義と友情の大地を築くのが先だ」と強調。「トランプがメヒコとメヒコ人に対して発したデマゴギーと新ファシズム的措置は、かつてヒトラーがユダヤ人に対してやったのと似ている」と厳しく批判した。AMLOは次期大統領の有力候補。

▼ラ米短信   ◎クーバ議長が米議員らと会談

 ラウール・カストロ玖国家評議会議長は2月21日ハバナで、パトゥリック・リーヒー民主党上院議員を団長とする米議員団6人と会談した。リーヒーはバラク・オバーマ前大統領と組んで米玖国交正常化を推進した人物。「双方の関心事を話し合った」という。

 クーバ港湾当局は20日ハバナで、ミシシッピ州の2港と協力議定書に調印した。同様に調印した米国の港は計7港となった。

 一方、玖政府は21日、ハバナで22日催される反体制派の故オスワルド・パジャーを記念する賞の贈呈式に出席を予定していたフェリーペ・カルデロン前墨大統領、マリアーナ・エイルウィン元智教育相の入国を認めなかった。マリアーナは故パトゥリシオ・エイルウィン元大統領の娘。

▼ラ米短信   ◎ベネスエラ政府が政権党再編成へ

 ニコラース・マドゥーロ大統領は2月20日、この日から4月19日までの2カ月間にベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)を「戦略的、政治的、組織的に再編成する」と発表した。今年半ばには州知事・州会議員選挙があり、これに備えた措置でもある。

 大統領は同日、スペインのJL・Rサパテロ前首相と会談した。サパテロは、南米諸国連合(ウナスール)から依頼された特使として、ベネスエラ政府と野党連合MUDの対話を仲介している。マドゥーロは21日には、ローマ法王特使と会談した。

2017年2月21日火曜日

一発当選か決選か、エクアドル大統領選結果発表は3日延期

 エクアドール(赤道国)で2月19日実施された大統領選挙は20日、国家選挙理事会(CNE、中央選管)が最終結果公表を3日間遅らせると発表、混迷の度を深めている。

 焦点は、この第1回投票で過半数得票者がいなかったため、次の当選条件である「得票率40%以上、2位に10ポイント差」を満たす候補がいるか否にある。

 政権党「パイース同盟」から出馬している最有力候補レニーン・モレーノ元副大統領(63)は開票率88・77%段階で得票率が39・13%。2位の「変化のための同盟」候補で銀行畑出身のギジェルモ・ラッソ(61)の28・31%を10p以上回る。だが得票率が40%に達していない。

 ラファエル・コレア現政権にとって一発当選は至上命令。というのも残る6候補のうち、泡沫2候補を除く4候補は、得票率第3位(16・36%)に着けた「キリスト教社会党」のシンシア・ビテリ弁護士(51)、5位の「赤道国の力」アブダラー・ブカラム元国会議員(34歳、4・79%、同名の元大統領の息子)、6位の「社会協約」イバン・エスピンエル医師(32、3・2%)と3人までが決選でラッソ支持に回る公算が大きいからだ。ビテリは既にラッソ支持を公言している。

 4位になった「変化のための合意」のフランシスコ・モンカーヨ元キト市長(76歳、元陸軍将軍)だけは「穏健左翼」を自認、決選で誰も支持しないと明言している。

 決選は4月2日実施されるが、そうなればラッソに勝機は十分ある。一昨年12月、亜国大統領選挙決選で第1回投票2位のマウリシオ・マクリ(現大統領)が逆転勝利。昨年6月のペルー決選でも、同様にPPクチンスキ(現大統領)がケイコ・フジモリに逆転勝利している。

 ラッソは新自由主義経済路線の復活を狙い、ロンドンの赤大使館で亡命生活を送っているジュリアン・アサンジ(ウィキリークス創設者)の亡命資格を剥奪することも示唆している。ラッソが当選すれば、コレア大統領の下で10年間、左翼進歩主義路線を歩んできた赤道国は一気に右傾化する。今選挙がラ米内外で注目されている所以だ。

 3日間の開票作業と「不正票」5・49%の一部数え直しによって、モレーノが当選条件に達するか否か。赤全土で期待と不安間が渦巻いている。

 南米諸国連合(ウナスール)監視団のホセ・ムヒーカ代表(前ウルグアイ大統領)はグアヤキル市で20日、「忍耐、平和、希望」を選挙民に呼び掛けた。

2017年2月20日月曜日

マドゥーロ・ベネズエラ大統領がトランプに「目を開け」と忠告

 ベネスエラのニコラース・マドゥ-ロ大統領は2月19日、定例のテレビ番組を通じ、ドナルド・トランプ米大統領に対し、「目を開き、ブッシュ、オバーマ両政権が失敗したベネスエラ政権転覆政策に取り込まれないように」と忠告した。

 また、「あなた(トランプ)を反ベネスエラ政策に巻き込むため、巨額のロビー工作費が使われてい」と指摘。ベネスエラの保守・右翼野党連合MUD幹部、MUDが圧倒的多数派の国会の議長、これと結びつく在米右翼ロビーストらが動いていると述べた。

 マドゥーロ大統領はその上で、トランプに「関係正常化のため協働しよう」と呼びかけた。両国はチャベス前政権期から相互に大使を置いておらず、臨時代理大使級外交が続いている。

 ベネスエラ大統領の今回の発言は、米政府がタレク・エルアイサミVEN執権副大統領を「麻薬取引首領」名簿に加え、同氏の在米資産凍結などの措置を講じたことや、刑事囚として過去3年間服役中のベネスエラの極右政治家らの釈放を求めるという内政干渉に出たのに対する回答としてだ。

 マドゥーロは、この定例テレビ番組でエルアイサミ副大統領を横に座らせ、「彼が内相だった時、麻薬業者102人を逮捕し、うち21人の身柄を米国に引き渡した」と述べ、功績を讃えた。

 大統領はさらに、エルアイサミに対し、「自身と家族の名誉を守るため、誹謗者をベネスエラと、米国を含む外国の法廷で早急に訴えるべきだ」と伝え、提訴を許可した。

 一方、著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘール(元副大統領)も自身の19日の定例テレビ報道番組で、エルアイサミ攻撃に触れ、一連のベネスエラ体制を貶めるための策謀の一環、と批判した。

▼ラ米短信   ◎エクアドール大統領選挙の結果判明遅れる

 2月19日実施されたエクアドール(赤道国)大統領選挙は、JST20日夜現在、政権党「パイース同盟」候補レニーン・モレーノが39%、2位の銀行家ギジェルモ・ラッソが29%。過半数得票者がいない場合、1位得票者が40%を超え、2位に10ポイント差をつければ当選する。モレーノがこの条件を満たしているかどうかが判明していない。

 この条件を満たさない場合、モレーノとラッソは4月2日の決選投票に臨むこことになる。モレーノはコレア現政権で副大統領を務めたことがあり、穏健な改革路線。ラッソはこのこの国の伝統的な富裕層で、政治的には右翼で、新自由主義経済路線復活を目指している。
 
  

2017年2月19日日曜日

 ガイアナ開催のカリコム首脳会議が「単一市場・経済」設立で合意。ハバナで3月、キューバと関税自由化決定へ

 カリブ共同体(カリコム)は2月16~17両日、ガイアナの首都ジョージタウンで第28回首脳会議を開催。デイヴィド・グランジャー同国大統領を議長に諸問題を討議し、「カリコム単一市場・経済」(CSME)の早期設立で合意した。

 今会議には、2月7日就任したばかりのアイチ(ハイチ)のジョヴネル・モイーズ大統領が初出席、外交デビューした。首脳は他に6カ国首相が出席、あとは外相らが出席した。

 グランジャー議長は、「加盟15カ国・地域の総面積は240万km2だが、相互に隔たっていて交通が不便であり、天変地異が頻繁に起き、インフラ整備もままならない。米英をはじめとする対外関係も堅固ではない」と状況を総括。観光立国だけでは経済が立ち行かないことや、カリブ地域の団結強化の必要性を強調した。

 ハバナで3月、カリコム・クーバ関税協定をめぐる外相会議が開かれ、クーバがカリコム産品349品目、カリコムが玖86品目の関税をそれぞれ自由化することも明らかにされた。

 グレナダのケイス・ミチェル首相が7月から次期議長になることも決まった。

▼ラ米短信  ◎米政府がベネスエラに内政干渉強化

 米国務省は2月18日、ベネスエラ政府に対し、野党極右指導者レオポルド・ロペス受刑囚の釈放を求めた。共和党右翼でフロリダ州選出の玖系上院議員マルコ・ルビオの進言などを受け、ドナルド・トランプ大統領はベネスエラ締め付け政策を決めている。

 ロペスは2014年2月にカラカスなどで始まったグアリンバ(街頭暴力)を教唆した罪などで、禁錮14年の実刑に服役中。米政府、ロペス支援者、多くのメディアはロペスを「良心の囚人」、「政治囚」などと呼んでいる。だが、刑事犯罪関与については全く触れていない。このため「虚偽ニュース」の様相を呈している。

 カラカスでは18日、街頭暴力で殺された43人の遺族や800人の負傷者の家族らと支援者多数が行進。代表者は、3年前の暴力事件に関与したロペスの実刑14年は軽すぎると抗議した。ニコラース・マドゥーロ大統領は犠牲者遺族らの立場を支持、間接的ながら米国務省への意思表示をした。この日、ロペス支援者も別途、釈放要求行動を展開した。

 一方、タレク・エルアイサミ副大統領を「ヒズボラの代理人」と伝える電脳メディアがある。これも確固たる証拠を明確に提示していない。

 「ポスト真実」期と呼ばれる現代、反真実、フェイクニュースが飛び交っている。基盤には反知性がある。マスメディアの保守化、政府付随化などが「反真実」状況を促進している。

▼ラ米短信  ◎エクアドール大統領選挙始まる

 エクアドール(赤道国)で2月19日、正副大統領、国会議員137人、アンデス議会議員5人を選ぶ総選挙が始まった。結果はJST(日本時間)20日昼前に判明する見通し。 

 

米メキシコ国境で「トランプの壁」に「人間の壁」で対抗

 墨米国境3200kmの中間に位置する墨チウアウア州国境のフアレス市と対岸の米テキサス州エルパソ市の間を流れる国境河川ブラボ川の墨側堰堤で2月17日、「人間の壁-両国の懸け橋」と題した平和行事が展開された。

 墨全政党が呼び掛けたもので、民主革命党(PRD)元党首クアウテモキウ・カルデナス元メヒコ市長、チウアウア州のハビエル・コラル知事、フアレスのアルマード・カバル市長、エルパソのオスカル・リーサー市長をはじめ2000人が参加した。

 国境の壁建設を決めたドナルド・トランプ米大統領への異議を唱える抗議行動で、メヒコ国歌を歌い、対岸の米側に向かって友情と連帯のメンサヘ(メッセージ)を送った。

 これに先立ち市内では、「国益防衛フォーラム」が開かれた。カルデナスは「両国の友情はメヒコ人の生活向上につながる。双方は長い歴史を経つつ共存してきた」と述べた。コラル知事は、「異なる声を一つにして友情を訴えよう。異なる手を一つにして、二国社会という在り方を続けたい我々の望みを確認し合おう」と語った。リーサー市長も「両都市は一つの同じ都市だ」と強調した。

 メヒコでは来年7月、大統領選挙が実施されるが、PRDから分派したMORENA(国民刷新運動)党首、アンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)が現時点での支持率28%で有力。AMLOは2006年の選挙で事実上勝ちながら、開票操作で勝利を奪われた苦い経験の持ち主。

 12年の前回は、金権候補エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)現大統領に敗れた。AMLOに次ぐのは、EPNの政権党PRI(制度的革命党)のオソリオ内相で17%。3番手は、06年に当選したとされたPAN(国民行動党)のフェリーペ・カルデロン大統領の妻マルガリータ・サバーラで5%。AMLOにとっては、宿敵の妻だ。

 AMLOは、穏健左翼で改革派だが、メヒコをいじめているトランプに対抗できる「民族主義的アンチテーゼ」として、人気が急浮上している。これに伴い、AMLOは財界と会合するなど、革新色を薄めようと努めている。

 一方、ユカタン州都メリダで18日開かれた第16回墨玖友好国会議員同盟会合は、トランプの排外主義を「メヒコ人の尊厳を侵す」と捉え、移民排除や壁建設政策と併せて糾弾。話し合いによる問題解決を呼び掛けた。

 双方はまた、ラ米団結強化でも一致した。

▼ラ米短信   ◎オデブレヒト事件捜査で11カ国が協力

 ブラジル最大手の建設会社オデブレヒトの絡む巨額贈収賄事件に関連する11カ国の検察は2月16日、ブラジリアで検事総長級会合を開き、捜査協力協定を結んだ。伯亜智秘コロンビア赤ベネスエラ墨巴RD葡の各国。
 

2017年2月17日金曜日

 ベネズエラ大統領が「悪宣伝に対抗する」ため「強力なディジタル伝達基盤」構築を命ず

 国連難民高等弁務官事務所は2月16日ベネスエラ政府に対し、コロンビア人難民を収容するなどの人道的支援を評価、謝意を伝えた。先週から難民約400人がベネスエラ西部のスリア州などコロンビア国境地帯の地域に流入している。

 コロンビアでは政府とゲリラ組織FARCとの和平過程が進み、FARCは全国26カ所の集結地域に移動した。これにより、力関係に空白の生じたノルテ・デ・サンタンデル州カタトゥンボ地方に、殺戮やコカイン取引をする極右準軍部隊が流入。恐怖にかられた住民はベネスエラに越境した。コロンビア国防相は13日から同地方に兵士と武装警官隊を増派、準軍部隊を追跡している。

 エクアドールのキト郊外ではコロンビア政府と、FARCに次ぐもう一つのゲリラ組織ELNが和平交渉をしている。双方は16日、コロンビア社会代表の和平交渉参加、および内戦の「人道的な停戦」に関し、それぞれ小委員会を設け話し合うことで合意した。和平交渉で得られた初の合意である。

 一方、NYの国連本部にある非同盟諸国運動(MNOAL)事務局は16日、トランプ米政権によるタレク・エルアイサミVEN副大統領への追及措置を「一方的かつ弾圧的」と非難し、ベネスエラ政府への連帯を表明した。現在のMNOAL議長は、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領。

 マドゥーロ大統領は16日、「裏切り者は皆、米政府の庇護下に逃げ去る」と指摘。国際メディアによる意図的誤報(虚偽報道)に対抗し、「ベネスエラの真の姿を伝え発信するため」として、「強力なディジタル伝達基盤」を創るよう指示した。

 大統領はまた、トランプに同調し、暴動教唆罪などで服役中のベネスエラ極右政治家の釈放を呼び掛けたスペイン保守・右翼政権のマリアーノ・ラホーイ首相を、「ならず者だ。犯罪者と殺人者の保護者」と扱き下ろした。これに対しスペイン外務省は17日、駐西VEN・大使を呼び、真意を質した。

▼ラ米短信   ◎ハバナにガルシア=マルケス像登場

 ハバナ旧市街の芸術・文学学校の庭に2月16日、コロンビアのノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケス(GGM、1927~2014)の銅像除幕式が催された。ハバナ史家エウセビオ・レアル、駐玖コロンビア大使らが出席した。

 コロンビアの彫刻家ホセ・ビージャ=ソベロンの作で、高さは生前のGGMより背の高い180cm。昨年、若き日のGGMが活動したコロンビアのバランキージャ市に建てられた銅像の複製だ。

 作家の出世作『百年の孤独(孤独の百年)』の執筆50周年とノーベル文学賞受賞35周年および、作家の生誕90周年に因んで設置された。クーバはGGMがクーバ通信社プレンサ・ラティーナの創設期に記者として働き、故フィデル・カストロ議長と親交を結び、さらに映画学校を設立し指導した縁の深い国だ。GGMは「クーバの養子」と呼ばれることもある。

 彫刻家ビージャ=ソベロンは、ジョン・レノン、アントニオ・ガデス(西人フランメンコ舞踊家)、マザー・テレサらの彫像の政策者として知られている。  

 

2017年2月16日木曜日

「メキシコの次はベネズエラか」。トランプの内政干渉発言にベネズエラ外相が激しく反応、緊張走る

 ベネスエラの国家電気通信委員会(CONATEL=コナテル)は2月15日、米CNNテレビ西語放送のベネスエラでの有線放送を禁止した。「ベネスエラの民主と主権を直接的に侵した」のが理由だ。

 同放送は6日、ベネスエラの在イラク大使館がベネスエラ旅券をテロリズムに関係する可能性のあるアラブ人に売却しており、タレク・エルアイサミ副大統領が関与している、と伝えた。これが原因だ。報道は、ミサエル・ロペスという人物の証言を基にしている。

 クーバ系右翼のマルコ・ルビオ共和党上院議員(フロリダ州選出)は真っ先にCNN報道を取り上げ、これを受けて米政府は13日、エルアイサミVEN副大統領を「首領級麻薬取引者」名簿に加え、在米資産凍結処分とした。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は15日、「CNNは偽りに基づくメディア運動を展開し、VEN野党および国際右翼勢力のクーデター意図に貢献している」と、CNNを激しく糾弾した。

 外相は、「CNNが証言者としたロペスなる人物は野党勢力の回し者であり、イラク駐在VEN大使の名をかたり現金詐取を謀り、同大使館女性職員に性的脅しをかけ、これらの犯罪行為で裁かれようとしている」と指摘した。

 デルシーROD外相はさらに、「公然と反駁したのは、このような米国からの工作は、人民にとって不吉な戦争宣伝行為だからだ」と説明した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、副大統領に対する米政府の措置を「前代未聞で侮辱的だ」と批判。デルシー外相が米大使館の臨時代理大使に文書で抗議した。

 マドゥーロ大統領は15日、エルアイサミを、犯罪撲滅と治安確保を目指す「社会正義大任務」計画の首席調整官に任命した。政府の「安全な祖国」政策の一環で、やはり犯罪対策のための「ベネスエラ生命尊重任務」と並行して進められる。

 一方、ワシントンではルビオ議員が15日、ベネスエラ野党連合MUDの一翼を担う極右政党の党首で破壊活動教唆罪などで服役中のレオポルド・ロペスの妻をドナルド・トランプ大統領とペンス副大統領に引き会わせた。これを受けてトランプは、べネスエラ政府にロペス釈放を要求した。

 これに対し、デルシー外相は、同日「内政干渉だ」として一蹴。トランプを「ベネスエラ野党と、マイアミマフィアおよびロビーストに唆(そそのか)されて共犯者になった」と扱き下ろした。ルビオは15日、トランプとホワイトハウスで夕食を共にした。

 マドゥーロ大統領はこれまで、あからさまなトランプ批判は避けつつ「良好な関係を築きたい」と呼び掛け、「ベネスエラに対するブッシュやオバマの過ちを繰り返さないよう」柔らかに警告していた。

 だが反カストロ派でもある右翼ルビオの介在で、メヒコに向けられていたトランプのラ米諸国への牙がベネスエラに向かう可能性が出てきたと受け止められる今、マドゥーロ政権は事態を熟考している。

 トランプはメヒコについては独自の意見を持っているようだが、ベネスエラやクーバについては定見がなく、ルビオのような右翼世論代表の言いなりになる恐れが出ており、当時国やラ米知識層は懸念している。

▼ラ米短信   ◎エクアドール国会議長が「爆殺テロ」免れる

 赤道国のガブリエーラ・リバデネイラ国会議長は2月15日、事務所に届いた封書に爆発物が入っていたと明らかにし、殺害される可能性のあったテロを免れた、と述べた。爆発物は爆発しなかったという。

 この国では19日、正副大統領、国会議員137人、アンデス議会議員5人を選ぶ総選挙が実施され、国中が騒然とした空気に包まれている。政権党「パイース同盟」所属のリバデネイラも再選をかけて出馬している。
 

2017年2月15日水曜日

 ラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)調印から半世紀。記念式典でメキシコ大統領はトランプ米政権を厳しく批判、ラ米・カリブ諸国の連帯に感謝する

 ラ米核兵器禁止条約(通称トラテロルコ条約)が1967年2月14日、メヒコ外務省(当時の通称トラテロルコ)で調印されてから14日で50周年となった。今はフアレス大通りにある外務省で記念の外相会議が催された。

 条約は1962年10月のクーバ核ミサイル危機を教訓として生まれ、69年4月25日発効した。推進者のメヒコ外相アルフォンソ・ガルシア=ロブレスは82年、ノーベル平和賞を受章した。

 条約は後に「ラ米・カリブ核兵器禁止条約」と改名された。事務局「LAC(ラ米・カリブ)核兵器禁止機構」(OPANAL=オパナール)はメヒコ市にある。この日、第25回OPANAL総会(外相会議)が開かれた。今日、LAC33カ国全部が加盟、批准している。

 総会で演説したエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領は、「世界は依然核兵器の危険に晒されているが、我々はLACを世界平和の約束の地として再確認する」と述べた。

 だが演説の力点は、トランプ米政権の対墨政策への批判に置かれた。大統領は、「強国を含むいかなる国も、国際社会の諸原則に反する独自の原則や意思を押し付けてはならない。国際関係は権利、敬意、対話に基づかねばならず、脅迫や実力に依ってはならない」と強調した。

 EPNはまた、「今新たに世界は我々LACの団結ぶりを観ている。LACが寄せてくれた連帯に、全メヒコ人民を代表して感謝する。メヒコは将来に亘ってLACの国だと、誇りを持って言う。困難な時の友こそ善き友と言われるが、メヒコは支持を受けて感動した。価値ある大きな支援だった」と語った。

 会場からは強い拍手が続いた。トラテロルコ条約は、その後の南太平洋、東南アジア、アフリカ大陸、中央アジア・モンゴルの各地域の核兵器禁止条約締結に繋がった。

 メヒコと、中米北部三角形3国(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)の外相は今会議に先立つ13日メヒコ市で会合し、同3国からメヒコを経て米国に向かう移民希望者の扱いなどを協議した。

▼ラ米短信   ◎ドミニカ共和国(RD)でジャーナリスト2人殺害さる

 RDのサンペドロ・デ・マコリス市のラジオ放送局で2月14日、ルイス・マルティネス局長と、ニュースを読み上げていたルイス・メディーナ記者兼アナウンサーが侵入者に射殺された。女性秘書ダヤナ・ガルシアは重傷を負った。

 ドミニカ・ジャーナリスト協会(CDP)と全国報道労働者組合(SNTP)は、メディーナ政権に事件の早期解決を要請した。RDでは一昨年4月にも記者が殺害されている。

▼ラ米短信   ◎大量のベネズエラ紙幣がパラグアイで発見さる

 ベネスエラ通貨ボリーバル・フエルテ(bf)の50bf、100bf札を詰めた約500の袋(重さ30トン)が2月13日、ブラジル国境に近い、パラグアイ東部のカニンデジュー県サルト・デル・グアイラ市の武器商人の家で発見され、警察に押収された。

 警察は資金洗浄および犯罪関与の疑いで武器商人を逮捕、取り調べ中。紙幣は14日、首都アスンシオンの中央銀行に運ばれ、金額計算などにふされた。

 警察は、米国のDEA(麻薬捜査局)とベネスエラ当局と連携、事件解明に努める。ベネスエラ政府は、100bf札を2月20日に使用不可とすることを、本事件発覚前から決めている。

 Bf札は、ベネスエラ西部コロンビアの国境地帯、南部ブラジルの国境地帯で出回っている。だがなぜ遠いパラグアイに運ばれたのか、そこに関心が集まっている。
 
 

2017年2月14日火曜日

パラグアイ農民らが首都まで行進、政府・支配体制を告発

 パラグアイの首都アスンシオン中枢部で2月13日、「長い行進」(ラルガ・マルチャ)と名付けて、遠隔地からの数百キロに及ぶ道程を歩いてきた農民、先住民、労働者ら1500人が「新しいパラグアイ建国」を求めて抗議行動を展開した。

 参加者は、「新しいパラグアイ党」(PPP、エラディオ・フレチャ書記長)と、全国農民連盟(FNC、テオドリーナ・ビジャルバ幹部)が組織。6日、二派に分かれて北部のコンセプシオン市、東部のカニンデジュー県を出発、1週間かけて首都に到着した。

 合流した一行は大統領政庁前で、オラシオ・カルテス大統領を「略奪者」と呼び、退陣を求めた。カルテスは今年8月15日に5年の任期が切れるが、憲法を手直しして連続再選を可能にしようと工作している。人々は「即時退陣」を要求した。

 一行は国会前では、議員たちを「守銭奴」と呼び、「権力は腐敗まみれ、恥知らず、売国奴、反人民、麻薬汚染された政治家に奪われている」と糾弾した。カルテスには就任前、麻薬取引との関係した嫌疑がかけられていたが、うやむやにされた。最高裁判所前では、判事たちを「買収されている」と扱き下ろした。

 PPPのフレチャ書記長らは、先住民や貧農からの土地奪取、住民の強制移住、北部地域の軍事化、逮捕者拷問、強姦など「当局者による人民迫害」を告発した。同党は労農政権樹立を目指し、1996年結党された。「ピャウラ(新しい)」というグアラニー語を党名に用いている。

 一行はまた、差別状況、生活苦、土地無し状態、保健・教育への接近困難、住宅不足、恒常的失業、道路不備なども訴えた。財務相の邸宅付近にも押しかけ、「国有資産売却したコルテスの共犯者」と叫んだ。

 1980年代末まで故アルフレド・ストロエスネル将軍の長期軍事独裁が続いたパラグアイは、南米で民主度が最も低い国とされる。21世紀になってから初めて伝統的支配層に属さない、「解放の神学」派のカトリック司教上がりのフェルナンド・ルーゴ大統領が穏健な改革を進めた。だが支配層の画策で、正当な理由なしに国会で弾劾され解任された。

 この政変は「国会クーデター」と呼ばれる。この手法は16年8月末のブラジルの国会クーデターで踏襲された。ヂウマ・ルセフ大統領の労働者党(PT)に選挙で勝てない支配層が企てた強引な弾劾による政権奪取だった。

 パラグアイでは今年1月15~23日には、東部から首都まで200km余の「パラグアイ愛国の長い行進」が実施された。かつて独裁と闘ったパラグアヨ・クバス弁護士が行進を組織した。

▼ラ米短信   ◎米国がベネスエラ副大統領を麻薬犯名簿に加える

 米財務省は2月13日、ベネスエラのタレク・エルアイサミ執権副大統領を「麻薬組織首領名簿」に加えた。またベネスエラの政商で企業家のサマルク・ロペスを、同副大統領の「名義人」と特定、麻薬取引を実行していると指摘した。

 カラカスでは13日、ベネスエラ中国高級合同委員会が開かれたが、エルアイサミ副大統領は中国代表団と会合した。

 ドナルド・トランプ米大統領は12日、ペルーのPPクチンスキ大統領と電話会談した際、「ベネスエラの人道的状況を懸念している」と述べた。ラ米では、メヒコに続いてトランプに痛めつけられる国はどこかに関心が集まっているが、ベネスエラはメヒコに次いで名指しされた国となった。

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDの代表団は最近訪米、ワシントンでベネスエラ政府を退陣に追い込むための根回し工作をした。それが奏功したとも言える。

 一方、ニコラース・マドゥーロVEN大統領は12日、「ベネスエラはラ米の安定と平和を支援する堅固な地だ」と述べた。

2017年2月13日月曜日

メキシコ政府が批判交わす狙いも込め「反トランプ」行動実施

 メヒコ各地の主要都市で2月12日、政府が組織した「政府支持、反トランプ米政権」のデモ行進が展開された。約60団体が参加したが、首都メヒコ市では政権党PRI、前政権党PAN、財界、宗教界、政府系労連などが1万8000人を動員。一方で非政府計1500人も別途、行進した。

 グアダラハラ、モンテレイ、モレリア、アグアスカリエンテス、ビヤエルモサなど諸都市でもデモ行進が実施された。政府系は、メヒコ人への侮辱、国境の壁、移民排斥、関税障壁などでドナルド・トランプ大統領に抗議した。これに対し非政府系は、トランプ批判と併せて、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領退陣を要求した。

 今回の抗議行動を政府が組織したのには、ガソリン値上げで高まった反政府・反大統領世論や生活苦への抗議の声をかき消し「反米」に転じさせようとの狙いがあった。トランプ登場で「メヒコ民族主義」が久々に高まっているが、それもEPN大統領が極度に不人気とあって、高まりは燃え上がるまでに至らない。

 大統領の威信が一層地に落ちたのは、トランプに叩かれっ放しだったことに加え、新事実が暴露されたことによる。トランプが国境の壁建設政策を公式に発表した1月25日、その発表に先立ち、訪米していたルイス・ビデガライ墨外相がホワイトハウスで、トランプの女婿で大統領顧問のジャレット・クシュナーと、壁建設に関するトランプの発表文の内容を調整していたことが明るみに出されたのだ。

 暴露報道によると、ビデガライは旧知のクシュナーから発表文草稿を見せられ、米墨関係悪化を和らげるためとして、文言の変更を求め、クシュナーがそれを認めた。2人はそろって大統領執務室に行き、トランプに修正した原稿を見せた。トランプは怒ったが、修正を受け入れ、それを発表したという。

 メヒコ紙の論説は、ビデガライを「大馬鹿者」と扱き下ろしている。「被害国」の外相が「加害国」大統領の「加害政令」の内容を和らげるなどということは前代未聞、というわけだ。

 レックス・ティラーソン国務長官は2月8日ワシントンでビデガライと会談、両国問題は「壁」から北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)見直しに移行しつつある感がある。この米墨外相会談の場にもクシュナーが立ち合った。

2017年2月11日土曜日

 ノーベル平和賞受賞のサントス・コロンビア大統領の選挙戦に収賄資金? ブラジル建設会社オデブレヒトの一大贈賄事件がラテンアメリカを揺さぶる

 ブラジルおよびラ米の最大手建設会社オデブレヒトに絡む贈収賄事件がラ米を揺さぶっている。同社は昨年12月21日、米司法省と司法取引し、2009~14年にラ米10ヵ国とアフリカ2カ国で総額7億8800万ドルの賄賂を贈ったと供述、波紋が拡がった。

 その12カ国は、ブラジル、亜国、エクアドール、ペルー、コロンビア、ベネスエラ、メヒコ、パナマ、グアテマラ、ドミニカ共和国、アンゴラ、モサンビーク。アフリカ両国は、ブラジルと同じポルトガル語圏。

 ペルーでは、アレハンドロ・トレード元大統領が自動車道建設事業に絡み2000万ドルを収賄していた事実が明らかになり、逮捕状が出されている。トレードは事態を察知しパリに逃亡、所在不明となっている。ペルー政府は国際刑事警察機構(インターポール)に逮捕を要請するとともに、逮捕につながる情報提供者に賞金3万ドルを贈ることにしている。

 コロンビアでは2月7日、検察庁が、2014年の大統領選挙の選挙戦時、オ社資金100万ドルが現大統領JMサントス陣営に渡った疑いがあると明らかにした。サントス大統領は直ちに検事総長に電話し、証拠の有無を尋ねたという。

 これも自動車道建設事業に絡む汚職で、1100万ドルがコロンビア側に渡されたが、100万ドルはその一部。香港企業経由で渡されたとの情報もある。検察庁は国家選挙理事会(中央選管)に調査を要請した。 

 サントスは昨年、ゲリラFARC(コロンビア革命軍)との半世紀余り続いた内戦の和平に漕ぎつけ、ノーベル平和賞を受賞した。2月7日には、残るゲリラELN(民族解放軍)との和平交渉を赤道国のキト郊外で正式に始めたばかり。サントスの威信が陰れば、FARCとの和平過程深化、およびELNとの和平交渉に影響が出ると懸念されている。

 サントスにとり「不幸中の幸い」は、14年選挙で対立候補だった右翼政党「民主中心」(CD)のオスカル・スルアガ候補もオ社から160万ドルを受け取っていた疑惑が出ていること。

 一方、パナマでは1月下旬、リカルド・マルティネリ前大統領が建設事業に絡んでオ社から2200万ドルを収賄した事実が暴露された。この金は、スイスにあるマルティネリの息子2人名義の銀行口座に入っていた。スイス政府は、同口座を凍結した。前大統領は米国に逃亡中。

 ところが事態はさらに発展、2月9日、パナマのJCバレーラ現大統領がオ社から14年の大統領選挙戦時、資金を受け取っていたと告発された。昨年4月以降、国際社会を震撼させてきた「パナマ文書」に関与しているパナマ市のモサック・フォンセカ法律事務所のラモーン・フォンセカ弁護士が暴いたのだ。

 ラモーンは、政権党「パナマ主義者党」(PP)でバレーラと長年の同志で、バレーラ政権で閣僚級の政策顧問となり、PP党首にも就任した。だが昨年3月、オ社関連の汚職事件関与が浮かびあがり、辞任した。

 9日ラモーンは検察で取り調べを受ける直前に、バレーラが選挙資金をオ社からもらっていたと爆弾発言した。パナマ社会では一気に反腐敗運動が拡がっている。

 またエクアドールのラファエル・コレア大統領は10日、先手を打つかのように、オ社関連疑惑が赤道国に及ぶとすれば、それは19日の同国大統領選挙(第1回投票)に影響を与えるための政治的策謀だ、と表明した。

 ブラジルではオ社は、国営石油ペロとブラスと絡む政財界を巻き込んだ一大汚職事件で裁かれ、収賄者の裁判や捜査が続いている。

▼ラ米短信   ◎長期受刑囚がプエルト・リコで刑期満了へ

 米本土各地の刑務所で35年の禁錮刑を受けいてきたプエルト・リコ独立派のオスカル・ロペス=リベーラ服役囚(74)は2月9日、インディアナ州テレホート刑務所を出され、民間航空機で島都サンフアンの空港に身柄を移された。

 バラク・オバーマ前大統領は1月17日、ロペスを5月17日に釈放する減刑措置を発表していた。今後は、実の娘クラリサの家族と暮らす「自宅軟禁」の形で5月までの刑期を勤める。

 サンフアンのカルメン・ユリーン市長は、ロペスには市の安定職が待っている、と明らかにしている。 
 
 

2017年2月8日水曜日

コロンビア政府とゲリラELNがキトで内戦和平交渉開始

 コロンビア政府とゲリラ組織民族解放軍(ELN)が2月7日、エクアドール(赤道国)政府の肝煎りで、内戦和平のための公式交渉を開始した。8日、第1段階の実質交渉に着手、40日間をかけて、段階的停戦実施方式や、交渉への「社会参加」について話し合う。「社会参加」に備え、コロンビアの社会団体80が加盟する「和平社会会議」 がキトで会合している。

 交渉開会式は、キト郊外にあるイエズス会所有のカスアパンバ農園で挙行され、ギヨーム・ロング赤外相、コロンビア政府交渉代表フアン・レストゥレポ、ELN代表イスラエル・ラミーレス(作戦名パブロ・ベルトゥラン)が演壇前列に並んだ。赤道国と並ぶ保証国のクーバ、ベネスエラ、チレ、ブラジル、ノルウェーの代表も出席した。招待者140人、報道陣60人も参加した。

 ロング外相は「コロンビアの和平は我が国の和平であり、南米の和平であり、大なる祖国(ラ米)の和平だ。国境に壁を建設する者がいる傍ら、我々は平和な国境を拓こう」と挨拶した。トランプ米政権を皮肉った発言だ。

 レストゥレポ政府代表は、内外世論は内戦終結を待っていると前置きし、ELNに「合法政治をするよう促す」と述べ、併せて「誘拐戦術を打ち切るよう宣言してほしい」と要求した。

 これに対しラミーレスELN代表は、「政治解決を図る用意がある。ELNは内戦中の暴力への責任をとるが、政府も同様に
責任を取るべきだ」と注文を付けた。ラミーレスはELN序列第2位の最高幹部の一人。

 ELNはクーバ革命の影響を受けた北東部サンタンデル州の学生らが、クーバでゲリラ訓練を受け、1965年初め結成した。解放の神学の司祭だったカミーロ・トーレスはELNに参加、1966年戦死した。

 スペイン人神父も参加、73~98年、マヌエル・ペレス神父が最高司令を務めた。98年に病死し、後をニコラース・ロドリゲス(67)が継ぎ、今日に至る。戦闘員の現有勢力は2000人と見られている。

 政府とELNは、最大ゲリラ組織FARCが和平過程に入っている今、「ラ米最後、コロンビア最後の和平、つまり<完全な和平>に漕ぎつける」点で一致している。

▼ラ米短信   ◎ハイチ大統領が就任

 アイチのジョヴネル・モイーズ大統領が2月7日就任した。任期は5年。「テトゥ・カレ・ハイチ党」(PHTK)所属。昨年11月20日の出直し大統領選挙で55・6%を得票、当選した。だが不正批判が相次いだ。

 バナナ業者である大統領は、就任演説で「発想を変えれば、この国は良くなる」と述べ、野党勢力に協力を呼び掛けた。人口の8割が他は農民。国民の60%は貧困状態にある。

 モイーズはまた、「国外出稼ぎ労働者が帰国できる条件を整備する」、「司法を政治目的に使わない」、「国家資金を開発に回す」ことなどを約束した。

 就任式には、隣国ドミニカ共和国(RD)のダニーロ・メディーナ大統領、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領、海を隔てた隣国クーバのエステバン・ラソ国会議長、米国務省のトーマス・シャノン政務担当次官補らが出席した。

▼ラ米短信  ◎亜伯両国がメヒコに関係強化を呼び掛け

 ミシュエル・テメル伯、マウリシオ・マクリ亜の両大統領は2月7日ブラジリアで会談。南部共同市場(メルコスール)加盟両大国間の関税障壁撤廃、メルコスール強化、メルコスールと太平洋同盟(AP)との関係強化などで一致した。

 マクリ大統領は、エンリケ・ペニャ=ニエト墨大統領と6日電話会談したと明らかにし、「南方に意識的に顔を向けているメヒコ」との経済関係強化を図りたい、と述べた。伯亜は、メルコスールと日本、韓国、カナダ、ノルウェー、アイスランド、スイスとの関係強化でも一致した。

 亜伯両国はかつては左翼・進歩主義政権同士として関係が良好だったが、今は保守・右翼政権同士として仲が良い。双方ともにこのところ経済が縮小、対策を迫られている。

2017年2月7日火曜日

「新しい歌」のチリ人旗頭ビオレタ・パラが歿後50周年経つ

 チレ民俗歌謡の大歌手ビオレタ・パラ(1917~67)は1967年2月5日、首都サンティアゴ郊外で経営していた音楽酒場で拳銃自殺を遂げた。それから半世紀経った5日、首都の一般墓地の墓前で歌手たちがギターを弾きながらビオレタが作詞作曲した歌の数々を歌い、故人に敬意を表した。

 ビオレタは1917年10月4日、南部のビオビオ州サンカルロスに音楽教師で民俗歌謡歌手だったニカノール・パラを父に生まれた。7歳で父親のギターを自己流で弾き始める。父が病気で倒れ苦しい生活を送るが、父の死後、首都で学んでいた兄に呼ばれてサンティアゴに出、17歳でカンタアウトーラ(シンガー・ソングライター)になる。

 世界的名曲となった『人生よ、ありがとう』や、1973年の軍事クーデターを予知したような『ケ・ペーナ(何という胸の痛みだろうか)』など、自作の約130曲を世に出した。

 ビオレタの声はチレ農民女性に多い「疲れた声」であり、いわゆる美しい声ではない。だが情熱あふれる存在感とギターのうまさが声に勝って、聴く人々の心を掴んだ。

 先住民族マプーチェの血を引くビオレタは、気性の激しい女性で、差別や無視に対して怒り、抗議した。自らを「人民に同一化している」と言って憚らなかった。作詞には「人民」や虐げられたマプーチェが主題としてしばしば登場、白人が支配するレコード会社、ラジオ・テレビ局、新聞社などはビオレタに門戸を閉ざした。

 共産党員だったビオレタは1953年、「世界青年・学生祭」に招かれ渡欧、東欧やソ連を回り、パリにも滞在する。ビオレタはギター弾き語りの他、絵画、彫刻、刺繍など幅広い創作活動を展開、64年にはパリのルーヴル博物館に絵画などの作品が展示された。

 パリでは、フランコ独裁に抗議するためスペイン大使館への抗議行進に参加した。50年代には、同胞の詩人パブロ・ネルーダと知己になった。ルーヴル展示により故国チレで名士になったが、白人社会からの差別、無理解、無関心は大きくは変わらなかった。

 しかしビオレタの歌は「新しい歌」として既に脚光を浴びており、59年元日のクーバ革命によって生まれた新しい芸術運動と相俟って、ラ米で広く賞賛されていた。同胞のビクトル・ハラ、キラパジュン(歌謡団)、インティ・イリマニ(同)、ロランド・アラルコン、マウリシオ・レドレースらとともに一世を風靡した。

 ビオレタは恋多き女でもあり、2度の結婚や恋愛生活を続けた。息子アンヘルと娘イサベルは歌手で、ビオレタの歌をひき継いでいる。

 ビオレタは67年2月、恋人のウルグアイ人音楽家とモンテビデーオに汽車で旅行することになり切符も買っていたが、出発の2日前、自殺した。死後に訪れたピノチェー軍事独裁政権下で、ビオレタの作詞した歌詞は「反戦歌」、「抗議歌」と捉えられ、検閲された。

 2011年、アンデレス・ウッド監督が映画「ビオレタ、空に去る」(110分)で、ビオレタの生涯を描いた。その中で主人公は、「描く、刺繍する、歌う、は私にとって同じこと」と語り、何が一番重要かと問われては「私は人民と共にありたい」と答える。

 今年10月4日には、盛大な生誕100周年記念行事が計画されている。この誕生日は「チレ音楽の日」に指定されている。

▼ラ米短信   ◎早大でクーバ情勢シンポジウム催さる

 最新のクーバ情勢などを主題とするシンポジウムが2月6日午後、東京都新宿区戸塚の早稲田大学・小野梓記念講堂に130人を集めて催された。

 発言者は、ジャーナリスト伊高浩昭(現代クーバ情勢)、中部大学教授・田中高(日本でのラ米への取り組み)、早稲田大学準教授・岩村健二郎(クーバのアフリカ系の状況)。早稲田大学準教授・高橋百合子が意見を述べたうえで3人に質問、司会は早稲田大学教授・山崎眞次が務めた。

 聴衆は、大学教員、研究者、ジャーナリスト、大学生、映画監督、国会議員、NGO関係者ら多彩な顔ぶれだった。