2017年1月5日木曜日

メキシコ新外相にトランプ人脈あるルイス・ビデガライ任命

  メヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は1月4日、外相にルイス・ビデガライ前財務相(48)を任命した。ビデガライは昨年8月末にメヒコ市でEPNと、当時、米大統領候補だったドナルド・トランプ次期大統領を引き合わせた人物。外相任命には、トランプとの人脈を活かし、波乱含みの墨米関係を何とかしたいとのEPNの必死の願いがある。

 トランプは選挙戦で「米墨国境地帯に密入国防止用の高い壁を築く」と述べ、メヒコ人不法滞在者を扱き下ろし、人気を勝ち得た。移民規制に次いで、北米自由貿易条約(TLCAN=テエレカン)=英語ではNAFTA(北米自由貿易協定)=の見直しを打ち出し、当選後にはメヒコに工場進出しようとしていた米生産業社に圧力を掛け、進出を翻意させてきた。

 この1月3日にも、メヒコ中部サンルイスポトシー州に経費1600万ドルの工場進出をしようとしていたフォードを翻意させた。ビデガライ任命発表は、その翌日だった。メヒコの危機感を示している。

 昨年8月のEPN・トランプ会談は、ビデガライがトランプ経営陣に持つ人脈を通じて実現させた。だが、メヒコ人を低く見る発言をしていたトランプを招き、ヒラリー・クリンントン陣営と疎遠になった、と厳しい非難の渦が巻き起こった。ビデガライは9月初め、辞任に追い込まれた。

 するとトランプは、「メヒコは優れた財務相を失った。ルイスとならば米墨関係は改善されよう」という趣旨の書き込みをした。そのトランプは11月に当選、ビデガライ復権の兆しが見え始める。

 当時のクラウディア・ルイス=マシュー外相は、米加両国とTLCAN・NAFTAを結んだカルロス・サリーナス元大統領の姪だが、トランプの8月来訪に激しく反対していた。トランプ当選で、彼女の立場は失われた。

 だが、ビデガライ外相が難題だらけの対米関係を改善できるという保証はない。もし成功すれば、来年7月の次期大統領選挙の政権党PRI候補になると見込まれている。

 一方には、「今回の外相交代は、トランプが最初に打ったメヒコ政府人事だ」との痛烈な皮肉も出るなど、EPNの施策に同意しない意見も強くある。ビデガライはエコノミストで、キャリア外交官でないという点も不安材料と見られている。

 一方、サリーナス元大統領は4日、TLCAN交渉中、ブッシュ(父)米大統領から石油も交渉対象に加えようと持ちかけられたが拒否した、と明らかにした。姪の外相降板を受けての発言だ。メヒコは元日のガソリン値上げにより全土で反対行動が起きている。サリーナスは、ガソリン値上げ問題も踏まえて発言している。

▼ラ米短信  ◎ベネスエラ執権副大統領にエルアイサミ就任

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は1月4日、大統領に昇格する資格を持つ執権副大統領に、これまでアラグア州知事だったタレク・エルアイサミ(42)を任命した。マドゥーロ大統領の任期は19年1月までだが、今後万が一、退陣に追い込まれた場合、エルアイサミが大統領に昇格する。

 エルアイサミはシリア・レバノン系で、メリダ州出身。メリダのロスアンデス大学(ULA)で法律と犯罪学を修めた弁護士。2005年に政権党PSUVの国会議員、その後、治安担当副内相、内相を務め、12年からアラグア州知事だった。

 マドゥーロ大統領は、エルアイサミの犯罪撲滅の手腕に期待している。経済状態の早期向上は望めそうもないが、治安立て直しが成れば、政府と政権党への支持が回復する可能性が見込めるからだ。

 この人事に伴い、11閣僚が交代した。これまで執権副大統領だったアリストーブロ・イズトゥーリスはコムーナ(コミューン)・社会労働相、バリーナス州知事のアダン・チャベス(前大統領の実兄)は文化相、石油相にネルソン・マルティネス(CITGO社長)が、それぞれ就任した。

 有力国会議員エリーアス・ハウアは教育相。チャベス前大統領の女婿ホルヘ・アレアサ(元執権副大統領)は大学教育・科学技術相を解かれた。労相、保健相、経済・財務相、環境社会主義・水利相、公共事業相、都市農業相も交代した。