2017年1月8日日曜日

社会不安・トランプの内憂外患でメキシコ深刻

 メヒコは内に社会不安、外にトランプ次期米政権という内憂外患を抱え、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領の不人気も手伝って極めて困難な状況に陥っている。

 EPN政権は元日、財源確保のためガソリンを20%値上げした。これにより全国で抗議行動が起きている。トラック、バス、タクシーなどの輸送業界がまず反対。他の業界も輸送費値上げで物資値上げにつながると抗議している。

 日ごろ失業、インフレ、犯罪激発、腐敗や、政府自体が法治を蹂躙している事実などから不満が鬱積している庶民は、ガソリン値上げを契機に怒り、全国各地でスペルメルカード(スーパーマーケット)や商店を略奪している。

 内務省の6日の発表では、2000店舗以上が略奪され、警察は1500人を逮捕した。略奪事件は首都メヒコ市および、メヒコ、イダルゴ、ベラクルース、タバスコ、ケレタロー、ミチョアカン、キンタナロー、チアパス各州で多発。略奪した市民4人と、取締の警官1人が死亡している。

 内務省は、社会メディア網を用いて略奪を煽動したり、偽情報を「噂」として流したりした発信元を摘発しており、既に1500件で関与者を突き止めたという。
 
 首都では6日、4万人がガソリン値上げと社会不安に抗議して行進。モンテレイ市では1万人が行進した。激しい反対・抗議と社会不安を招いた今回のガソリン値上げは「ガソリナソ」と呼ばれている。

 一方、ドナルド・トランプ次期大統領は5日、メヒコとの北米自由貿易条約(TLCAN、英語ではNAFTA=北米自由貿易協定)の見直し交渉の一環として、「米墨国境の壁を建設、その費用として50~100億ドルをメヒコに支払わせるべく話し合う」と発言。「壁建設問題」が再び脚光を浴びている。

 ビセンテ・フォックス元墨大統領は6日、「メヒコが建設費を支払うことはない」と一蹴。さらに、「人種主義の壁だ。建設されることはあるまい」と指摘した。

 米墨国境は3200km。米国には「安全柵建設法」があり、これに基き、同国境線1250kmdで建設が済んだか、進んでいるかしている。

 だがトランプが主張する壁は建設費がかかり過ぎるためなどから非現実的で、米議会を通らないと見る意見が多い。このため、トランプは柵建設法を遂行することになるのではないか、との見方が出ている。