2017年1月28日土曜日

 トランプとメキシコ大統領が電話会談し、対話継続で合意。ペルーとコロンビアの首脳がメキシコ支持を表明、自由貿易促進を呼び掛ける

 Dトランプ米大統領の国境の壁建設決定などをめぐり、米墨関係は急速に悪化していたが、同大統領とメヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は1月27日、1時間に亘って電話会談し、話し合いを続けてゆくことで合意した。

 トランプはホワイトハウスで来訪中のテレサ・メイ英首相との合同記者会見の場で、「電話会談は友好的だった。私はメヒコに対しきつく当たり過ぎていた。今後は公正かつ新しい関係において活動してゆく」と述べた。

 一方、EPNも「建設的だった」と評価。メヒコ政府は別途、「この会談で壁建設に関し今後、公に発言しないことで合意した」と明らかにしている。また米製銃器類の対墨密輸や国境地帯での麻薬取引の取締についても話し合ったと明かした。

 トランプは電話会談に先立ち、「メヒコはずいぶん長い間、米国を利用してきた。米側の巨額の貿易赤字と国境警備の弱さは変えねばならない」と微博(twt)発言していた。

 電話会談の内容はほとんど明らかにされていないが、当面の焦点は26日にいったん崩れた両首脳の直接会談をいつ実現させるかだ。トランプが壁建設費用をメヒコに負担させようとするかぎり、これを断固拒否するメヒコとの和解はない。来年12月1日までの任期を残すEPNにとり、壁建設費支払いに応じれば、即、政治生命が途絶えるだろう。

 かといって、今のトランプに翻意させるという勝算もない。メヒコの対米関係は歴史的な危機に陥っている。

 メヒコ人富豪カルロス・スリムは27日、「トランプは死刑執行人でなく取引者だ」と前置きし、EPNに向けて「降伏せず交渉すべきだ」と提言した。スリムは個人的にトランプと交流してきた。

 スリムはまた、「最良の壁は機会と雇用を醸成することだ。メヒコは輸出先の多角化が必要だ」とも指摘した。スリムは23日には、
在米同胞のためのスペイン語テレビ放送局を米国内に設ける、と発表している。

 一方、PPクチンスキ秘大統領とJMサントス・コロンビア大統領は27日、秘国アレキッパ市で27日会談。「メヒコを支援する。自由貿易推進のため対話と融和の情勢が基本的に重要だ」と強調した。

 両大統領はまた、両国および智墨のラ米太平洋岸4カ国で構成する「太平洋同盟」(AP)が墨米問題を話し合うため、発声映像画画面を通じて首脳会議を早急に開くことを智墨両首脳に提案した。

▼ラ米短信   ◎メヒコ人学生43人強制失踪事件発生から28カ月

 メヒコ・ゲレロ州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が同州イグアラ市で陸軍兵士、警官らによって強制失踪させられてから1月26日で2年4カ月が経過した。EPN政権は、事件を解決しないまま放置している。

 遺族、学生、支援団体は26日、首都メヒコ市にある検察庁前で6時間、抗議集会を開いた。その間、遺族代表と弁護士が検察側と交渉、2月9日にラウール・セルバンテス検察庁長官と話し合うことで合意した。遺族側は2月にMAオソリオ=チョン内相との会合も望んでいる。

 弁護士ビドゥルフォ・ロサーレスは、「検察は陸軍の関与を長らく伏せていたが、早期に明るみに出していたとすれば、捜査は異なる経過を辿っていたはずだ」と指摘した。一行は、レフォルマ大通りを独立記念碑まで行進した。

 EPNの支持率は10%台に落ち込んでいるが、その要因の一つがこのアヨツィナパ事件未解決だ。遺族らは、ニュースが対米関係に集中し、事件報道が少ないことに危機感を抱いている。