2017年3月7日火曜日

 ペルー検察がブラジルのオデブレヒト社贈収賄事件絡みで、クチンスキ大統領、アラン・ガルシア元大統領らの捜査を検討。選挙資金や地下鉄建設工事めぐり疑惑渦巻く

 ペルーのPPクチンスキ(PPK)大統領が昨年の大統領選挙の選挙資金に収賄資金を加えていた疑いで捜査される可能性が出ている。カテリーネ(キャサリン)・アンプエロ特別検事は3月6日リマで記者会見し、伯国およびラ米で最大手の建設会社オデブレヒトから、PPKに近い財団を通じて資金がPPK陣営に流された疑い関し捜査開始を検察庁に要請した、と発表した。

 その財団は「ラティンアメリカ・エンタープライズ財団」(LAEF)。PPKが見返りに同財団に何らかの便宜を図った可能性も指摘されている。PPKは昨年の大統領選挙決選に2位で進出、1位のケイコ・フジモリを僅差で破り、7月末、政権に就いた。

 同特別検事はまた、アラン・ガルシア元大統領2期目に建設されたリマ地下鉄1号線の工事入札時にオデブレヒト社から賄賂が渡された可能性についても捜査開始を検察庁に3月1日求めていたことを明らかにした。

 この汚職問題ではガルシアおよび、ガルシア政権で運輸相だったエンリケ・コルネホらが捜査対象となっている。オ社は、今年1月、秘検察庁で、地下鉄建設に関し総額800万ドルを支払ったと証言している。この事件の容疑者3人が既に予防拘禁されている。

 また、クスコ新空港建設工事をめぐり、PPK政権のマルティン・ビスカーラ第1副大統領兼運輸相がクントゥル・ワシ企業連合との談合に関与した疑いで、特別検事は捜査開始を検察庁に要請した。検察庁は特別検事による一連の要請について検討中。

 ラ米の半分とアフリカの一部を巻き込んだ巨額のオ社贈収賄事件は発展するばかりだ。ペルーのオヤンタ・ウマーラ前大統領の夫人ナディーンは2011年の選挙時にオ社から300万ドルを渡され、夫の選挙資金に用いたことが明るみに出ている。ウマーラは、この選挙決選でケイコ・フジモリを破った。

 またアレハンドロ・トレード元大統領は、秘伯間自動車道建設をめぐってオ社から2000万ドルを収賄、起訴され、国際手配されている。米加州で逃亡生活を送っていると伝えられる。

 政府高官の背信共謀罪には最高15年の禁錮刑が科される。だが無処罰が横行、立件されることは稀だ。ガルシアは1980年代後半の第1期政権期に巨額の汚職疑惑が出ていたが、うやむやに終わっている。

 ケイコの父で服役中のアルベルト・フジモリ元大統領が有罪、収監されたのは、反フジモリ世論が高まるなかで、殺人命令など重罪関与が法廷で立証されたため可能だった。

 コロンビア検察庁は同じ6日、2014年の同国大統領選挙時に、JMサントス現大統領陣営に100万ドル、対抗馬のオスカル・スルアガ候補陣営に160万ドルが、それぞれオ社から渡された証拠が整った、と明らかにした。

 一方、ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6日、PPK秘大統領が訪米中の2月25日に、ラ米の人権・民主問題について、ベネスエラは重大な問題を抱えていると発言したのに関連し、PPKは米国に尻尾を振るかわいらしい犬だ、と扱き下ろした。

▼ラ米短信   ◎ボリビア大統領が、ラ米進歩主義政権は復調の兆しと指摘

 エボ・モラレス大統領は3月6日、帰国を前にしてハバナで、5日カラカスで開かれたALBA首脳会議は同盟(ALBA)の最強化を打ち出したと述べ、「右翼政権下に置かれたラ米人民は苦しんでおり、今後の選挙では進歩主義勢力が巻き返して勝つだろう」と指摘した。

 モラレスは、声が枯れたためハバナで治療、いったん5日にカラカスへ行き、再びハバナに戻ってから帰国した。