2018年4月21日土曜日

 南米諸国連合(ウナスール)が瓦解の危機▼路線対立から保守・右翼陣営6カ国が活動参加を拒否▼南米統合路線は停滞

 南米大陸の12カ国が統合の理想の下で加盟する南米諸国連合(ウナスール)が4月20日、瓦解する危機に陥った。今月、議長国(任期1年)に収まったボリビアのフェルナンド・ウアナクニ外相は同日、キトの同連合本部で記者会見し、特別外相会議を5月開いて、打開策を探る方針を示した。

 域内の保守・右翼諸国である亜パラグアイ伯智コロンビア秘の6カ国外相は18日付で書簡をウアナクニ外相に送付、空席のウナスール事務局長の選出問題が片付くまでは同連合の会合や行事などに一切参加しない、と通告した。事実上の「脱退通告」と受け止める向きもある。

 今月まで議長国だった亜国のマウリシオ・マクリ大統領は昨年末、チリ駐在の亜国大使ホセ・ボルドーンを事務局長を候補に擁立したが、域内左翼のベネズエラとボリビアに反対された。これにより左右の路線対立が一挙に表面化した。
 加盟12カ国の合意で決定する決まりがあるため、ボルドーンは選出されなかった。マクリは以来、ウナスール「脱退」を検討してきた。

 6カ国以外の加盟国はベネズエラ、ボリビア、エクアドール、ウルグアイ、ガイアナ、スリナム。このうちガイアナは、参加拒否を表明した6カ国に立場が近い。

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は20日、キューバ訪問に先立ちカラカスで記者会見し、「域内右翼諸国は米政府の圧力を受けて<脱退>を決めた。彼らに言いたいのは、少しでも南米の国であるという自覚を持ってほしいということだ」と述べた。
 マドゥ―ロは19日就任したばかりのミゲル・ディアスカネル玖国家評議会議長と会談する最初の外国首脳となる。

 ウナスールは、チャベスVEN、ルーラ伯、キルチネル亜、コレア赤の4大統領がいた2008~10年前半に最も強力な時期にあったあが、チャベスとキルチネルは死去、ルーラとコレアは任期を終え、トランプ米政権の登場もあって、保守・右翼陣営が力を盛り返している。

 米州35カ国のうち米加両国を除く33カ国が加盟するラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)も、中核のウナスールの弱体化で存在感を大幅に失いつつある。ラ米左翼・進歩主義陣営にとり「冬の時代」が厳しくなっている。